旅立つ背中を
儀式が終わり家に着いたシドーとラーテン。
「シドー。父さんはすぐに村長の家に向かう…いろいろあったがまずは身体を休めてろ。いいな?」
「でも父さん…教会守の「大丈夫だ!」
ラーテンはシドーの会話を切って家を出た。
その行動にステラも心配そうにシドーに尋ねた。
「どうしたの?あんなに慌てた顔見たの久しぶりよ?」
シドーは教会までの事を詳しく説明した。その内容にはステラも驚きを隠せなかった。
「そんな…シドーが異端児だなんて…」
「母さん、異端児って何なんだ?」
「異端って言うのは村の古い言葉で災いや災厄をもたらす言葉。異端児はその災いの元凶とも古くから言い伝えられてるのよ…」
マジかよ!?じゃ自分はその聴いたことない掟でこの村から出ていかなきゃならないのか?
「あぁ…きっと私がお祝いにアップンパイを作ってちょこっと味見し過ぎた罰なんだわ…」
「いやいや母さん、確かに机の上に置かれてる丸く仕上がったアップンパイの端っこが一部無くなってるけど!それとは関係ないから!」
ちなみにアップンとはりんごに似た味だが見た目は木の実を型どったゼリーの様にプルプルした果物…始めに見た時は何これって思ったよ。
「大丈夫だよ母さん。味見し過ぎたくらいで村を出ていかなきゃならないなら村なんて存在してないから」
「本当に?ならもうちょっと食べても平気よね?少し自信作なのよ~」
「母さん、それ俺のお祝いに作ってくれたんだよね?まだ一切れも食べてないんだけど?」
シドーは何故だか異端児と言うレッテルを貼られて疑問に思いながらも自信作のアップンパイを食べ進めた。
しばらく家で休んでいると玄関の扉が開き、ラーテンが帰って来たが…どうやら客人もいるようだ。
教会守のオットとお口にたっぷりにふわふわのクリーム塗ったようなヒゲがある村長の姿があった。
ステラはラーテン達をお出迎えしたがラーテンの顔色見るなり不安な表情を浮かべた。
「あなたお帰り。それに教会守のオットさんに村長さん…いらっしゃい」
「ア~…ステラよ。すまないが…シドーを呼んでくれないかの?」
村長がステラに言うと同時にシドーが声をかける。
「村長、俺はここにいます…」
「すまんが…両腕を見せてくれんか?後は両足にも魔紋があるかも知れん。そうだな?教会守のオットよ。」
「そうだ。儀式を終えた者には必ず両手もしくは両足のどこかに魔紋が刻まれている。」
シドーは不安な表情の両親を見ながらも衣服を両手足を見えるようにまくりあげた。
教会守のオットと村長はシドーの周りを回りながら確認していく。確認終わると村長が悩ましい表情になり語る。
「ア~…シドーよ。確認したが魔紋は見つからん…シドー坊よ…村には魔紋がない子は異端児と見なし…村から出て暮らして行かす…掟があるんじゃ…ワシは特別お前が悪さするとかは考えておらん。しかし異端児を村に住まわせて村が無くなった話もあるのじゃ…」
村長は本来いつも子供にも優しく、大人達からも信頼が厚い人がここまで悩ましく話すのは見たことなかった。
「15の歳に成れば成人として…悩ましく送り出せるが…まだ子供のお前には…酷な事をさせてしまう…シドー坊よ。恨む気持ちがあるならば村人や教会守ではなくワシだけを恨んでくれ…」
「村長…俺は村の掟とか初めて知りました。この先ここにいて家族が悲しむと思うと複雑な気持ちです。俺が村を出て暮らして行く方事で家族が生きてくれるなら…安心できます。それに俺は村長を尊敬してますから恨むなんてありませんよ。」
シドーは村長に自分の考えを話し答えた。
村長は軽く頷くとラーテンとステラの方を見て話す。
「シドー坊は成長したのぉ。今日くらいは存分に語らいなさい。それに村に入らなければシドー坊に会ってもよかろう。そうであろう?オットよ?」
