第39話 六人のトーシロープロファイラー
安斎「被害者は寺田昌治 57歳 身長172cm 体重65㎏
暁風楽校の用務員と守衛を兼任 独身で孤児だったという経歴だ
そして裏では闇バイトとして人を攫おうとしていた事実も確認している」
柴塚「殺害方法は毒殺……
その後は自宅の砂壁に埋もれていたでしたね
因みに第一発見者は所長です
手間が掛かってる分 他殺が濃厚ですよね?」
安斎「人の手を借りて行う大掛かりな自殺なんて
それ自体を作品と思い込む異常者だからなぁ
それより犯人像に辿り着く上でのポイントはやっぱり目だな
寺田さんは相当苦しんで死んでいた 遅効性の毒がそうさせたんだろうが
恐怖に戦いている表情を汲み取るに全くの他人である可能性が
十分に観て取れた
もしくは闇バイトで知り合った誰かだな」
河上「本当に寺田さんは闇バイトなんてしてたんですか?」
安斎「あぁ…… 手順としては褒められない逆走ルートで知り得たんだが……
俺が彼の家に行くまでの経緯が証拠だ
自分が潜入した闇バイト先で
本来は互いに悪人として顔を合わせる筈だったんだ」
妻夫木「犯人が存在したと仮定した場合 砂壁に埋めたのは証拠隠滅なのかな?」
日野「もしかしたら犯人側にそういう趣味があったとか? 剥製みたいな?」
柴塚「だとしても砂壁に埋め切ったら意味が無いんですよねぇ……
壁を削って中を取り出してみようって玩具感覚なら
とんだ殺人ピエロだけど」
安斎「ためらい創とかは見当たらないからおそらく他殺だ
今の線で行けば犯人は間違いなく異常者だな
警察でさえ殺し屋説が浮上してるんだ 通常の犯人と見ない方がいい」
芽神「人身売買っていう大規模なビジネスなら
それだけリスクも大きいですよね?」
安斎「あぁ結果としては寺田さんは誰も誘拐して来ず自宅で死んでいたんだ
それが誰かの逆鱗に触れて その誰かに殺されたか
その誰かが殺し屋を差し向けたか」
柴塚「そんな変態な殺し屋さんに思い当たる節があれば……
夜中のあの出来事くらいですよね~~
だけどあの不審人物からはそんな気はしなかったですよね?」
安斎「おそらく安久谷橘平が差し向けた殺し屋には間違いないだろうが……
今回の事件と同一かって言われれば急ぎ過ぎな気もする」
河上「…………」
妻夫木「どうしたんだ香里奈?」
河上「うーん…… どうしても砂壁に埋めるってのが理解出来なくて……
遺体を隠すなら自宅っていうのがまず……
証拠も消そうと思えばいくらでもありますよね?」
芽神「手間暇掛けてここに至る犯人の思想が見えないよねぇ……」
安斎「思想?」
芽神「安斎先生もアランも犯人を狂信寄りに考えてるじゃないですか……
なので犯人がマッドな芸術センスをひけらかしてるなら
そこにどんなメッセージがあるのかなと」
日野「うん…… 俺はまずこの話を聞いた時に
思い浮かんだのは〝ビックリ箱〟だ
実際に安斎先生もビックリして気絶しちゃったんでしょ?」
安斎「あれは不覚だったぜ……」
柴塚「それに何でしたっけ? その部屋は盗撮か盗聴もされてたんでしたっけ?」
安斎「多分警察が回収してると思うんだが……
松原さんとの会話に出て来なかったから大した足跡も無いんだろうな
つまり録画・録音タイプじゃなくリアル中継だろう
仕掛ける時に自分の顔や声も残すようなヘマもしない几帳面な奴だ
まぁ機器を仕掛けた奴と寺田さん殺しの犯人は別だろうな」
柴塚「態々そんなリスキーなことしないと思いますもんね……」
安斎「それは置いておいて犯人の思想か……
誰かをビックリさせたかったのなら愉快犯だが」
日野「俺は挑発してるのかなって思いましたね……」
安斎「挑発か……」
日野「ちゃんとした動機を素に実行された殺意……」
芽神「……何だか急に怖いね」
安斎「……寺田さんは子供を見守る立場の人間だった
そんな人間が人攫いをしてたら当然許せねぇって奴も出て来るよなぁ」
日野「教育を重んじる者から教育を冒涜する者への粛清…… どうですか?」
安斎「なるほどな…… 思想としても悪くねぇ」
日野「……思った事がまとまったんで言ってもいいですか?」
安斎「おぅぶつけてみろ名推理!!」
日野「元々その盗撮器か盗聴器は仕掛けられていたんじゃないんでしょうか?
つまりは前々から寺田さんは誰かの監視下にあった そして……
監視されている人間と人身売買の偉い人間は協力関係にある
ここは憶測です
そして人身売買の方で寺田さんはミスをしました
しかしそのミスの内容ですが……
これは俺というか俺達視点の印象ですが
やっぱり寺田さんは人の道を逸れる人間じゃないと信じてます
なのでそのミスの内容というのは
信頼出来る第三者への告発じゃないでしょうか?」
妻夫木「……外部に漏らしたってことか」
日野「本来はその人身売買に関係してる人間が
始末やら脅しに掛けてくる流れですが
その前に情報は外部に流れ
その中で恨みを買ってしまった一般人に殺された」
妻夫木「でも一般人が殺し屋なんて雇えるか?」
日野「殺し屋はあくまで予想でしょ?
やってることは残忍だけど数がいれば可能だ」
安斎「…………」
〝 あそこ…… あそこは何かヤバいんです…… 〟
安斎「ここで建守颯颯の言葉が過ぎるかぁ……」
芽神「どうしました?」
安斎「あぁいや…… だが誰にチクったかが問題だなぁ……
寺田さんはあまり交友関係が得意じゃないって言ってたし……」
柴塚「そこは楽長じゃないんですか?」
安斎「じゃぁ犯人は楽長先生ってことになるな……
それか彼の息の掛かった人間だ」
河上「あのぉ…… 東海林妖が犯人ってことはないですか?」
安斎「何?」
河上「そもそも今回の事件って安斎先生が見つけなければ
行方不明で終わる可能性が高かったんですよね? 演出が神隠しですよね?」
安斎「……だからって妖怪の所為にするのは」
河上「知らないんですか? 東海林妖様に御嘆願が叶えば
伝承では対象となる相手を連れ去ってしまうケースもあるんですよ
それも痕跡を何一つ残さず」




