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前世で食べ損ねたラーメンを求めて ~追放された俺は『ラーメンWalker』で異世界を無双する~  作者: マトンさん


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第二十一話 星四つと最強の敵

 翌日。


 昨夜のオークのまずさでテンションガタ落ちだったが、気を取り直して俺たちはさらに森の奥へ進んだ。

 その時だった。

 ラーメンマップにある印が浮かび上がった。


『★★★★』


「……よ、四つ?」

 目を疑った。

 今まで最高でもウルフの★三つ。

 それを超える星が存在する。


「どこだ!?どこにいる……?」

 俺はマップの示す方向へ目を凝らした。

 視線の先。

 木々の間をのっしのっしと歩く巨大な影があった。

 黒い毛並み。

 顎から突き出た湾曲した二本の牙。

 小さな山のような巨体。

 昨日のオークとは比べものにならないほどの威圧感だ。


「あ…あれはタスクボアです!」

 ショーが青ざめた。

「鉄札の冒険者パーティでも手こずる強敵です!」

「だ、大丈夫なんですかラメルさん!?」


 三人が剣と盾を構えた。

 けれど俺は一歩前に出た。


『ラーメン適性:★★★★ タスクボア(骨・肉・脂)』


「待て」

 三人が振り向く。

「これは俺の出番だ」

「えっ?」

「ラーメン適性のある相手は俺の領域だ」

 俺はにやりと笑った。


 タスクボアがこちらに気づいた。

 鼻息を荒くして地響きとともに突進してくる。

 

 地面が揺れる。

 牙が迫る。

 

