秘め事
チェレーゼたちが特別に許可を取って治癒魔法をかけてくれたおかげで、私はその日の夕方には家へ帰ることができた。医療機関における魔法は資格を持った職員しか通常行えないのだが、二人は医療用魔法資格を持っていて、尚且つ著名人なので特別に認められた、とのことだった。素人が適当に治癒をかけると、かえって悪化する場合もあるようだ。入院患者に家から持ち込んだ薬を飲ませないのと同じことらしい。
「それで……ソメヤ様は私に、どうして欲しいのですか?」
「拷問なんて方法を使うのはやめて欲しい……代替案がある」
「代替案? 生半可な取り調べでは、ヤツは口を割りませんよ。減らず口でイライラさせられるだけです」
それはさっきまでのやり取りで十分わかった。私はピグトニャに目配せする。好きにしろ、とテレパシーがきて、私は語り出した。
「私の固有魔法を使えばいい」
チェレーゼは目を見開き、ちょっと待ってください、と言った。
「ソメヤ様……あなたに信仰がないことはわかっています。それでも、固有魔法の詳細を伝えるのは感心しません」
「どうして?」
「それを聞いてしまったが最後……私は国のために、あなたをどう利用するかわからない立場の……精神性の……人間です。あなたは……異界人なのだから、自分の身を自分で守らないと」
「うん。でも言うよ」
「待ってください!」
チェレーゼは、本当にやめてくれ、という顔でこちらを見ていた。ピグトニャの言っていた、人の天啓を聞いてしまって自殺した刑務官の話を思い出す。ごめんね、と思いながらも、私はその秘め事を口にする──。
「──私の固有魔法は……<リーダビリティ>。対象のステータスを見ることができる」
ピグトニャは目を伏せ、チェレーゼは呆然としていた。そして、ぶつぶつ祈り始めた。
「唯一の神よ……私に良心を……」
「姉さん」
「なんですかっ……」
「実は、俺はもう知ってたんだ。ソメヤの天啓。今も、テレパシーで、話したいなら話せって言った」
「!?」
チェレーゼはピグトニャにつかみかかり、本当ですか、と問いかける。
「本当……聞いたのはつい昨日だけど」
「どうして……いくら神を捨てたからといって、やって良いことと悪いことがあるでしょう!?」
「ちがうよ、私がピグトニャに頼んで聞いてもらったの。ピグトニャはずっと拒んでた」
「……どういった事情で?」
私はどこから話すか悩んだ。天啓の反動で動けなくなったから、その流れで……とだけ言うか、チェレーゼを疑っていたことを、正直に話すか。後者だと、ピグトニャのタレコミに触れないわけにはいかない。
[俺が話す]
ピグトニャの声が脳内に響き、彼を見つめた。彼もこちらを見て、軽く頷く。
「俺は知ってたんだよ……姉さんが、夜な夜なソメヤに固有魔法を使ってるって」




