第四十九話 おまけが主役を食う
八月二十六日の朝。
「ラメルー。かれー」
起きて早々、ミソラが俺の袖を引いた。
「ごはんにかけるやつ!」
「……覚えてたか」
「うん。ゆめにでた!」
昨日、カレーの話をしたのがよほど楽しみだったらしい。寝起きだというのに、ミソラの目はぱっちりと開いている。
負けた。
この顔を見せられては、もう先延ばしにはできない。
「分かった。今日はカレーを作ろう!」
「ほんとぉ!?」
「ああ。ただし、材料がそろえばな!」
そう言うと、ミソラは俺の袖を握ったまま、こくこくとうなずいた。
俺は市場へ向かった。
カレー粉はある。ウッコの根やクミーの種など、香りの強い素材を調合して作ったものだ。辛みだけでなく、甘く香ばしい匂いや、鼻に抜ける独特の風味もある。これを使えば、十分にカレーらしい味になるはずだ。
問題は、ライスだった。
ラーメンの麺なら何とかなる。だが、カレーライスとなれば話は別だ。麺にかけて食べるのも悪くないが、ミソラが望んでいるのは、きっとあの組み合わせなのだろう。
市場の穀物屋を覗き、棚を一つずつ確認していく。
麦に似た穀物、粒の大きな雑穀、見たことのない豆。どれも主食として食べられているらしいが、白いライスの代わりになるものは見当たらない。
諦めかけたとき、棚の隅に積まれた袋が目に入った。
中には白くて丸い粒が山になっている。
『ふくら米(★★)ライス向き』
「これだ」
「ああ、それかい。炊くとべちゃっとして不評なんだよ」
店主は袋を持ち上げ、困ったように肩をすくめた。
「水を吸いすぎるのか、粒が潰れちまってね。味は悪くないんだが、食感がいまひとつで売れないんだ。安くしとくよ」
なるほど。米そのものに問題があるわけではなく、炊き方が合っていないのかもしれない。
「十袋もらおう」
「じゅ、十袋!?」
「売れ残ってるんだろ?」
「そりゃそうだが……本当に食べるのかい?」
「もちろん」
俺は即決で十袋を買った。
これでカレーライスへの道が開けた。
店に戻ると、さっそく調理に取りかかる。
まずは米だ。
ふくら米をボウルに移し、何度か水を替えながら優しく研ぐ。
表面の余分な粉を落としたら、しばらく水に浸して吸水させる。
この米は水を吸いやすいらしい。いつもの感覚で水を入れれば、店主の言うとおりべちゃべちゃになるだろう。
水加減は控えめに。
あとは火加減を見ながら、じっくり炊き上げる。
鍋に蓋をして、俺は次の作業に移った。
カレーの具材は、ウルフ肉と芋、それから市場で手に入れたニジンという野菜と、マルネギリという野菜だ。
ニジンは皮をむいて乱切りにする。煮込んでも形が残るよう、少し大きめに切っておいた。
マルネギリはタマネギによく似た野菜だ。外側の皮をむいて薄切りにする。
……タマネギに似ているなら、炒めれば甘みが出るかもしれない。
ラーメンのスープにも使えそうだな。肉や骨の旨味だけでなく、野菜の甘みを加えれば、スープにまた違った深みを出せるはずだ。今度、スープ作りにも試してみよう。
そんなことを考えながら、マルネギリを半分に分けた。片方はカレーに入れ、もう片方はじっくり炒めて甘みを引き出すために使う。
ウルフ肉は筋を確かめながら食べやすい大きさに切り、軽く塩を振っておく。
まずは鍋に油を引き、マルネギリを炒めた。
最初は白かった薄切りのマルネギリが、火を通すにつれて透き通っていく。焦がさないよう木べらで混ぜながら、じっくりと炒め続けた。
やがて水分が抜け、端の方から薄く色づき始める。
マルネギリ特有の香りが和らぎ、代わりに甘く香ばしい匂いが立ち上った。
よし。ここで一度、マルネギリを取り出しておく。
