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最初のお客さん

早速教えてもらった場所を見に行くシドー。


まずは北側にある場所に向かうと…そこには確かに家はあるが風が吹くとガタガタと(きし)む音が聞こえて今にも倒壊しそうな場所に着いた。


「ここ…だよな?今にも崩れそうなんだが…パスだな。」


シドーはクルッと背を向けて次の場所に向かった。

スタスタと歩いていると後ろから大きな音がなったが…見なかった事にした。


次は連泊してる宿屋の裏手にあるらしいが…不安だな~


シドーは不安を抱きながらも…目的の場所に着いた。

先ほど場所と家の大きさは異なり、かなり小さい場所で家と言うか少し広い倉庫…(たたみ)3つ分程の広さ…

シドーは悩んだがその場所から周りを見ると人通りはある。

ん?この向かいの建物…ギルドだな。


〈ボウケンシャギルド、ウデジマン!ツドエ!〉


冒険者ギルドか…ここでマッサージの店出せばまだ興味本位(きょうみほんい)に来てくれるかも…ってさっきの場所はもうないからこの場所だな。


シドーは商売ギルドに戻ると受付にはちゃんとフランクが座っていた。…まぁさっきも座ってたらしいが。


「シドーか…場所は決まったか?」


決まったかと言われてもそこしかないよな…


「はい、宿屋の裏手の場所に決めました。」


「そうか…こちらで登録…しておく。すでに価格…は考えているか?」


「そうですね…手と足だけに絞ってやろうかなと。手だけや足だけで…1ワクで両方で2ワクでやろうかと」


その言葉を聞いたフランクはチラリとシドーを見てため息を出しながら話す。


「…気は確かか?」


「えっ?」


「何を…基準にしたのか…わからないが…あまりにも釣り合わない」


フランクは書類を片付けながら淡々と低いトーンでシドーを(たしな)める。


「その腕なら…20ワク…払っても…客は逃げない」


「20ワク!?今止まってる宿屋は2ワクですよ?」


「そうか今停まっている所は…ダナの所か…本来…宿屋は町でも王都でも10ワク以上ないと…泊まれない…あの価格で…泊まらせてるのは…この町に永住する…契約をしている為の特例…」


ま、マジか?ダナさんがそんな契約してたのか…


「本来…商人は…売れなければ…違う町に移る…のが自然…だが…シドーよ…」


フランクはペンを置き、シドーを見つめながら話す。


「例え売れなくても…自分にとって…住みたい場所で…商売するのは…意地や居心地がいい…だけではない」


「意地や居心地がいいだけじゃない…ん~何ですか?」


フランクは視線を書類に戻し、ペンを握る。


「その先を…知りたいなら…シドー自身で…見つける事だ…」


フランクは書き終わった書類を持ち、受付から立ち上がる。


繁盛(はんじょう)する事を…願っている…」


フランクは受付の奥に向かい歩いて行った。


シドーはギルドを出てフランクが言った言葉を考えながら借りた場所に向かう。


フランクさんの意味深な言葉…何だろ。

愛と勇気?元気がモットーとか?…しっくりこないな。まぁ悩んだってわからんもんはわからんもんだ!

それよりも20ワクでも大丈夫みたいな事言ってだよな?

評価してもらえるのは嬉しいけど…ん?


シドーは雑貨屋の前まで足を止めた。

自分の父親も雑貨屋をしているがやはり町なかなか見られない物ばかりある。


「いろいろある…手拭いになりそうな布に昔ながらの木の彫り物、ナイフに足枷(あしかせ)まである。ん?何だ?銀の指輪?…にしてはボロボロだな」


「坊主。そいつを知らないのか?そいつは光の指輪って品物よ。夜道や暗い場所を照らすもんだが…壊れかけでな。まぁ持って後一回で壊れるかもな~」


いやいや、壊れかけ何て置いても誰も欲しがらないでしょ?


「後は壊れる前には少し強く光出すから護身用で売ってるんだが…安くするから買わねぇか?」


見るからに怪しい物だけど…


「どれほどの光を出すんです?」


「そりゃピカッ、てもんよ!」


や、役に立たねぇ…


「本来なら10ワク何だが、この綺麗な手拭いを付けて7ワクでどうだ?安いだろ?」


宿屋より高い上に手拭いまでプラスして売って来やがる。これで7ワクも取るのかよ


買う気はないがチラリと懐の袋を確かめる。カク4枚にワク5枚か…行くか。


店前から立ち去ろうとするシドーに雑貨屋の商人は追撃の手を緩めない。


「まったく商売上手な子供だな~仕方ない!この香りのいい匂い袋も付けて…5ワクでどうだ?破格だろ?」


通販見たくポンポンとサイド商品が増えていく。


「すみません、今は5ワク()()持ってな「5ワクあるんだな!まいど!また珍しい物集めておくからよろしくな!」


商人はあれよあれよと商品をひとまとめにしてシドーに渡し、ニンマリとしながら手を付き出していた。


な、何故に商談が成立させられた…これが商魂ってヤツなのか?

今突き返せば!クッ、近くの人がボソボソと聞こえるし俺を見ている気が…安いからだよな?断ったらもう安くしてくれないのか?


シドーも次は来ないと誓い、渋々とお金を渡したのであった。


さて…マッサージの価格…20ワクでやるか…これでトラブルになったらフランクさんに一言文句を言ってやる!


自分の店となる場所に着いてブツブツと呟く扉を開ける。中には水が入ったツボとイスとテーブルがありその上に木の看板みたいな物が置いてあった。


「すぐに商売できる様に置いてるのか。ん?看板に文字が…」


モウ、コンナセマイトコ、イヤダ

って前の人のラクガキか?…そりゃ嫌になるわな。


シドーは手拭いを使い、看板に書かれた文字や汚れを綺麗に拭いて整える。

テーブルの上には学校で使われるチョークの様な物があった。シドーは手に持って綺麗にした看板に書き出した。


この世界にはマッサージする仕事がないらしいから…簡素な説明でいいかな。価格もキッチリと書いて…よし!


ツカレタテヤアシ、モミマス、マッサージヤ、テヤアシ、20ワク。

テダケ、アシダケ、10ワク。


こんな感じかな。カタカタで書くとわかりにくいが…マッサージを端から見える様にやればわかるだろ。


シドーは看板を壁掛けに引っ掛けて、イスを扉の前に出した。


初めての出店だが、何か緊張するな~。

シドーは身体を軽く動かしながら来る人を待った。


チラチラと足を止めて看板を見る人はいるが…最初は声をかけられるまで待つ事にした。

すると店の向かい側にある冒険者ギルドから出て来てこちらの看板をじっくりと眺めるかなり筋肉質な男がいた。

見た目はかなり強面なベテランの戦士が近づいてきて話しかけてきた。


「…まさか少年、お前が店の主か?」


「は、はい。いらっしゃいませ。自分が開いたマッサージ屋です。」


「マッサージ?とやらは手や足を揉んで疲れを取るのか?にわかに信じられんが?」


「なら手だけでもいいので揉みましょうか?納得したらお代を貰いますので」


冒険者と思われる男はイスにドカッと座り、腕を出した。


「ならば頼む。不満なら払わんからな。」


最初のお客さんだ!軽く深呼吸して……ふぅ、よし!


「それでは始めていきますね。」














お読みいただきましてありがとうございました。

のんびり書いてます~。

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