戦場は学校
校庭に駆け付けると、数人の生徒がジャックナイフの一員と思われる人物に襲われていた。
「やめなさいよ」
その光景を目の当たりにして、花音は叫んだ。
「ようやく、お出ましかい? こっちの世界に逃げ込むとは、考えたね」
「皆を離しなさいよ、この年増女!」
「な、気にしていることを~! このチェルロを馬鹿にするとは。コイツらが、どうなってもいいのね?」
ジャックナイフの一員と思われる人物は、黒いフードを脱ぎ捨て花音に怒りを露にした。
年は結構いってそうだが、なかなかの美人だ。
蓮は危機感もなく、『年上もいいなぁ』なんて思っていた。
「お兄様! 何、ぼうっとしてんの! 早く妄想しなさいよ!」
「……ん? わ、わかった」
蓮は、『花音、キャラ変わってるぞ』と言いたかったが、罵られるのも悪くないなと感じていた。
――えっと、妄想……妄想……閃いた! 今回はこれだ! チアガールで行こう。武器はポンポンだな。それも、とびっきりデカイやつ――
「唸れ! 俺の妄想! 行け! 可愛い妹よ!」
蓮は格好つけて、センスのない台詞を言い添えた。
花音は光に包まれ、制服が溶けていき、チアガール姿になった。
「チェルロ! 覚悟なさい。あなたとは、いずれ決着を着けたいと思っていた所よ」
「ちぃ、コイツらがどうなってもいいの?」
「構わないわ。煮るなり、焼くなり好きにすれば?」
――ひでぇ、まったくもって、ひでぇ。本当に花音か? ――
所がこれは、花音の作戦だった。
逆上したチェルロは、生徒達を解放し花音目掛けて飛び込んでくる。
チェルロは持っていた薙刀を器用に振り回し、花音に斬り掛かる。
すかさず花音は、デカいポンポンでそれを防いだ。
「甘く見ないでよ。お兄様の妄想力!」
――だから、褒めてないって……――
蓮は凹みながらも、妄想に力を入れる。
花音のたわわに揺れる胸元と、ミニスカートからこぼれるアンダースコートの太ももの食い込みを見ると、妄想にも力が入る。
「チェルロ、行くわよ! L・O・V・E……LOVE! ポンポンラッシュ!」
「こんなもの、受け止めて…………キャァァ――っ!」
チェルロは、花音のポンポンラッシュの餌食になり、遥か彼方にある校庭のバックネットまで吹き飛んだ。
「己れ――っ!」
チェルロはボロボロになった服からはみ出す、ランジェリーを気にしながら、フラフラと立ち上がった。
「もう、しぶといおばさんね」
「おば、おばさん? もう、怒ったわ。その台詞だけは、聞き捨てならないわ。大人の魅力ってものを、教えてあげるわ」
チェルロは、開き直り纏っていた服を脱ぎ捨て、ランジェリー姿になった。
「どう? 私の美貌、そして曲線美捨てたもんじゃないでしょ?」
――これは凄い。チェルロは着痩せするタイプか? ――
蓮は、余計な妄想を膨らませていると、花音に叱咤された。
「お兄様、妄想が弱まってるわ! お兄様の妄想はそんなもんじゃないでしょ?」
――そうだ。仮にも俺は、妄想のスペシャリスト。ジャックナイフの一員に、負けるような妄想じゃない。新たな武器はこれだ! デカいバトン――
何故か基本的に蓮の妄想する武器は、デカかった。
とにかく規格外のデカさに魅力を感じるが故だろう。
「サンキュー、お兄様! 必殺五月雨バトン――!」
花音の放ったバトンは、高速回転しながらチェルロをなぎ倒した。
チェルロは、ランジェリーを舞い散らせながら、息絶え煙のように消えた。
「お兄様~! 怖かったよぉ。もうダメかと思った」
花音は、いつもの花音に戻り、蓮の胸に飛び込んだ。
「花音、よくやったよ。しかし、奴ら自由に空間の狭間を作り出せるのか? だとしたら、あっちの世界に行けない俺達は、圧倒的にフリだな」
「お兄様の言う通りね。何か策を練らなくちゃ……でも、ちょっと待って。もう少しだけ、このままでいさせて……」
蓮は、戦い疲れた花音をそっと抱き締めた。




