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前世で食べ損ねたラーメンを求めて ~追放された俺は『ラーメンWalker』で異世界を無双する~  作者: マトンさん


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第十六話 醬油ラーメン

 翌朝。

 俺はいつもより早く目を覚ました。


 昨夜完成した醤油を取り出し小皿に注いだ。

 まずはこれを使って醤油ラーメンの味を組み立てていこう。


 前世で食べた醤油ラーメンを思い出しながら必要な材料を頭の中で並べていく。


 醤油に麺にスープ。

 それだけではあの深い味わいには届かない。

 俺は腕を組んで考え込んだ。


 カエシだ。


 醤油ラーメンは醤油だけでは完成しない。

 スープに負けない旨味の厚みが必要だ。

 ウルフの出汁と干し魚。

 そこにもう一つ。


「昆布が欲しい……」


 この世界に昆布はあるのだろうか。

 ラーメンマップを開く。

 市場の一角に★の印が灯っていた。


『干しヌメリ草(★★★)出汁向き』


 ……★三つ。ウルフと同格だ。


 俺は半信半疑でそこへ向かった。

 たどり着いたのは燃料屋だった。

 薪や炭が積まれた店の隅に黒っぽい乾燥した細長い草の束が無造作に積まれている。


「ああヌメリ草かい?海岸で拾える燃料さ」

 店主のおばあさんはあっさりそう答えた。

「干すとよく燃える。でも煙が変な臭いでな。あんまり人気がないんだ。一束銅貨二枚でいいよ」


 銅貨二枚。

 俺は束を一つ手に取って鼻を近づけた。

 懐かしい海の香りがした。


「……昆布だ」

「どうかしたかい?」

「いや何でもない。ありがとう。ありったけください」


 干しヌメリ草を二十束。

 おばあさんが目を丸くした。


「燃料にしては買いすぎだよ」

「ええまあ。料理に使うんです」

「……料理?これを?」


 おばあさんは首をかしげたが俺は笑って代金を払った。

 屋台に戻りながら俺はあることに改めて気づいていた。

 ラーメンマップの星は値段や希少さを示しているわけじゃない。


 ラーメンに合うか合わないか。


 それだけで決まっている。

 牛のエサもゴミ同然のカビ米も燃料の草も。

 この世界で誰も価値を見出さなかったものがラーメンにとっては宝物だった。


 ……なんだか嬉しかった。


 ついでに、市場で黒砂糖と酒を買い足した。

 今ある材料で工夫するしかない。

 これでカエシの試作に必要なものは揃った。


 夜。屋台の裏で新しい一杯が完成しようとしていた。


 まずはカエシだ。

 醤油に干し魚と干しヌメリ草を加える。

 そこへ市場で買ってきた黒砂糖と酒を入れた。みりんも日本酒もない。

 前世のレシピとは程遠いなんちゃってカエシだが今ある材料で作るしかない。

 弱火でじっくりと温めながら素材の旨味を醤油に移していく。


 麺を茹でる。

 どんぶりにカエシとウルフの出汁で作ったスープを注ぐ。

 麺を入れる。

 カエシでウルフ肉を煮込んでしっかり味付けしたチャーシュー並べる。

 半分に切ったゆで卵をそっと添える。


「……できた」


 湯気の向こうに黄金色に澄んだ一杯のどんぶりがあった。

 シンプルな中華そば。

 けれどそこには俺が前世から憧れた全てがあった。


「「「「「いただきます!」」」」


 四人が一斉に麺をすすった。

 一瞬の静寂。


「……うめえええええっ!!」

「な、なにこれ……ふわって香りが……!」

「すごい……全然違う……!」


 シオもショーもユウも目を丸くして夢中で麺をすすっている。

 俺もスープを一口飲んだ。


 ……ああ。

 これだ。


 濃い醤油の香り。

 ウルフの力強い旨味。

 昆布のまろやかな深み。


 それぞれの味が重なり合い一つのスープになっている。