 けれど、不思議と怖くなかった。

 全身がふわりと橙色の光に包まれる。


『Walker:発動』


 人差し指を伸ばした。


 倒す。食材にする。

 その意思を込めて。


 牙が俺の身体に届く寸前。


 とん。


 巨体の鼻先に指が触れた。

 次の瞬間、タスクボアの体が光に包まれて消えた。

 直後。

 目の前の地面に巨大な骨と牙、そして肉の塊が現れた。真っ白な脂まで綺麗に仕分けされている。

 牙は……いらない。


「…………」

「…………」

「…………」


 三人は口をぽかんと開けていた。

「ラ…ラメルさん今何を……」

「指で触っただけだ」

「鉄札のパーティが手こずる魔獣を指一本で……」


「俺はラーメンの適性がある相手にだけ強いんだ」

 ちなみにステータスは今も初期値に近い。

 ラーメン適性がある魔獣の前だけ無双できる。

 それがラーメンWalkerだ。


 強いのか弱いのか自分でもよく分からない能力だが今はありがたい。


 その夜。

 俺はタスクボアの骨でスープを取ってみた。

 茹でこぼして血と臭みを抜く。

 それでも残る独特の獣の香り。


 けれど一口すすった瞬間全員が目を見開いた。

「……すごい」

「臭いのにうまい……!」

「濃厚で力強くて深い……!」

 臭みはある。確かにある。

 でもその奥にある旨味の厚みが圧倒的だった。


「これはラーメンに合う」

 俺は確信した。

 濃厚な白濁スープ。この世界でついにあれが作れるかもしれない。

 星四つ。伊達じゃない。


 豚骨とは違う。けれど豚骨ラーメンへの道が一歩開けた気がした。


 六日目の朝。


 野営の片付けをしながら俺は一人見張り番を任された。

 シオは水を汲みに。

 ショーは薪を拾いに。

 ユウは少し離れた小川へ食器を洗いに。


「ラメルさんすぐ戻りますからね」

「ああ、任せろ」

 一人焚き火の跡のそばに座る。


 静かな朝だった。

 鳥の声。

 木漏れ日。

 穏やかな時間。


 そこへ。


 ぷるん。


 茂みから青いゼリー状の塊が這い出てきた。

「……スライム」


 体内に赤い核がゆらゆらと泳いでいる。

 頭の上に星はない。


 ラーメン適性ゼロ。

 つまり。

 俺にとっては世界で一番の強敵だった。

「いいだろう。受けて立つ」

 俺は腰から短剣を抜いた。

 あの街の武器屋で一番安い短剣。

 買ってからほとんど出番のなかった武器だ。

 ようやく日の目を見る時が来た。


 ぼこっ。

 ぷるん。


 斬っても弾かれる。

 突いても核に届かない。

 スライムが体当たりしてくる。

 俺は吹っ飛ばされて地面を転がる。


「くそ……!」


 もう一度。

 もう一度。


 十分。

 二十分。


 汗が噴き出す。

 腕が重い。

 足がふらつく。

 ステータスは最弱。

 三人に散々置いていかれたこの体ではスライム一匹を倒すのも一苦労だ。


 三十分が過ぎた。


「はあはあはあ……」


 俺はスライムの前で大の字に倒れていた。

 スライムは元気だった。

 ……前にもこんなことがあった。あの時も三十分だった。


「ラメルさーん戻りました!」

 その時ユウが小川から戻ってきた。食器を抱えて。

「……ラメルさん?」

 ユウは地面に倒れている俺とその上にのしかかろうとしているスライムを見てきょとんと首をかしげた。


「あの、ラメルさん。それスライムですよね?」

「ユ、ユウ……助けて……強敵だ……」

「…………」


 ユウは食器をそっと置いた。

 大きな丸い盾を構える。

 ぶおんと風を切る音。

 盾の縁がスライムの体にめり込む。

 ぱきん。

 核が砕けた。

 スライムは水のように地面に染み込んでいった。


「…………」

「…………」


 一撃だった。

「あのラメルさん」

 ユウが申し訳なさそうに言った。

「スライムは核を狙えばすぐ倒せますよ」

「……知ってる」


「ラメルさん三十分も何してたんですか?」

「…………戦ってた」


 そこへシオとショーも戻ってきた。

「あれラメルさんボロボロじゃないですか!」

「スライムと戦ってたんですか?あはは、ラメルさん最強!」

「笑うな!」


 三人の笑い声が森に響いた。

 ……悔しい。

 けれど少しだけ愉快だった。


 適性のない敵には無力。

 適性のある敵には無双。


 その極端さがこのスキルの愛すべきところなのかもしれない。


 その日の昼過ぎ。

 長い緩やかな坂を登りきった時だった。

 視界が一気に開けた。

 風が変わった。


 鼻をくすぐるほんのりしょっぱい香り。

 そして丘の向こうには。

 どこまでも青く広い水が広がっていた。


「…………わあ」

 最初に声を漏らしたのはシオだった。

「すごい……大きい……!」

「あれが海……」

「水が終わりがない……!」

 ショーとユウも目を輝かせている。


 三人は丘の上に立ち尽くしてただじっと水平線を見つめていた。

 俺も隣に並んだ。

 前世で何度も見た。

 だけどこの世界でこの仲間と見る海はまた格別だった。

 陽光をきらきらと跳ね返す波。

 海鳥の鳴き声。遠くに見える小さな港町の屋根。


「ラメルさん」

「ん?」

「海って、でっかくてしょっぱくておいしいものがいっぱいあるんですよね?」

 シオがわくわくした目で俺を見上げた。

「ああ。そうだ」

 その時視界にポップアップが浮かんだ。


『メンマ:熟成が完了しました』


「……ちょうどいいタイミングだ」

 俺は笑った。

「行こう。海鮮ラーメンのために」

「「「はい!!」」」

 四人は丘を駆け下りた。


 目指すは海辺の港町。

 ここから始まるのは新たな食材との出会い。


 そして海の幸をふんだんに使ったラーメン作りだ。

お読みいただきありがとうございます!!

ついにラメルたちは海に到着しました!

道中では星四つのタスクボアを発見。

豚骨ラーメンとは少し違いますが濃厚なスープへの道が開けそうです。

一方で適性のないスライムには三十分も大苦戦。ラーメンWalkerの極端な性能も相変わらずですね。

そしてメンマの熟成も完了!

海の幸と組み合わせればどんなラーメンが生まれるのでしょうか?

次回もお楽しみに!

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