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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター7 波に揺られる島
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第85話 自分の宝物


8月15日


今日は宿泊客のほとんどが帰って行ってしまう日

讃岐の提案もあって なんと安斎達は港の食堂でご馳走になっていた


「飛翔島スパイシーカレー六つです!!」


「うわっ!! 本当にライスが島の形してるんだな……」


そこにフレバーの姿は無かった 彼なりに控えたのだろう

旅館は大将に任せ 美祢葉も同行していた


「息子の件…… 本当にありがとうございました

無事に帰って来れたのもお二人のお陰です」


「デュヒヒヒヒ!! 安斎ちゃんの記憶も戻ったしぃ 万々歳やなぁ!!

オバチャン!! スパイシーカレーもう一個追加やでぇ!!」



「遠慮しなさいよ……!! 何か無関係な私までご馳走になってすみません」



柴塚の隣で岳斗が注文を叫んでいる

美祢葉が時計を確認していれば 自ずと時間がやって来てしまった

船着き場まで見送れば 連絡船が静かにプカプカと浮かんでいる


「では皆さん…… お世話になりました

ほら泰鳥もちゃんとお礼言って……」


「…………」


怖い思いをしたからなのか 朝からずっと口を閉ざしていた

リュックの紐を弄りながら下を向いている


「今生の別れでもありませんし また来年も当旅館をご利用下さいませ!」


「ありがとう美祢葉ちゃん 随分と逞しくなったね……」


「お気を付けて」


親子は船内へと入って行く

しかし船体は一向に動こうとはしない 何か問題が起きている雰囲気だった


「トラブルか……?」


「その様ですね…… 私見て来ましょうか美祢葉さん?」



「……いいえ おそらく」



すると船内アナウンスが小さく鳴り響いた


『乗船されましたお客様に伺います

〝賽の河原〟で丸い石を持ち込んでしまったお客様は

どうか素直に名乗り出て下さい』


摩訶不思議なアナウンスは安斎達を威圧した


「美祢葉さん…… これどういうことですか?」


「昔から賽の河原の石を一つでも船に持ち込めば 何故かエンジントラブルに見舞われるんです」


「怖っ……」


犯人はすぐに分かった 泰鳥である

父親の讃岐が取り出して その石を受け取ったのは美祢葉だ


「いやぁ申し訳ないです…… こっそりリュックに入れてたみたいでして」


「…………」


美祢葉は泰鳥と目線を合わせるくらいに腰を下ろす


「どうして石を持っていったの?」


「……お母さんの代わり」


「……あの浜辺は色んな霊が集まって来てるから この石にお母さんが宿ってるとは限らないんだよ?」


「えっ…… そうなの?」


「……私もお母ちゃんがいなくてね でもここにいるの」


自分の胸をトントン叩く美祢葉


「……心臓?」


「そう…… 私にとって替えの利かない宝物

泰鳥君が持っていこうとしたこの石は替えが利く物

何かお母さんから貰った物は無い?」


「……ご飯」


「ご飯?」


「いつもお母さんはご飯を作ってくれた…… また会いたい……」


「……じゃぁ泰鳥君の宝物は」


美祢葉は泰鳥の胸の真ん中をトントン叩く


「食べた物は君の身体の一部になってるんだよ 泰鳥君は自分の身体を大事にしないとね」


「っ……」


「危険な場所へはもう一人で行かない 約束出来る?」


「……うん!! 僕も宝物を見つけた!!」


エンジンも直り 動き出す連絡船

船尾で讃岐親子はずっと手を振ってくれていた

安斎達も手を振り返し 岳斗に至っては脱いだTシャツをグルグル回している




帰りは買い物をして旅館へと戻る道中

安斎と岳斗が荷物を持たされていて 先頭を歩いている美祢葉は両腕を伸ばしていた


「くぅ~~!! ペテちゃん達以外のお客さんも減って来たし 楽しかった盆休みも終わるなぁ」


「美祢葉ちゃんは若いのに地元に残って偉いね!」


「旅館と言い張っても民宿だしね お父ちゃんに任せててもいつ潰れるか分かんないからさ

どうせなら潰れるまで働こうかなって…… 潰れたら本土でセカンドライフだね!

柴塚さんは私より年上だけど なんかこう…… もっとお姉さんって感じがする」


「まぁ私…… シティーガールだから!!」



「棘岬町も十分田舎だろうが……」



やいのやいのと旅館まで辿り着けば

いつもの様に二手に分かれ 安斎と美祢葉は夕食の用意

柴塚と岳斗はフレバーが寛いでいる食堂に向かった


「おい岳斗これ……」


「……とうとうメディアにも嗅ぎつけられたんやなぁ」


フレバーはテレビを見ていた 内容はアナウンサーも慌てる程の速報


『夕方のニュースです 総資産2兆円前後で肩を並べる

ここ最近は誘拐や殺人で騒がれている旧二大財閥 四季園家と四ノ海グループ

双方のトップである四季園春義氏と四ノ海額蔵氏が外国に渡ったという情報が入りました

情報では血縁から外部の関係者全員が 揃って次々と日本から姿を消している模様です』


二つの名前を耳にした安斎も風呂掃除から帰ってくる


『宮治さん…… これは一体どういうことでしょうか?』


『日本を捨てた…… とまでは言い切れませんが異質な行動ですよねぇ

噂では四季園家は躍起になって金を集めていたやら

四ノ海家は誘拐事件に関わっているなどなどゴシップを目にしますが……

そして渡った先は〝バランタイン公国〟というヨーロッパにある国ですねぇ

現在も貴族が治めている小さな国として 日本からの観光客も多いなんて話も聞きます

一族総出でバカンス…… にしては謎が多い今回の動向は未だ明確になっておりません

引き続き続報が欲しいところですね』


『あっ…… 現地の馬淵アナから中継が入っています 馬淵さん!』



『はい……!! えぇ今現地メディアの情報が入りまして……

どうやら二つの財団は綺麗に分かれ 一定の距離を保った敷地に滞在しているようです

まるで縄張りを作っているかの如く領域を固め そして記者の介入は断固として拒否しているようです

これといった新情報はありません 以上現場からでした!!』



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