続いて鍋に少量の油を足し、ウルフ肉を投入した。
じゅうっ、と威勢のいい音が響く。
肉の表面に焼き色がつき、脂の甘い香りが立ち上る。肉を裏返し、反対側にも焼き色をつけた。
そこへニジンと芋を加える。
肉から出た旨味を吸わせるように炒め、表面に油が回ったところで、残しておいたマルネギリも戻した。
鍋底にこびりつきかけた肉の旨味を、野菜の水分でこそげ取る。
ここでしっかり炒めておけば、煮込んだときに味の厚みが違ってくる。
具材に火が通り始めたところで、水を注いだ。
ぐつぐつと煮立つ鍋から、肉と野菜の香りが立ち上る。
浮いてきた灰汁を丁寧にすくい、火を弱める。ニジンが柔らかくなり、肉の旨味が煮汁に溶け出すまで、じっくりと煮込んでいく。
……いや、まだ終わりじゃない。
カレーのとろみを出すため、別の小鍋で小麦粉を炒る。
焦がさないように木べらで混ぜ続けると、白かった粉が少しずつ色づいてきた。香ばしい匂いが立ち始めたところで火を止め、少量のバターを加えて練り合わせる。
これをそのまま鍋に入れると、ダマになりやすい。
煮汁を少しずつ加え、なめらかなペースト状にしてから本鍋へ戻す。
最後にカレー粉を溶かし入れた。
途端に、鍋から立ち上る香りが変わった。
ウッコの根の力強い香り。クミーの種の甘くスパイシーな風味。それらが肉の旨味とマルネギリの甘み、根菜の素朴な味わいと混ざり合い、食欲を刺激する濃厚な匂いへと変化していく。
鍋底から焦げつかないようにかき混ぜながら、さらに弱火で煮込む。
さらりとしていた煮汁に少しずつとろみがつき、具材の表面にカレーが絡むようになった。
味を確かめる。
……よし。
肉の旨味とニジンの甘み。マルネギリが溶け込んだ煮汁には、じんわりとしたコクがある。そこへスパイスの香りが後から追いかけてくる。
まだ改良の余地はあるが、初めて作る異世界のカレーとしては上出来だろう。
そのとき、炊飯鍋から小さな音がした。
水分が飛び、米が炊き上がった合図だ。
火を止めて、しばらく蒸らす。
蓋を開けるのは、まだ我慢だ。
蒸らし終えたところで、ようやく蓋を取った。
ふわりと白い湯気が立ち上る。
中には、粒の形を保った白いライスが並んでいた。しゃもじでそっとほぐしてみると、潰れることなく、一粒一粒がふっくらと仕上がっている。
「おお……」
思わず声が漏れた。
水加減は正解だったらしい。
ふくら米は、炊き方さえ間違えなければ、ふっくらと甘く炊き上がる。これならカレーとの相性も期待できそうだ。
「ラメルー、まだ?」
振り返ると、ミソラが鍋の周りをぐるぐる回っていた。
「もう少しだ。そんなに回っても、カレーは早くならないぞ」
「でも、いいにおい!」
ミソラは鍋を覗き込もうとして、シオにそっと肩を押さえられた。
「ミソラちゃん、熱いから気をつけてね」
「うん!」
返事だけはいい。
俺は小皿にライスを盛り、その上から熱々のカレーをかけた。
白いライスに、茶色がかったカレーがゆっくりと広がる。肉とニジン、芋がごろりと顔を出し、マルネギリの甘みを含んだスパイスの香りがふわりと鼻をくすぐった。
ミニサイズのカレーライス。
まずは味見も兼ねて、これくらいからだ。
「できた。ただし言っておく」
俺は全員の前で指を立てた。
「これはあくまでラーメンのおまけだ。主役はラーメン。いいな」
「「「はーい!!!」」」
返事がそろった。
……本当に分かっているのだろうか。
まあいい。まずは食べてもらおう。
ミソラは両手でスプーンを握り、カレーライスをじっと見つめた。
白いライスとカレーを一緒にすくう。
そして、ゆっくりと口に運んだ。
「…………」
