第38話 さぁ始めよう
安斎は柴塚共々その場に残し 寮の外で電話を掛けた
『おぅもしもし…… 今度はテロか?』
「そうポンポン事件に巻き込まれないから今は困ってるんですぉ……
寺田昌治の検死の結果とか出たんですか? ニュースでは亡くなった報告しか出てませんが?」
『俺にそんなに情報が降りるわけねぇだろ…… あれの担当は小柳って刑事だ』
「でも俺が貴方に通報したんですから完全に蚊帳の外って訳ではないですよね?」
『……ハァ あくまでこれは独り事だからな
被害者は殺されてから砂壁に埋められた これは死亡推定時刻で明らかだ』
「靴の足跡はどうなんです?」
『犯人は複数だ…… だがありゃぁフェイクの可能性がある』
「と言いますと?」
『場が入り乱れ過ぎてる雰囲気の割には犯行手順が美しすぎる 不謹慎発言だがな……
小柳主導の捜査ではまず他殺だという結論だ
殺害方法は毒殺 検出された毒は芽胞で汚染された〝ボツリヌス菌〟』
「ボツリヌスって辛子レンコン事件の?」
『ボツリヌス菌が産生する複合体毒素だ
めまい・吐き気・悪心などの神経系に症状が出始め
勿論死に至らせる可能性も十分にあるバイオテロ有力選手だよ』
「そんな危険な物が出回ってるんですか?」
『しかも致死量をコントロールしてテメェに都合の良い遅効性にしてある
おそらく細菌兵器として創られた物と見て入手ルートを洗っている最中だ』
「……靴や指紋 現場の微物から犯人の特定は?」
『……グラスフロッグと同じだ 特定不可能
靴も海外で入手されていると断定された 捜査を撹乱させて煙に巻く腹だろうな』
「……四季園蕾誘拐事件と寺田昌治毒殺事件は同一犯ですか?」
『そう判断を急ぐな…… って言いたいところだが捜査本部の犯人像を聞いたら驚くぞ?』
「誰です?」
『反社会勢力お抱えの殺し屋だとよ?』
「はんっ…… 何ですかそれ?」
『しかもお隣の大陸出身だって話だ どれだけ手広く捜させてぇんだろうなグラスフロッグはよぉ
つまり二つの事件はどっちも公安部にお鉢が回るらしい
恐れ入ったよ 現場の刑事がどうこう出来る話じゃ無くなってきた』
「証拠を容易に操作可能だから殺し屋に行き着いたんですか?
自棄になっていないちゃんとした根拠があるんですよね?」
『俺に噛みついたって何も出てこねぇよ……!!
四季園蕾誘拐に関しては誘拐保険疑惑があるから 正直下っ端の連中はやる気を無くしてる
事件解決を祈ってる俺にしちゃぁ取り敢えず……
毒薬の入手ルートと寺田昌治殺害の犯人が特定されることだな
寺田昌治って糸口から四ノ海の人身売買に繋がりたいんだろ?』
「はい……!!」
『それで全部が収束して丸く完結するかは分からねぇが……
まずはあれだ 俺が出せる情報は全部だから後は推理しな名探偵
……なんか俺も立派に汚職刑事になってきたなぁ』
「……ありがとうございました」
新たに得た情報 毒薬と警察サイドの犯人像は殺し屋
この時点では空想じみた異次元の話の様だが
そして殺し屋と聞いて頭を過ぎるのは 丑三つ時に現れた謎の覆面女性
芽神の部屋に戻れば妻夫木と日野が正座待機していた
「刑事さんと秘密のやり取り!!」
「探偵の卵の永遠の憧れです!!」
「……監視されてる様なもんだよ」
安斎の浮かない顔に柴塚は心配する
「何か分かったんですか?」
「あぁ…… もはや伏魔殿だよ 次にあの人と話すときは何が出て来るのか分かったもんじゃない」
「日を追う毎に複雑化してるんですね……」
「……だが尻尾は彼だ」
壁の真ん中にセロテープで貼られる寺田昌治の写真 楽長から借りてきた
その周辺には四季園蕾・赤坂舞香・四ノ海の人身売買の情報のメモ紙が点在して貼られた
「ルールは至ってシンプル 俺と久留美が寺田さんを中心に犯人像の分析に入る
ジョン達四人は自分は悪者扱いされても構わないってくらいの質問をバンバン挟んできてくれて」
「「 ういっす!! 」」
「これはゲームだから気楽にフランクにやって貰って構わない
プロファイリングと言っても結局素人でしかないから 中には横道に逸れる憶測も出て来る
だから都合の良い仮説を作らない為にもご協力願いたい」
「「 分かりあしたぁ!!!! 」」
妻夫木と日野はノリノリ最高潮だが 芽神と河上は付き合わされてるオーラ全開だ
「乗り気しないか河上?」
「いいえ大丈夫です…… ちょっとゲーム説明が進行され過ぎて置いてかれてるだけですから
的外れな質問をしても怒らないですか?」
「スムーズに進めるって点では的確に越したことはないが……
初めてなんだし最初は何でも言って感覚を身に付けてくれ」
河上は折りたたんでいた足をベッドの下に置いて正面を向けてくれた
「芽神はどうだ?」
「……まぁオーケーです あまり推理物とか趣味じゃないので同じく付いていけないだけで
だけど冷めるとか大っ嫌いなんでなんとか前向きに行かせて頂きます」
「……よぉしその意気だ!」
安斎達が話している他で 柴塚が線を入れて関係性を分かり易くしてくれていた
「なんか良いですねぇ…… 若者達と同じ事をするって
私の学生生活はどちらかと言えば灰色でしたので」
「俺なんて今になって初体験だからなぁ…… 単位は取れねぇけど良い気分だ」
「じゃぁさっそく始めますか?」
安斎は寺田の写真を手に取ると 左手で腰を掴み
持ってる右手をここぞとばかりに口元に運んでかっこつけた
「さぁ…… プロファイリングを始めよう」




