セキュリティを解除せよ
「この世界の人間は何処に行ったんだ?」
「あのね、舞みたいに生き物や動物にされたり、ジャックナイフに拐われていったよ……」
「そうか……ところで、花音っていう女の子を見なかったか?」
「知ってるも何も従姉だよ。舞はたまたま泊まりに来ていた所を、ジャックナイフに熱帯魚にされたんだ。花音ちゃんとは、別行動を取っていたからわかんないよ……」
舞は、家族や花音のことを思うと不安になり、泣き崩れてしまった。
蓮は舞の肩にそっと手をあてた。
「お兄ちゃん……」
そう言うと舞は、潤んだ瞳を滲ませ、蓮の胸に飛び込んだ。
――う~ん。こんな時になんだが、ノーブラじゃないか? や、柔らかい――
「お兄ちゃん、今変なこと考えたでしょ?」
「いや、俺は何も……」
「ウソ。硬くなってる」
――し、しまった。抱き締めることに夢中で、疎かになっていた。どう弁解したらいいんだ――
「でも、嬉しい。舞で硬くなったってことでしょ? それって、舞にも魅力があるってことだよね?」
「ま、まぁ……」
しどろもどろになりながら、蓮はそう答えた。
「今更だけど、お兄ちゃんて何者? 蓮君と似てるけど、雰囲気は違うよね?」
舞は、こっちの蓮と違うことを見事見破り、蓮が何者なのかを質問してきた。
隠す理由もない蓮は、花音と出会った時のことから、今までの経緯を洗いざらい話した。
「……わかったよ。舞も戦うわ。どのみちじっとしててもジャックナイフにやられるなら、私も戦いたい。お兄ちゃんの妄想があれば、大丈夫よ」
こうして、舞も一緒に戦うことになった。
しかし、花音は何処へ行ったのだろう?
検討も付かない蓮は、舞に心当たりがないか尋ねた。
「ん~、お料理教室に、ジャックナイフの指令部が出来たって話は聞いたことがあるよ」
「お料理教室だな? とにかく行ってみよう!」
舞の提案で、蓮達はお料理教室へと向かった。
不気味に静まり返る街並み。
誰も居ない交差点を、ただ信号が時を刻み込む。
――花音、無事でいてくれ――
蓮は何度も心の中で、花音の無事を祈った。
「お兄ちゃん、ここよ」
そこは、想像していたものとは違う、立派な佇まいのビルだった。
「くそ、セキュリティが厳しいかもな。舞やれるか?」
「お兄ちゃんの妄想次第ね……」
「そっか、任せとけ!」
厳重に敷かれたオートロックの前で、瞑想をするかの如く蓮は妄想を始めた。
――ん~、舞の最初のコスプレだもんな~。何がいいかなぁ、よし! アレにしよう――
蓮の妄想が終わると、舞も花音と同じように光に包まれ、纏っていた制服が溶けた。
そして、蓮の妄想したサンタクロースの格好に変身した。
季節外れではあるが、『あらゆるセキュリティを解除するスペシャリストと言えば、サンタだろう』
蓮は、心の中で豪語した。
「やった~。サンタかぁ、可愛いね」
ちょっとでも、動くと傍にいる蓮にプレゼントが見え隠れするくらい短いスカート。
蓮は、動きやすさを追求したと言っていたが、実際は自分へのプレゼントが目的だったのだ。
そうこうしている間にも、プレゼントは放出された。
「もう、お兄ちゃんたら……それじゃ、セキュリティを破るね」
「大丈夫? そんなこと出来んのか?」
蓮が問うと、舞はニッコリ笑って答えた。
「任せて……」
次の瞬間、目を疑う光景が飛び込んできた。
「うおりゃゃ――っ!」
舞は、叫びながら強固な扉へ向け、踵落としを繰り出したのだ。
――えっ、強行突破なら、サンタクロースじゃなくてもよくなくね? ――
舞は純白のパンティをちらつかせながら、満足げな表情を見せる。
因みに、舞は綿素材じゃなく、絹素材派だ。
「つ、強いなぁ」
力だけなら、花音を上回るかも、知れない。
蓮は舞に先導され、お料理教室のあるフロアへと向かった。




