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3笹掻健

最近、喧嘩が増えた気がする。

カチャン、カチャン、と食器同士がぶつかる音が響き渡る。チラッと横目でキッチンを見ると、仏頂面の正美が見えた。まだ怒っているらしい。勘弁してくれ。

あと何回、食器がぶつかれば妻の機嫌は直るだろうか。

今日は有休を取って育児を交代しようと思っていたけれど、上の子を強く叱りつけてしまったことで妻の機嫌を損ねたらしい。

寝室へと向かい、散らかった毛布やぬいぐるみたちを片付けてゆく。子どもってのはどうしてこんなにぬいぐるみを欲しがるのだろう。気付けば彼らはある一定の場所を我が物顔で占拠しているのだ。

「そんな目で見るなよ…」

つぶらな目のコアラが、こんな暗い物置に置いてくれるな、と主張していた。

ふと、心の中で今日やった家事の数を数える。

食器を洗って洗濯物を干して…と忙しなく動く妻の姿が、無言で私に「役立たず」と伝えているようで居心地が悪いのだ。

年明けに来た年賀はがきで、友人が結婚したことを知った。身内だけで挙げたらしい式で幸せそうに微笑む新郎新婦の姿が眩しかった。こいつらも数年後、自分と同じ思いをするんだろな。

こういう時、喧嘩していなければ「あいつが結婚したらしい」と伝えて、たわいのない会話をするのが常だった。友人が誰と結婚しようが興味のない自分とは裏腹に、妻は色んなことが気になるらしい。

奥さんどんな人?どこで知り合ったの?などなど、本当によく聞きたがる。それは妻にとって下世話というより純粋な興味のようだった。

よく考えれば、昔から自分は他人にどう思われようが全く気にしなかった。周りのことも気にならない。親しい友人でも、近況を知りたいと思ったことはあまりない。基本、他人に興味がない人間なのだ。

でも。

正美と出会ったあの日から、君のことだけはずっと興味があるし、何より世界で唯一、君の機嫌だけは損ねたくない。

正しいか正しくないかじゃないんだ。君がご機嫌でいてくれることが自分にとっての正義なんだ。それなのに。それなのについ、強く言われれば噛み付き返してしまうこの僕を、どうか許して欲しい。

そしてできるなら、いつだって僕に微笑みかけていて欲しいんだ。7年経った今、形は変わっても僕は君が好きなのだから。

これが言えればきっと夫婦円満なんだろうけどなぁ、と、曇った姿鏡を拭きながら思った。

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