動きが止まる。
スプーンを持ったまま、ミソラは目を丸くしていた。
「……おいしい!!!」
ぽろっと涙がこぼれた。
ミソラは慌てて袖で拭う。
「ちがうの!かなしいんじゃないの!おいしすぎて……」
「分かった分かった」
俺は苦笑しながら、ミソラの頭をそっと撫でた。
「ゆっくり食べろよ。まだあるからな」
「……うん!」
ミソラは今度こそ笑顔になり、もう一口、カレーライスを口へ運んだ。
その小さな口が、幸せそうに動いている。
……どうやら、夢に出てくるほど楽しみにしていたカレーは、期待を裏切らずに済んだらしい。
その瞬間。
神界の神殿では、女神ファリーナが目を見開いていた。
「こ、これは……!」
金色の髪を揺らし、麦穂の冠を戴いた女神様は口元を押さえて震えている。
「ライスの甘みと、香辛料の刺激……そこにお肉の旨味と野菜の甘みが重なって……!」
ミソラを通じて伝わってくる味わいに、ファリーナの頬が緩んだ。
「なんということでしょう……!ラーメンとはまったく違う方向から、これほどまでに食欲を刺激してくるなんて……!」
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「こ、これは神の感動ですわ!決して食い意地などではありませんのよっ!」
誰に言い訳しているのかは分からない。
ファリーナは両手を胸の前で組み、天を仰いだ。
「豊穣と食文化を司る女神として、これほど素晴らしい料理に出会えたことを、心から祝福いたしますわ……!」
しばしの沈黙。
「……ところで」
女神は、そっとミソラの感覚に意識を集中させた。
「おかわりは、ありますの?」
慈愛に満ちた女神の祈りは、どうやらまだ終わりそうになかった。
翌日の昼、店の黒板に新しい札を掛けた。
『ミニカレーライス鉄貨一枚』
昨日、ミソラのために作ったカレーライス。試しに少しだけ出してみようと思ったのが始まりだった。
あくまでラーメンのおまけだ。量は小皿一杯分。値段も手頃にして、ラーメンを食べた客が気軽に追加できるようにする。
これなら問題ない。
……そう思っていた。
開店してしばらくすると、店の前に見慣れた顔が現れた。
「おう、ラメル!このカレーライスってのは今食えるのか?」
冒険者のダルクだ。後ろには、いつもの仲間たちもいる。
「ああ。ミニサイズなら用意してあるぞ。ただし、あくまでラーメンのおまけだからな」
「分かってる分かってる!」
ダルクは勢いよく店内に入ってきた。
その後ろから、仲間たちも続く。
「ミニカレーライスってやつをくれ!」
「ミニカレー十個だ!」
「いや、俺は二十個いけるぞ!」
「ラーメンはいらん!ミニカレーだけくれ!」
「ちょっと待ってください!」
俺は思わず叫んだ。
「ミニカレーはラーメンのおまけです!カレーだけの注文は受けてません!」
「そんなこと言ったってよ、兄ちゃん」
ダルクが鼻息荒く言った。
「カレーがうますぎる。ライスにかけるだけで反則だ」
「反則じゃなくて!おまけです!」
「いや、これは反則だろ。肉も野菜も入ってて、あの香辛料の匂いがたまらねえ。しかも、ライスと一緒に食うと止まらねえんだよ!」
「分かりましたから、まずは席に着いてください!」
俺がどうにか客を席へ誘導している間にも、次々と注文が飛んでくる。
「こっちはミニカレー五個!」
「俺たちにも頼む!」
「おい、先に注文したのはこっちだぞ!」
「順番にお願いします!カレーは逃げませんから!」
厨房に戻ると、シオが困ったような顔で鍋を覗き込んでいた。
「ラメルさん、カレーが足りなくなりそうです……」
「もうか!?」
