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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター5 仕合わせ
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第60話 どの箱庭にも潜む災い


「どう見てもアンタは風俗に行くような人には見えません

それとも別にストレスを解消出来るご趣味が?」


「そんな場所に行くわけないだろう?! 妻の前で何を言ってるんだ!!」


「では独自のストレス発散方法が……?」


「今は…… テレビのお笑い番組とかだな…… うん……」


「俺達は建守颯颯さんの話をしているんですよ? 今では無く過去の話をして下さいよ?」


「っ……」


父親は安斎に怒りすら覚えていた しかし同時に自分の辿ってきた人生を顧みる事も


「お母さんもパートに務めていて共働きだったそうですねぇ?

先程の昼飯の要求なんかも まるで家事は奥さんに任せっきりのようで」


「あの…… さっきから何がおっしゃりたいんですか……?」


「俺もアンタ達に恨みがある訳ではないので敢えて明確にはしません

ただ伝えたいのは…… コミュ障に育て上げる上で自明になっているのは

子供の発言を根刮ぎ 威圧して無視する行為が蓄積されることなんです」


「えっ……?」


「叱ると怒るの違いは 子供の話に耳を貸すか貸さないか 成長はここで大きく変わります

単純な話なんです 発言権を失った子供は主張が出来なくなる

自分が何かを話せば大人は怒って対処してくる マウントを取って理解を深めない

そう子供の脳裏に焼き付ければ彼等は学習し始めます 言わぬが花の状態になっていきます

そして次第に個性が失われ 人前では寡黙になり 颯颯の場合はイジメの標的になりました」


「…………」


「そりゃぁそうですよ イジめる側からすれば格好の的です

自分達がそいつに水をぶっ掛けても 颯颯はおそらく誰にも相談なんてしなかったんですから

そして次第にエスカレートして 渋谷達イジメ加害者も麻痺して限度なんて考えなかったんでしょう

アンタ達も 教師も 近隣住民も 誰にも頼れないまま二十歳を迎えたのが今の彼です」


安斎は立ち上がり 食べ終えた食器を水に付けて片付ける

そしてご馳走になったお礼を言うと そのまま出て行こうとしていた


「……仕事を二の次なんて出来ないのに じゃぁどうすれば良かったんだよ」


「私達はあまり頭が良くないから……

取り敢えず貯金を貯めてハヤちゃんに苦労させまいと頑張ってたのに……」



「……もしまた 颯颯さんと会うことがあれば 趣味を共有して見て下さい

お酒も飲める年頃なんですから 何か明るい話で花を咲かせてみるのも良いと思います

年季が入った下手な謝罪は相手を困らすだけなので これからの付き合い方を考えてみて下さい」



柴塚も食器を片付けて所長の後を追う

玄関まで見送りに来てくれたのは母親だけだった


「……ありがとうございます」


「勝手に家に上がって……

晩食をご馳走になって好き勝手言ったんです 恨んでくれても構いません」


「私…… ハヤちゃんの事を何も知ろうとしなかったのね

その時その時の生活で一杯一杯でした……」


「それでは失礼します 俺もアイツを止めたいと思っているので……」


安斎が玄関のノブに手を付けようとしたその時だった

再び外がザワつく そしてチャイムを鳴らし 聞き覚えのある声がドア越しから聞こえてくる


「母ちゃん…… ただいま……」


「……ハヤちゃん?!」


母親が咄嗟に玄関扉を開けようとした

しかしその片手は安斎によって阻まれる

咄嗟に柴塚が玄関に鍵を掛け スマホで文字を起こした


『待って貰えるようお願いします!!(^0^;)』


「あっ…… ちょっと待ってねハヤちゃん!!

マスコミに追われてて暗号式の鍵を買っちゃったのよ……!!

すぐ解錠するから少しで待ってて……!!」



「あっ…… あぁ……」



安斎達は急いで台所に戻ってきた


「ハァハァ…… どうします所長?」


「マスコミが群れを作ってるタイミングで一人で帰ってくるわけねぇ!!

ぜってぇ安久谷か泉太郎が隣にいる筈だ……」



「あの…… 私達はどうすれば……」



事は迅速に進めなければならない


「暗号式の鍵は本当にあるんですか?」


「実は本当に買ってはいるんです」


「久留美!! これを急いで玄関に!! 暗号は1111でいいからな!!

お母さんそしてお父さん 俺達に隠れる場所を提供して貰えますか?!」


「話すのは台所だから…… 隣の寝室の押し入れでいいかしら?」



「俺達は…… どうしたらいいですか安斎さん?」



時間があまり無いので 都合の良い台本も作れない


「普通に話して下さい 危険を感じたら俺らが盾になります」


「……分かりました」


施錠した柴塚と安斎は足音立てずに押し入れの中へ


「ちょっ…… 狭くないですか……?」


「隠れられるだけ儲けだ!!」


ほぼ密着状態 布団やら冬物の衣類などが敷き詰め合っている中

安斎と柴塚は互いに頬を擦り合わせながら体育座りで見守る


「ハヤちゃん…… お帰りなさい……!!」


「……ただいま」


「あの…… お隣の方は?」



「私!! 安久谷興信所の袴田幸開はかまだらきあと言います!!

表のメディア関係者達には既に話を通しまして帰って頂きました!!」



母親が奥を見やれば いくら嫌がっても退いてくれなかったのが嘘の様

道端には猫一匹すら残っていなかった


「実は建守君の無実を証明しようと動いてまして……!!

その上で我がNPO団体の正式加入が決まりましたのでそのご報告に」


「はっはぁ……」


母親は戸惑いを見せ 台所に座る父親に至ってはブルブルと震え上がっていた

一方で押し入れの安斎や柴塚 バレるかどうかのドキドキと

密着故に別のドキドキも鳴り響いていたのは 別にどうでもいい事



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