実験
「でも、反動は相当使い続けないとならないと思う。大会とかでなったことはないし」
「ふむ……ではもうひとつ。先ほど言ったように、地下牢ではオリバーの力が使えない……正確に言えば、魔法が使えないんです。特殊な技術で、魔力素子の動きを抑えているためなのですが……これは監獄などでよく採用される技術で、当然固有魔法も使えなくなります」
「……」
「つまり、オリバーに固有魔法を使うには、彼も魔法を使える場所で行わないといけない。彼は彼自身に向けられた詠唱は読めないのが幸いですが……彼との応対は、基本的には慣れたものがやるべきです。そもそも観察眼に優れていて……こちらを動揺させ、つい仲間へ呼びかけたくなる……そんな心理状態まで持っていきます。そうなれば彼の手に情報が渡るわけです。それに、逃走の危険も高まります」
チェレーゼの心配はもっともだ。私は尋問の技術など持ち合わせていないし、あの話術の前で平然としていられる自信もない。少し考え込んで、はっと良いことを思いついた。
「……反動状態だったら、オリバーへの対応はやりやすいと思う。テレパシーも、実は相当頑張らないとできないから。対象以外に注意を向けるのは、結構意識的にやらないといけない……つまり、オリバーには読めない」
「わざと反動状態を作る、という策ですか……ソメヤ様らしいというか、トリッキーですね……」
チェレーゼもむむむと考え込み、口を開いた。
「そうしたら問題は、反動が固有魔法の継続時間によって起こるのか、対象1人への集中によって起こるのか……になりますね。反動発生中に対象を切り替えることができるなら、安全な何かに限界まで固有魔法を使えば良いですが……切り替え時にリセットされて反動が解除されたり、あるいは切り替えが不可能だったりしたら……オリバーに対しては、やはり丸裸で挑まざるを得ません」
「うーん、そっか……難しいな。反動の挙動は確かめておきたいけど……もう少し安全な状況でやりたい実験だなあ」
「固有魔法の有効範囲は? オリバーの固有魔法は、あいつを中心にした半径2.5m程度しか読み取れない。ソメヤの有効範囲がそれ以上あれば、距離をおいて拘束すればいい」
「そっか! たしかに! 有効範囲の実験もしないとと思ってたんだよね」
「オリバー関係なく、確かめておいた方がいいですね。すぐにできますし」
そうしよう、という私の浮かれ声と反対に、ピグトニャは難しい顔をする。
「ソメヤの天啓は、基本は人にしかうまく使えない。ここは俺が……」
「いえ、ピグトニャ」
チェレーゼがそれを制した。
「元々は私にかける予定だったもの。……私が実験台になります」