「はい。ライスも、さっき炊いた分がほとんどなくなってます」
鍋の中には、カレーがわずかに残っているだけだった。
俺は額を押さえた。
昨日はミソラが喜んでくれればそれでよかった。
だから、まさか一晩でここまで人気が出るとは思っていなかったのだ。
「仕方ない。残りの材料で追加を作る。ユウ、米の準備を頼む!」
「分かりました!」
「ショーは注文の確認を!カレーだけの注文は受けないように!」
「はい!」
厨房は一気に慌ただしくなった。
肉を切り、野菜を刻み、鍋に火をかける。カレー粉を加えた瞬間、店内にスパイスの香りが広がった。
それを嗅ぎつけた客たちが、いっせいに厨房の方を振り向く。
「おおっ、来た来た!」
「その匂いだよ!」
「兄ちゃん、こっちにも追加だ!」
「だからラーメンを頼んでください!」
俺の叫びは、客たちの歓声にかき消された。
結局、昼の営業が終わる頃には、カレーはきれいになくなっていた。
ラーメンもそれなりに出た。だが、今日の客たちの目的が何だったのかは、売上を見れば一目瞭然だった。
その日の売上は過去最高。
そして、そのほとんどがカレーだった。
俺は帳簿を見つめたまま、しばらく動けなかった。
売上が伸びたのは嬉しい。食べ物を気に入ってもらえたのも嬉しい。
でも、ここはラーメン屋だ。
ラーメンを食べてもらうために始めた店なのに、どうしてカレーが主役になっているんだ。
夜。
閉店後の厨房で、俺は頭を抱えていた。
「ラーメン屋なのに……」
テーブルの上には、今日の売上を記録した帳簿が広げられている。
カレーの材料費を差し引いても、利益は十分に出ている。むしろ、普段よりずっと儲かっていた。
経営だけを考えるなら、文句のつけようがない。
それでも、俺の心は晴れなかった。
「でもラメルさん、お客さんは喜んでましたよ」
シオが慰めるように言った。
「喜んでもらえるのは嬉しい。でも、本命が負けてるんだよ」
「そんなに気にすることですか?ラーメンもちゃんと売れていましたし」
「いや、これは放っておけない。カレーが目当てで来る客ばかりになったら、ラーメン屋じゃなくてカレー屋になってしまう」
「カレーもおいしいんだから、仕方ないんじゃない?」
ショーが首をかしげた。
「いや、仕方なくないからな」
俺は即座に否定した。
そもそも、カレーライスはラーメンの合間に楽しんでもらうためのものだ。主役を奪うつもりなんて、これっぽっちもない。
……ないはずだった。
「じゃあ、決まりを作ればいいんじゃないですか」
帳簿を覗き込んでいたユウが、ぽつりと言った。
「決まり?」
「ラーメンを頼んだ人だけ、ミニカレーを付けられるって。単品では出さないんです」
「…………」
それだ。
俺は思わず顔を上げた。
ラーメンを注文した客だけが、ミニカレーを追加できる。これならカレー目当ての客にもラーメンを食べてもらえるし、店の看板も守れる。
「ユウ、お前、天才か?」
「えっ?そ、そんなことないですよ」
「いや、いい案だ。明日からそうしよう!」
俺は勢いよく立ち上がった。
これで解決だ。
……たぶん。
翌日。
俺は黒板の札を書き換えた。
『ミニカレーはラーメンご注文の方のみ』
これでよし。
カレーだけを注文する客はいなくなる。ラーメンを食べてもらったうえで、気に入った人にカレーも楽しんでもらう。
完璧な作戦だ。
そう思っていたのだが。
「なら仕方ねえ。ラーメンも頼むか」
店に入ってきたダルクが、黒板を見てあっさりと言った。
「ウルフラーメンとミニカレーだ!」
「俺も同じ!」
「俺はショーユウラーメンとミニカレー!」
「みそカレー牛乳ラーメンとミニカレー!カレー尽くしだ!」
……ん?
