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片角の獣人族

ラスコの村から出たシドーは地図を片手に歩いていた。


「確か父さんはこのまま真っ直ぐに行くと町が見えるって言ってたな…」


地図から目を離し真っ直ぐに顔を向けると…山が見える。

ラスコの村は山々に囲まれた平地…盆地にある村である為、山を越えなければならない。


「越えるんか…10歳の俺にはキツいんだが…本当に町まで着けるのか?」


シドーは不安な気分でテクテクと歩いて行った。


最初は村以外の場所で新鮮な気持ちになったが徐々に急勾配になりつつ道が坂に変わるとハァハァと息が漏れて疲れが出てくる。


「ア~…辛い。ハンク兄さんがいた時は一緒に運動してたが…体力の差が…一休みするか…」


辺りをキョロキョロと見てちょうど座りやすそうな岩を見つけて腰を下ろした。

シドー用に作って貰ったリュックから水の入ったビンを取り出し喉を潤す。


「ふぅ、生き返る~!随分登ったな…微かに村が見えるけど…」


シドーはリュックからステラお手製の木の実パンをかぶりつく。


「うん、旨い。」


食べながら照らす日を見て確認する。


「ちょうど真上にあるから昼ぐらいだな。早めに頑張るか…ん?」


後ろの木々からガサゴソと聞こえる。


まさか…魔物か?確か父さんから魔物が逃げていく〈臭い玉〉があったはず!…ウッ、くさ!


シドーはリュックから度々臭っていた袋を取り出すと中にはゴルフボールより小さめの黒い玉が3つほど入っていたが袋の口を開けると異様な臭いが立ち込める。


「ひでぇ臭い…魔物じゃなくても逃げたくなるが…我慢…」


シドーは音がした方にゆっくり近づき、すぐに投げれる様に臭い玉の入れた袋を持った。


そこには前のめり倒れた人がいる!


「だ、大丈夫か!…なっ?角?」


そこに倒れた人の頭には牛に似た角があり、もう片方はへし折られたかの様に失くなっているがその姿はボロボロであちらこちらに切り傷や疲れが酷く目立つ。


「待ってろ!すぐに治療するからな。」


「ハッ…ハッ…ウッ、わ…私に構うな!ニンゲン!!」


動くこそしてないがその場から威圧するかの様に怒気を含み言い放つ。


かなり気が立ってるな。あれじゃ暴れるかもな…よし!ならば試すか


シドーはリフレッシュを発動させて背中をゆっくり(さす)った。


「触るな!ニンゲ…ン…あっ…ふぅ……何をした…?」


「落ち着け…治療するだけだ。」


よし、落ち着いてきたな。確かリュックに父さんが入れてくれた治療薬があったな


シドーは切り傷がひどい所から治療薬を浸し塗っていく。シューと音が聞こえるが傷口が塞がっていく。


「粗方治療は済んだな。ほら、少ししかないけど水だ。」


シドーは近くの気に持たれかける様に補助をした…髪は赤く女性らしいが肌は人と変わらない。しかしはっきりした事がある…


「ング…フッ…ニンゲン…何で…()()助ける?」


獣人(じゅうじん)か。村長に人とは違う人に似た種族がいるって聞いたことあるな。


「俺は人だろうが獣人だろうが関係ない。助けたいと思ったから助けた。」


シドーは持たれかけるそばにステラお手製の木の実パンを置いた。


「少し休めば動けるだろ。うちの母さん特製のパンだ。良ければ食べてくれ」


「ま…待て!そん…な(ほどこ)し…」


「いいから食べてくれ。じゃ、俺は行くからな。」


シドーは立ち上がり行こうとすると小さくだが何か言った気がしたが…日が沈む前に町に着きたいのでその場を後にした。


スタスタと歩きながらさっきの獣人の事を考えていた。


「しかし…あんな子いるんだな。」


威圧する目は凛としていて警戒していたが落ち着いた時の顔もどこか爽やかな気持ちにさせる。

シドーは疲れている事を忘れてウキウキしながら町に向かった。


山の登りを終わり、(くだ)って行くと次第に町と思われる姿が見えてきた。


「やっ…と見えた…はぁ~しんどかった。」


(10歳の山越えは鬼畜(きちく)だわ!すっかり日も落ちかけてる。急げ~!)


シドーは一時の疲れを忘れて早々と町に走った。

ラスコ村では入り口は木で作ってはいたが町だとレンガブロックを綺麗に積み重ねて建てた様に立派な石壁がぐるりと町を(おお)っている。

次第に門が見えてくると近くに門番も立っており、門番もシドーに気付き話しかけてくる。


「おいおい、ちょっと止まれ。…お前1人か?」


「はい。訳あってラスコから旅してます。町には入れますか?」


「ラスコの村ってこたぁあの山からこっちに来たのか?大した坊主だな。通る前にカバンの中身を改める」


シドーはリュックを開き門番に確認させた。大して入ってはいないがさすがの臭い玉の袋には門番も苦い顔になる。


「…よし、危険な物はないな。町に入っていいぞ。」


シドーは町に入ろうとすると、

「おっと、忘れてたぜ。ようこそ〈バルザラ〉に!」


シドーは門番に会釈(えしゃく)して進んでいった。


バルザラか~いろいろ見て回りたいがまずは泊まる場所が先だな。武器屋に…雑貨屋…あった!宿屋。

木の看板にデカデカと「ヤドヤ」と書かれている…実に分かりやすい。


未だにこの世界が何なのか、わかんねぇよな…読み書きはカタカナだし。まずは寝床の確保からだ。


シドーは着ているローブの裏側に落ちないように縫い付けてる袋からいろんな形をした金属、()()を見た。


この世界の通貨はさほど難しくはない。

三角、四角、丸の3つが()()()な通貨だ。


三角が一番低い通貨、1カク。

四角が三角の10枚分の価値、1ワク。

丸が四角の50枚分の価値、1マル。


ちなみにその上にまだ2つ程通貨があるが王族や金持ちぐらいが使うらしく現物(げんぶつ)(おが)めてないが…見てみたいし手に入れたい~!


シドーは宿屋のドアノブに手をかけて入った。

ドアの上の部分に鈴がついており、チリーンと鳴り響く。


「あいよ!いらっしゃい…って子供かい?」


宿屋から実に恰幅(かっぷく)…ふくよかな女性が現れた。


「訳あって旅してます。泊まるのにはいくらですか?」


女性は少し驚いた表情になるがニコリと笑みを浮かべて接客する。


「そうだね。一晩なら3カク、連泊なら5日で1ワクだね。連泊で朝晩の食事したいんなら2ワクでサービスしてあげるよ?」


シドーの(ふところ)から2ワクを取り出して女性に渡した。


「連泊食事ありで。」


「あいよ。しかしよく来たね!あたしはダナって言うからよろしくね!」


「シドーです。お世話になります。」


こうしてシドーは部屋に入るなり、ベッドにダイブしてその一晩はぐっすりと眠りについたのであった。











お読みいただきありがとうございました。

また頑張って投稿します~。

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