「そうだな。別段家族が町で会うならそれでいい。それに兄や姉も王都にいるのだから王都で暮らせばその2人から通じてシドーの暮らしも耳に入るだろ」
確かに兄さんや姉さんがいる王都で住むか…何だか悪くないな。
村長と教会守のオットは帰って行き、静かになった空間が広がった。
「…ステラ。夕食の準備を頼めるか?」
「そうね…少し買い出しに行って来るわ…」
ステラはリューンを抱いて買い出しに出掛けた。
「…シドー。無力な父ですまなかった…」
ラーテンは自分を呪うかのように顔を歪めて目を閉じながらシドーの肩に手を置いて話す。
「父さん…大丈夫だよ。俺は父さんや母さんから大事な事を学んだ気がするよ。それに王都に着けば兄さんや姉さんもいるから…そんな顔しないでくれ。」
その言葉を聞いてラーテンはシドーから顔を背け、
「そう…だな。よし!うちは雑貨屋だから旅立つ準備をするなど朝飯前よ!…スン…ハッハッハッ。」
ラーテンは笑いながら店の方に歩いて行ったがシドーは鼻をすすって気丈に振る舞う姿見て誇らしく思い、前世ではなかった家族の温かさを感じるシドーであった。
ラーテンにいろいろ道具を見繕ってもらい、ステラには一段と豪勢な夕食を堪能した。シドーは自分のベッドに横になり考えた。
明日には村を出ていくんだな…あの宝石で俺って…才能使えるんだよな?魔紋が無いと…無理なのか?
考えていると次第に睡魔に襲われて目を閉じて身を任せた。
ベッドで眠っているのにどこかに流されているかの様に横になっている目を閉じるシドーがいる。
夢…なのか?何だか不思議な気分だ…
すると耳に言葉が聴こえてきた。
〈あたしゃからの贈りもんさ。上手に使いな〉
シドーはその言葉に懐かしさを感じて目を開けると…いつも通りのベッドで寝ていた自分がいた。
別に変わった事がない…ん?頭の中から…聴こえてくる…〈リフレッシュ〉
シドーが唱えると両手を全体に白く温かなオーラが現れた。さすがのシドーも呆然と白く輝く手を眺めているとさらに頭の中に聴こえてくる。
〈リフレッシュ〉
相手に触れて唱える事で効果を発動する手技療法。疲れ、不安、怒り、虚無などの様々な精神的負荷を取り除く。熟練すると相手にも伝授可能になる。
…手技療法?何だそれ?これが俺の才能?
両手を包んでいた白いオーラはスゥーと消えていった。シドーは冷静に考えていると夜に聴いた声を思い出す。
「上手に使えか…神様からの贈り物…ね。」
嬉しくもあるがシドーはため息を出す。
「しかし…もうちょっとカッコいい才能が開花しなかったのかな?ハンク兄さん見たく騎士の才能とかメイラ姉さん見たく炎や氷が出せるの見ちゃうとな…」
何だか隣の芝が青く見えるシドーであった。
そして日も少し顔を出して村から出るにはいい頃合いになった。
朝も早くまだ村はまだ静かだ。
ラーテンには早朝に出発すれば町には余裕を持って着ける事も大事だが…外では魔物がいるらしく早朝からならあまり魔物の活動しない時間帯らしい…本当かな?
村の入り口までラーテンとリューンを抱いてるステラが見送りに来てくれた。
「シドー。お前なら立派に王都でも暮らしていける力はある…何せ俺の息子だからな!」
「そうね。身体は大事にしなさい。後は…恋でもしちゃいなさい。」
「おっ?そうだな!恋はいいぞ~!まぁ、俺はステラにメロメロだがな。」
「フフフ、あなたったら」
旅立つ息子に何の話をしてるんだか…うちの家族はこれが通常運転なのだから…はぁ。
スヤスヤと眠る弟よ。お前までボケてはいけないぞ。俺以外ツッコむ家族はいないだからな!フリじゃないぞ!
そんなシドーの心からの言葉を贈るがすやすや寝ているリューンには知らぬ頼み…
希望を託して村を後にするのであった。
読んでいただきありがとうございました。
次回もまた書きますのでよろしくお願いいたします。




