疲れとは何だろ?
シドーは〈リフレッシュ〉を唱えて、まずは肩から揉み始める。
結構な硬めな筋肉~気合いれて…まずはほぐしてから…ありゃ?
触り始めはやたらカチカチだった筋肉が瞬く間に弾力的なモチモチした感触に変わり、ポカンとした表情になる。
「むっ…これはなかなか…ん?どうした?」
「あっ、い、いや~なかなか疲れがありますね~かなり無理してました?」
シドーはすぐに我に返り、疲れる要因を探ってみる。
「冒険者は無理してでも依頼を達しておるからな。」
「なるほど~冒険者はかなり長い間続けてるんですか?」
シドーは早くも前腕のほぐしに移るとすぐにモチモチした感触に変わる。
これは…手技療法のおかげだろうな~体感5分もかかってないのにこうも簡単にほぐれる…疲れって何だろな~
静かに揉んでた腕を離して逆側に移動する。肩に触れると突然、脳内に微かに聴こえてくる声がした。以前リフレッシュを覚えた時に聴いた声である。
〈ヒールハンド〉
ケガ、病、老化症状による苦痛を読み取り、手技で触れた部位に治癒を早めるリフレッシュとの併用手技療法。
何かヤバそうなもの覚えたな。もはや魔法じゃないのかい?おや?
腕の動きを確認すると無表情な顔が僅かに眉を細める動きを見せた。肩まわりの筋肉に力が入り硬くなる。
痛み?なら早速使うとするかな…〈ヒールハンド!〉
シドーの両手に薄い水色の様な気が包みこむがまるで何もない様な感覚であった。
肩に手のひらを当てるとマンガによくある吹き出しが手の横から現れた。
〈老化により肩関節の可動域に制限アリ。〉
〈リフレッシュにより精神の安定を確認〉
〈ヒールハンドにより触れてる部位関節を治癒してます………治癒完了〉
…マジで?手技療法ってこんなんだっけ?ん?
肩を少し動かすと先ほどの表情が見られない。
「冒険者様、少し肩を動かしてますが…痛みはありませんか?」
「そちらはあまり動か…な!」
まるで痛みがなかった様にシドーは平然と腕を上に挙げたり後ろに回したりして動作を確認している。
その姿を驚き…自分の腕を見つめている。
「なかなか随分と動かしてなかった様ですね~筋が柔らかくなれば…よし、こんなもんかな。」
シドーは満足そうに手を離した。
イスから立ち上がり腕回りを確認する冒険者。すぐにシドーの方に話しかける。
「長年の悩みがなくなったわい。青年、名はなんと言う?…あまりの驚きに急かしすぎた。わしの名はグラム。」
「シドーです。また疲れた時はご来店を…ぅ!?」
し、しまった!昔の仕事のマニュアル接客が出ちゃった~!
「フッ、その歳で商人気質とはな。」
グラムと名乗る壮年の冒険者は机にジャラジャラとお金を置いて、目の前の冒険者ギルドに向かって行った。
……ハァ~~緊張した~手汗が今頃出てきてるよ~!
机に置かれた報酬を片しながら安堵な気持ちと達成感がシドーの背中を押し上げる。
「最初にしてはいい手応え。しかし…ヒールハンドだっけ…なんかスゴい技?魔法?手技療法って言葉だけで片付けちゃダメだろコレは…」
ぶつぶつと独り言が漏れてる合間にすぐに後ろから声がかかる。
「あんたかい?さっきグラムさんから聴いてね~悪いんだけ頼めるかい?この子が朝方足をひねっちまってね~。」
振り向くとスポーツ選手みたくがっちりしているが旅館の女将のような凛とした女性と罰悪そうな表情を浮かべる従業員の女性が肩を借りて立っていた。
「いらっしゃいませ。すぐにこちらのイスに座って下さい。」
早速の営業トークが飛び出すシドー。座らせた女性の足を確認する。右足首が赤く腫れている。
「本当に治るのかい?」
調べているシドーの後ろから両手を腰に当てて怪しむ様に見る。
フ~ヤバい!後ろからプレッシャーが…ご、ゴクリ…明らかに見た感じ捻挫だけど…大丈夫だよね?信じていいんだよね?俺の手技療法!
シドーは《リフレッシュ》を唱えて両手を足首を包むように軽く押し当てる。さらに《ヒールハンド》も唱える。
〈リフレッシュにより精神の安定を確認〉
〈軽度の筋線維損傷〉
〈ヒールハンドにより筋線維の治癒を早めます…………治癒完了〉
……な、治っちゃったよ…マジか…
明らかに腫れていた足首が何も無かったようになくなっていた。
「少し動かしますね。痛みはありますか?」
「あっ、ちょっとやめ…えっ?ウソ?痛くない!」
足首を軽く回してつま先をあげたり伸ばしたりして確認するがなんともない状態にポカンとする女性。
「あら!?本当に痛みはないのかい?こりゃたいしたもんだね~」
「はい。ベルネールさん!これなら仕事に支障はありません。」
イスから立ち上がり地面を踏んだり跳ねたりして笑顔に話す女性とその姿に驚くベルネールと呼ばれた女性。
「ありがとうね、夜から働き手なしだといろいろ困ってたところさね。若いのにしっかりしてるね~あたしはベルネール。ギルドの隣に大衆酒場やってるもんさ。」
「シドーと言います。疲れた時とかはご来店お待ちしてます。」
しまった…また営業トークが…
「若いのに商売人だね~ほらお代置いとくよ。給与から引いとくから頑張りなキアリ。」
「はい!これなら大丈夫です。ありがとうございました!」
机にお金を置き、元気よく酒場に歩いて行った。
「あ~緊張した…でも稼げてる!」
シドーはイスに座り軽く手を握った自身の手を見て満足感に浸ったのであった。
最後までお読みいただきましてありがとうございました~。
頑張って投稿していきます。




