02
喉が…渇く。
これは飢え。
「久しく…口にしてなかったから」
体を動かすのも少しだるくて、四肢をベッドに投げ打った。
ああ、このまま眠ってしまえばいいのに。二度と目覚めないように。二度と、…なんか喰らわなくてもいいように。
「バカじゃないのか、お前」
「フィーズ…」
億劫だったが、視線を上げれば扉に腕を組んで寄り掛かっているフィーズの姿。だるいのはこっちなのに、何故だかフィーズの方が機嫌が悪そうだ。
それが何だか可笑しくて、くすり、と吐息を漏らして笑う。
「何笑ってんだ、ばか」
チッ、と小さく舌打ちしたかと思うと、フィーズはこちらへ近づいてきて、ベッドの縁に腰掛けた。
ほら、と袖をまくってアルサの目の前に腕を差し出す。
ドクリ、と心臓が鳴った。
「…なんの、つもり…?」
「飲め。」
有無を言わさぬ口調。
「…ふざけないで」
「ふざけてんのはどっちだ。そのまま死ぬ気か?」
「わたしは人を喰らう化け物なのよ」
「ハッ、生きる為に他者を喰らって何が悪い。そんなモン、自然の摂理じゃねぇか」
何を思ったのか、フィーズは懐から小型ナイフを取り出すと、徐に自分の手首に押し当てた。
「何をっ…!?」
ボタボタ、と鮮血が真っ白なシーツに落ちて染みを作った。むせ返るような血の匂いが部屋中に充満する。
喉、が…。
血を求めて、飢えがさらに増す。
でも。
「何してるのよ。早く止血を…」
そして、部屋を出て行って。
わたしの前からいなくなって…。
「この意地っ張りがっ…!!」
鉄くさい、けれど甘い味が口腔内に広がった。
END




