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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター5 仕合わせ
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第55話 時雨山の実態


6月15日 時雨山の古民家


卓袱台を挟んでお昼寝をしている柴塚と岳斗

ここにいる間は只管楽器の演奏に付き合わされていた柴塚は

ベースを覚えさせられるまで濃厚な時間を使わされていた

楽器は河上家に置かれている 河上の暇潰し用品らしい


縁側を向けば 下り坂のけもの道が空と合体して地平線を引いている

その向こうから徐々に会話が聞こえてきた

今日の買い出し担当である 安斎と河上が頭と目を隠して帰って来ていた


「食料なんて山にあるもので事足りるのに…… 異常事態なの分かってます?」


「山の常識は何処でも通用するかもしれねぇが 俺達は街で育った人間だ

下手にそこら辺の物を拾って食すわけにもいかねぇだろ?」


「案の定…… 安斎先生達が不審者扱いされてましたねぇ」


「楽校に入り浸る不審な人間だったのは間違いねぇんだから仕方ねぇだろ

〝誘拐と関わりがある可能性が高い〟って言われているだけまだマシだ

担当は小柳か…… もしくは奴と同じ息の掛かった刑事かな……」


「一介の刑事が独断で あんな大胆な犯罪に手を貸すとは思えません

おそらく上層部に母体となる協力者がいるのでしょうね」


「……話変わるんだけど 色々聴きたい事があるんだ」


「良いですよ?」


「〝使われていない公衆電話のメアリー〟さんって何かお前の母親と関係があったのか?」


「家の固定電話が唯一繋がる場所があの公衆電話なの

どっちかが受話器を取れば お金を入れなくても繋がる仕組み」


「えっ…… 芽神と行った日も聞こえていたのか?」


「そのとき私は寮生 でもメアリーさんを探す話は咲彩ちゃんから聞いていたから……

実はあの晩 私も近くの茂みに隠れて一部始終を観ていたのよ」


「怖…… あの場にいたのかよ……」


「あの古びた公衆電話は 倫子さんの使いの伝言役が利用してたから……

祖父の代からある公衆電話でね よく仕事の依頼は電話越しで行われていたらしいわ

でも父の代で一回廃業になって電話ボックスも手入れされず

そんな時 たまに近所の子供達が遊び半分で受話器を取って遊んでいたの

その遊び相手になっていたのがうちの母メアリー

お金も入れずに誰かの声がして会話が出来る ので悪戯電話は後を絶たなかったらしいわ

そんな怪異染みた暇潰しの果ては七不思議ってとこに落ち着くのよね」


「……山道から外れた場所にあった七枚の看板は何だよ?

あれの所為で俺と芽神はお前の家に辿り着いちまったんだぞ?」


「偶然よ…… お猿の藤吉さんが登山者を私の家に近付かせない為に設置したの」


「あの日本猿…… 文字も書けるのかよ?」


「書けなきゃ何言ってるか分からないでしょ? やっと最近習得させたんだぁ!!」


「……いや待て 確か松原さんが

去年の八月頃に刑事達がこの山に入って消息を絶ったって話を聞いたんだが?」


「はぁ? 何それ? 私は知りませんよ?」


家に到着すれば 縁側に荷物を置く二人

すると丁度別方向の山林から藤吉も帰って来た


「相変わらず飯の匂いには敏感ですね ただいま藤吉さん」


「ウキキキキ!!」


「そういえば藤吉さん 去年の夏に刑事っぽい人達見なかった? 団体なんだけど?」


「…………」


藤吉は柴塚の腹と岳斗の顔を踏みつけながら家の奥へと姿を消し

現れたかと思えばホワイトボードと水性のペンを持参して戻って来た

尻を掻きながらも長文をスラスラと書いて見せる


『怪しい奴等は確かに見た

何かを探しているのか辺りをキョロキョロして動物達も警戒していた

長靴を履いていて スーツ姿とジャンパーで山の奥へと行くもんだから印象深く覚えている』


「んでどうなったんだ?」


『看板見つけてどんどん人が近付かない場所へ向かった

自殺志願者かと思って深追いの趣味は湧かなかった』


「……その後は?」


『まだ文字が書けない時期だったから 香里奈にも報告はしなかった

別に危害があるとも思わなかったからな

んで数ヶ月経ってふと奴等を思い出し 進んだ先を覚えていたんで探しに行ってみたんだ

そしたら帰れなくなっていたのか 仲良く野垂れ死んでいたよ』


「詰まる所…… ただ遭難したって事か? しかも誰にも見つけられていないと?」


『山を舐めてるのかって思ってたが 本当に死ぬとは思わなかった

最近はもう白骨化していると思う 何せその後は同じ様ななりの奴等が来なかったからな』


「行方不明…… しかも刑事ともなれば警察が黙ってないだろうが……」



「時雨山は一応霊山だからねぇ……

基本地元民以外は立ち入り許可が降りない神聖な場所だから

もしかしたらその刑事さん達 あくまで独自調査で他と連携取れていなかったんじゃないかしら?」



死体が放置されている方角を教えて貰い 安斎はふと何を思ったのか手を合わせる


「それじゃ俺と芽神は神聖な霊山に土足で足を踏み入れたって訳か……」


「別に所有者は私達じゃないし 看板に助けられて無事に下山出来たんですよね?

なのでさっきも言いましたが偶然が重なったんです

素人が山道から外れるとか正気の沙汰じゃありませんから」


買ってきた物を冷蔵庫に入れる河上

暫くすれば柴塚と岳斗も起き上がって食料に手を付ける

ようやく全員の体調も良好になったタイミングで

次どういう行動に出るか 話し合いの雰囲気に入っていた


「よっしゃぁ!! んでどないするぅ?」


「もう一人呼んである…… そろそろ着く頃だ 招いて良いんだな河上?」



「えぇ…… 話を聞いた限り 警察の信用出来る人間は絞って損は無いわ」



すると鈍い足音が徐々に大きくなっていた

こちらに近付く彼は 酷く疲れを見せていて今にも倒れそうだった


「ハァハァ…… 喫煙者にこの場所はキツすぎる……」


「もう会うのは久し振りな感じがします 松原さん」



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