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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター4 窮途之哭
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第45話 内と外の温度差


6月7日 暁風楽校


いつもは真っ暗になる時間帯の校舎だが

その円形の構造物の窓から四方八方に照らされる電灯は賑わいを表していた


「完成した鍋は体育館に持っていって下さい!!」


生徒主導の下 この日に限っては教員達はただの客として招かれるお泊まり会

就寝も宴会も出し物も全て体育館で行われるのだ 参加人数は全員で84名

生徒44人 保護者会の親御さんが18人 教員は全員参加の21人

そしてゲストで呼ばれたのは柴塚久留美ただ一人である


体育館には夜の寒さに対策された何台ものストーブが配備されていた

広い空間の中心に今日の献立が並んでいく それを隅で見ていた楽長と柴塚が談話している


「大きなイベントは見ているだけで楽しいですねぇ~~……」


「来ていて頂いて感謝します柴塚さん やはり安斎先生は厳しかったのでしょうか?」


「えぇ…… さすがに一週間も経たずに全快する人間ではありませんので……」


「うちの生徒が…… 大変痛ましい事この上ありません 近々お見舞いに行かせて頂きます」


「いいですいいです!! そこまでして貰わなくても大丈夫なので!!」


流れる様に食事を運搬してくる生徒は主に暁風寮出身の者が多かった

さすが毎日自分達で自炊している子は動きに無駄を見せない


「そういえば門脇さんは来てないんですか?」


「寮の留守番を引き受けて貰いました 彼女は常に生徒と一緒にいるので悔しく無いと」


「そうですか…… こういう時こそ寮母さんの晴れ舞台だと思うんですがねぇ……」


「最近は物騒ですから こういう肩の力を抜いている時こそ強盗に隙を与えてはいけません」


「なるほど……」


食事は出揃い 学校の給食の様に一列に並び

向かい側で食器を持って 横に歩いてく生徒や大人達にご飯を配り始めた

給食当番の芽神達は皆活き活きとしていて

寮に置いてあるマスクと頭巾と給食エプロンに身を包む姿は可愛らしい


「高校生で白い給食エプロン着てる奴なんて俺達くらいだよなぁジョン!!」


「逆に誰もやっていないから新鮮だな」


高校生の妻夫木と日野はこの状況を楽しんでいた


「後にでも写真撮って良い? 妻夫木?」


「勘弁して下さいよ溝口先輩……!!」


おかずを盛り付ける際に話し掛けられるのも屡々しばしば


「可愛いじゃないですかジョンさんとアランさん!!」


「おぉ花巻君!! 君は素直だから何枚でも写真撮らせてやる!!」


全員が席に着けば それぞれ役割を決めていた中での頂きますの挨拶を

寮生である井出葉月が務める


「それでは頂きます!!」


「「「「「 頂きます!!!! 」」」」」


人数が多いだけにそこら中の話し声が一気に飛び交い

皿を打つ箸やスプーンの音が心地良いBGMだった


「柴塚先生!! 今日は来てくれてありがとうございます!!」


「こちらこそ至れり尽くせりでぇ」


「また恋バナ聞いても良いですか?!」


「した覚え無いんだけどな……」


柴塚は相変わらずの女子人気

二十代女性は婚活絶頂期という認識が生徒達の常識

しかし話題に事欠かない安斎との良い思い出も悪い思い出も

話している本人は満更でもなく楽しんでいた




暁風寮は真っ暗闇

そんな施設の玄関を叩いたのは安斎だ

彼がここに来た理由は寮母である門脇に頼んで潜伏する為


「門脇さんいますかぁ? ……楽校の方にいるのかな」


玄関の戸に手を付けると


「開いてる……」


安斎はこの状況に一瞬で嫌な予感を張り巡らせた


「門脇さん…… 誰かいないのか?!」


真っ暗闇の寮内は沈黙している

普段大勢の人間が生活する場所だからこそ一層怖さが生まれる

一通り部屋を覘く安斎は誰もいないことを確認したが

再度台所に戻って考えたくもない思考を巡らせていた


ーー砂壁…… いや考えるな……


すると静かになってやっと遠く聞こえてくる何かが軋む音

安斎は玄関脇のトイレと向かい合う物置部屋へと入る

さっきもここへは来たのだが 明らかに空気が重い それは彼自身の直感が働いていた


ーー何だ…… この嫌な気持ちは…… 勝手な憶測がそうさせてるのか……?


心を静める為に一度深呼吸してみたその時

天井の一部がゆっくりと崩れて来たではないか


「ハァハァ…… 屋根裏部屋への階段か……」


登ってみるとそこは窓一つが月明かりを誘っており 一部の床だけを照らし続けている

光で埃が舞っているのが分かり そして置かれている物は少ない為 嫌でも一つに焦点を置く


「ハァ…… ハァ…… あぁ……!! あぁ…… っ……

うぁああああああああああああああああああああああ!!

……うぁあああああああああああああああああああああ!!!!」


そこには門脇が何発もの銃弾を打ち込まれ 椅子に座らされていたのだった

同時に寮の玄関から騒がしい声が響き渡っており


「通報があったのはここで間違いないんだな?!」


間違い無く警察関係者

それを察知した安斎はスマホを取り出して門脇の遺体を写真に収めた


ーー銃弾は五発…… 手と足は有刺鉄線で繋がれている

暴れた痕跡として手首には刺し傷や切り傷が多数

彼女の表情は…… しっかり受け取ったよ


口惜しいと思わんばかりの恐怖と憎悪で染まる仏の顔を

安斎は受け継ぎ 窓ガラスを蹴破って地上に降り立った


「外に人がいるぞぉ?! 窓を破って出て来た!!」


安斎の顔にライトが当てられる


「県警の小柳だ 大人しく手を挙げろ

お前は強盗か? 流行の闇バイトの実行役が田舎にまで出没するようになったのか?」


「っ……」



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