何かがおかしい。
カレーだけを注文する客はいなくなった。そこまでは狙いどおりだ。
しかし、客たちは誰一人としてカレーを諦めていない。
むしろ、ラーメンを注文したうえで、当然のようにミニカレーを追加している。
「ラメルさん!注文がどんどん入ってます!」
「こっちもです!ライスを追加で炊かないと足りません!」
「厨房、急いでください!」
シオとショーの声が飛び交い、ユウも大急ぎで米の準備を始めた。
俺は黒板を見つめた。
ミニカレーはラーメンのおまけ。
ラーメンを注文した人だけが頼める。
そのルールは守られている。
守られているのだが……。
「ラーメンの注文が、これまでで最高に増えた……」
結果だけを見れば、大成功だった。
カレー目当ての客がラーメンも注文するようになり、店の売上はさらに伸びている。
経営的には大正解。
それでも、なんだか釈然としない。
「……結果オーライか?」
俺がつぶやくと、シオがにっこりと笑った。
「結果オーライです」
「……そうだな」
俺はため息をつきながら、鍋の火加減を確認した。
ラーメンが主役で、カレーはおまけ。
そのはずなのに、今日も厨房ではカレーの追加を求める声が絶えない。
……まあ、ラーメンも一緒に食べてもらえるなら、ひとまずよしとするか。
その夜。
店の隅で、ミソラが一生懸命に紙へ向かっていた。
「ミソラちゃん、何してるの?」
「てがみ。ミネおばあちゃんに」
約束を覚えていたらしい。
「字は書けるのか?」
「かけない。だからシオおねえちゃん、おしえて」
「いいよ。ひとつずつね」
シオが隣に座り、紙の上に手本の文字を書いていく。
ショーとユウも興味津々といった様子で覗き込んだ。
ミソラは舌をちょこんと出しながら、教わった文字を一つずつ真似していく。線が曲がったり、文字が大きくなったりしながらも、どうにか一文字ずつ形になっていった。
やがて、紙の上に短い言葉が並んだ。
『ミネおばあちゃんへ』
『みそらは げんきです』
『かれーを たべました』
『ごはんに かけます』
『おいしいです』
『また いきます』
最後に、銀耳の食卓全員の似顔絵と麦の穂の絵を添えた。
「できた!」
ミソラが顔を輝かせて、手紙を両手で持ち上げる。
「上手だよ」
シオが優しく頭を撫でた。
「麦の穂なんだね」
ショーが絵を覗き込むと、ミソラはこくりとうなずいた。
「うん。おまもり」
そう答えると、ミソラは手紙を胸の前でぎゅっと抱きしめた。
……あの麦の穂は、ミソラにとって何なんだろう。
ミネおばあちゃんとの思い出なのか。
それとも、もっと別の意味があるのか。
俺の外套にも、まだ金色の穂が挿してある。
いつか、その意味を聞ける日が来るのだろうか。
今はまだ、無理に尋ねるつもりはなかった。
ただ、この小さな手紙が無事に山まで届くこと。
そして、ミネさんが読んで、ミソラの元気な姿を思い浮かべてくれることを願った。
夏の終わり。
店の窓から、ひんやりとした風が吹き込んできた。
風はミソラの手紙をそっと揺らし、俺の外套に挿した金色の麦の穂をかすかに震わせる。
遠い山の方角では、星がひとつ瞬いていた。
まだ夏の盛りは過ぎていない。
それでも、その風にはほんの少しだけ、季節の移ろいを感じさせる涼しさがあった。
まるで、豊穣の秋がもうすぐそこまで来ていると告げるように。
風はやがて静まり、麦の穂だけがいつまでも優しく揺れていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
今回は、ミソラの願いから始まったカレーライスが、まさかの大人気メニューに!
ラーメンのおまけのはずが、気づけばカレーが主役に……。ラメルのこだわりも、冒険者たちの食欲には勝てなかったようです。
そして、夢に見るほど楽しみにしていたカレーを食べたミソラ。
おいしさのあまり涙を流す姿に、ラメルも作った甲斐があったことでしょう。
一方、神界のファリーナ様も大感激!
豊穣と食文化の女神として感動しているのか、それとも単におかわりが欲しいだけなのか……。真相は女神のみぞ知る、ですね。
最後はミソラがミネおばあちゃんへ宛てた手紙。
一生懸命に書いた文字と、添えられた麦の穂。ミソラにとって、それは大切なお守りのようです。
そして、夏の終わりに吹く涼しい風。
豊穣の秋は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
次回も、ラメルたちの食いしん坊な異世界生活をお楽しみに!
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