03
いい加減嫌になってきて、アルサはフィーズを視界に入れないようにしていた。
無視を決め込んで、アルサは手元の本に視線を落とす。が、そんなのお構いなしにフィーズは我関せず、と言った顔で寛いでいる。
ふーっと息を吐いて、本を閉じる。
ダメね。集中出来ないわ。
「いい加減にして、フィーズ。アナタはいつまでここに居座るつもりなの」
「あ?そんなん、こっちの勝手だろ。気にするな」
いやいやいや。何を言ってるのか、こいつは。
気にすんな、とか。そもそも、ここはわたしの屋敷よね。
「もういいわ。アナタがここに居座る気なら、わたしが出て行く」
次の家はどこにしようかしら、なんて呟きながら立ち上がる。
「おい」
後ろでフィーズが呼んでるけど、知らない。なんで、アナタはそんなに偉そうなのよ。
「おい、アルサ!」
「ッ!?」
近くで声がしたと思ったら、腕を引かれ、体の向きを反転させられた。
…こんなに近づかれているなんて、気付かなかった。
ダンッ!と壁に背中を強かに強打する。痛みに顔を歪め、目の前のフィーズを睨みつける。
「何するのよ」
「…そろそろ俺のモンになれよ」
なにを冗談、と言い掛けたところで口を閉ざす。
目が。本気だ。
真っ直ぐにこっちを見てくる。その吸い込まれそうな蒼い瞳に思考が、言葉が、奪われそうになる。
咄嗟に視線を逸らした。
「…何が楽しくて、こんな化け物が欲しいって?ああ、化け物だから、ね」
そうよ。
今までそういう奴らがいなかったわけじゃない。幾度となく殺されそうにもなった、捕らえられて見世物にされそうになったことも。
「お前はバカか」
「なっ…」
「今まで、俺の言った言葉を訊いてなかったのか」
「…太陽の下を歩くことも出来ない、こんなわたしを手に入れたって…」
「そんなの、人より肌が弱いってだけだろうが。そんなの関係ねぇな」
そう言って、フィーズは至極優しそうに笑った。
END




