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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター4 窮途之哭
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第40話 資料館


6月2日


朝早く寮を出た安斎と柴塚は

昨日の日野達と弁当を食べた川沿いを歩いていた

コンビニで買ったアメリカンドッグを咥えながら二人の行く先は

東海林妖しょうじょうの資料が置いてあるという北陰市の【文化交流センター】だった


「本当に今回の事件枠に入れるんですかぁ? そんな都市伝説?」


「河上の咄嗟に出た意見だからまぁ出鱈目っちゃぁ出鱈目なんだが……

四ノ海を追えない以上 この北陰市の事を知る良い機会だ」


「探偵がスピリチュアルに注目したらお終いだと思うんですがねぇ~~」


「何事も確かめねぇとよ……

仮に東海林妖の正体が人間で今回の事件に絡んでいたらそれこそ後手に回る」


「それって東海林妖は殺し屋って言いたいんですか?」


霧が深い中で辿り着いたこの町唯一の文化交流センター【シェルドホクインホール】

大型木造耐火の施設で 中はロビーと文化伝承室とコンサートホールに分けられている

駐車場はそこまで広くなく 停められている車はここの従業員のみ

中に入ると受付もいない静かなロビーが広がっていた


「行事も無ければこういった施設も寂しいんですよね~~」


「俺は好きだがなぁ…… 世界で自分一人しかいないって感じがする」


「ていうかこんなに早く来る必要ありました?」


「仕方ねぇだろ…… 寮で朝食まで頂くわけにはいかねぇんだから

そこまで俺は図々しくなれねぇ……」


「すいませーん!! 誰かいますかぁ?!」


すると受付の奥から独りの中年男性が現れた


「こんな時間に何の用ですか?」


「私達はトアル探偵事務所の者です 文化伝承室の東海林妖の資料を見せて貰いたくて」


「こんな朝っぱらから変わってるねぇ…… じゃぁ案内しますよ」


紫のカーペットを歩いて行く三人

三階に登って隅にある扉の鍵を開けると


「図書館の様に綺麗じゃなくてごめんねぇ」


「いいえ大丈夫です……」


「私は鬼面川貞清おものがわさだきよって言います

何かあればロビーまでお声掛け下さい……」


そう言って彼は出て行ってしまった

さっそく二人は手分けして東海林妖にまつわる本を掻き集めた


「大昔から語られる伝説なんですよねぇ〝東海林妖伝説〟って……

デザイン元の著者とかもいない辺りが現実味を帯びていて不気味です」


「いつの時代も暇潰しに怪談を作りたがるってことだ

しかし語られることに統一性が無いなぁ……」


「東海林妖様にお願いすれば…… 殺したり・攫ったり・悪戯したり・災いをもたらしたり

所長が受けた依頼は楽校の七不思議の解明が条件でしたけど

昔は供物を捧げたりだったらしいですねぇ……

空から飛来って宇宙人設定ですかね?」


「もしくは外国人だったりしてな

昔の人は自分達と容姿が違う外人を鬼や天狗に例えていたくらいだ

もしかしたら東海林妖もそんな感じなのかもしれねぇ」


「ですが…… あくまで創作としてどの本にも書かれているだけで

実際に妖怪が関わっている話は大正時代が最後ですね しかも文字のみの小説だけです」


「胡散臭いけど…… 後は住処だが ここは芽神と行った時雨山で合ってるんだな

まさかあの古民家の住人が詳しかったりしてたのかなぁ 代々東海林妖に仕えていたとか」


「有りそうな話ですよねぇ……」


すると扉が開かれて 鬼面川がお茶と水羊羹を持って来てくれた


「東海林妖の伝説なんて 今や興味を持つ人間も少なくなっているので感謝ですよ」


「鬼面川さんはどれくらいこれについて知ってるんですか?」


「何せ実際に見たことも無いですからねぇ~~

オカルトチックな話は私もあまり興味が無いもんでしてぇ

私のお爺さん辺りの世代になれば 嘘かホントか茶飲みの話題にしてましたがね」


「東海林妖が実は人間だったなんて話は?」


「いやぁどうだろう…… 設定が追加しても別に誰も困らない様な怪談ですし

子供を躾ける為なら何でも付加を増して言ってましたねぇ昔は

あぁそうだそうだ!! そういえばアレが眠ってますよ?!」


鬼面川は二人を連れて一階のコンサートホールの映写室へ


「ここはもう演歌歌手や落語家さんがイベントする為の場所なんですが

昔は映画館としても栄えてましてね 昭和の終わり頃までは満員御礼だったんですよ」


「どこも小さい所は廃れていくんですねぇ……」


「ビデオ屋やゲーム屋でのレンタルが当たり前になって

今やスマホで観れる時代じゃないですか……

デカいスクリーンで観賞したい人でもそれなら

もっと大きくてポップコーンやフライドポテトが買える場所の方が良いですしね」


「時代の流れって奴ですねぇ……

態々映画館に足を運んでレトロな映画を見る人もいないですし」


「あぁこれだこれだ!! 制作が北陰市の人間なんです

タイトル【北陰市の守り神~~東海林妖様が承ります~~】って映画なんですけど」



「これまた随分思い切っているなぁ……」



映写室の壁にスクリーンを貼り 映写機にフィルムを嵌めて起動させてみた


「まだ動くもんすねぇ……」


「作った人は大事にするもんですよ 丁重に保管されてましたから……

映画ブームに肖って町興しの為に作ったんでしょうねぇ

県外でも上映させて貰える様に頼み込んだらしいですよ」


「白黒なんですねぇ…… 俳優さんは何処かから引っ張ってきたんですか?」


「実は登場している人達 全員地元民なんですよ

だから制作費もそこまで掛からなかったらしいですねぇ

……でもこの映画が作られたのは平成7年なんですよ オカルトブーム花盛りの時代です

こういうジャンルの作品はやっぱり白黒が映えるとか 当時の人達の感覚なんでしょうかね?」


「……ん?」


安斎は映画のワンシーンに出て来る一人の女性が気になった



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