 前世で毎週末並んで食べたあの味に限りなく近い。

 涙がぽろりとこぼれた。


「ラメルさんまた泣いてる」

「うるさい。うまいんだから仕方ないだろ」


 笑いながら麺をすする。

 四人の体がふわりと橙色に光った。


『食事効果:全員 全能力アップ』


 醤油の材料を全員で集めたからだ。

 自分たちで集めた食材が新しい一杯になりその一杯が自分たちを強くする。

 この力は何度経験しても不思議なものだった。


 食べ終わった後シオがぽつりと言った。

「ラメルさん、このラーメンの名前どうしますか?」

「名前?」

「はい。新しいラーメンですから」


 俺は少し考えた。

「普通に醤油ラーメンでいいかなって思ってたけど」

 ふとショーとユウの顔を見る。


 醤油の材料のズンダ豆とカビ米。

 それを泥だらけになって運んでくれたのはこの二人だ。


「……そうだな」

 俺はにやりと笑った。

「この醤油はショーとユウが集めてくれた。だから二人の名前をとろう」

「えっ!?」

「ショーとユウ。醤油。ショーユウ」

 俺が二人の名前を組み合わせるとショーはぽかんと口を開けた。

「しょうゆう……ショーユウ……」

 自分たちの名前がラーメンになる。その意味を理解した瞬間ショーの顔が真っ赤になった。

「ええええっ!?お、俺たちの名前がラーメンに!?」

 隣ではユウが目を丸くしていた。やがてその目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

「僕たちの……」

 俺は二人に笑いかけた。

「うん。『ショーユウラーメン』でどうだ?」

 ショーは何度も頷き満面の笑みを浮かべた。

「いい名前です!最高です!」

 ユウも涙を拭いながら俺を見上げた。

「ありがとうラメルさん……!」


 二人は抱き合って泣いた。

 シオがくすくすと笑う。

「ショーユウラーメン。ふふいい響きですね」


 こうして屋台の新メニューが決まった。

 ウルフ出汁、干し魚と干しヌメリ草の旨味を重ねたカエシで作るシンプルな中華そば。

 カエシで煮込んだウルフ肉のチャーシュー。

 半分に切ったゆで卵。

 シンプルながらも素材の旨味を詰め込んだ豪華な一品。

 値段は鉄貨六枚。


 翌日。

 屋台の看板が書き換えられた。

『ラーメン 鉄貨五枚』

『ショーユウラーメン 鉄貨六枚』


 その夜屋台の前にはダルク一行がやってきた。

「なんだ新メニューか?『ショーユウラーメン』……?」

「はい。うちのショーとユウの功績の名前です」

「へえ。じゃあそいつをくれ。いやもちろん全員分だ」


 彼らがスープをすすった瞬間の驚いた顔を俺は一生忘れないと思う。

 一口飲んだ途端に目を見開き次々と麺をすすり始めた。

 その様子を見て俺は思わず笑みをこぼした。


 そして閉店後、屋台の火を落とした後俺はふと干しヌメリ草の束を手に取った。

 海の香りがふわりと鼻をくすぐる。


「……そういえば」

「はい?」

「ヌメリ草って海岸で拾えるって言ってたな」

「はい。この街は海からも近いみたいですからね」


 シオが頷いた。

 ……海。

 海があるということは。


 魚介。

 貝。海老。イカ。カニ。それとわかめも。


 ラーメンの世界を一気に広げてくれる素材たちがそこにある。

「次は……海辺の町だな」

「海辺の町ですか?」

「ああ。海鮮ラーメンだ」


 俺はにやりと笑った。

 ラーメン屋台の次なる一手。


 その計画が頭の中ですでにぐつぐつと煮立ち始めていた。

お読みいただきありがとうございます!!

ショーユウラーメン始めました!

シンプルな中華そばっていいですよね!

醤油の香りに出汁の旨味。シンプルだからこそ奥が深い一杯です。

そして次回は海鮮ラーメンを目指します!

海鮮系ラーメンといえばカニやホタテにイカ!そこに大量のわかめが入ったあっさり系のラーメンが大好きです!!

魚介の旨味が溶け込んだスープを想像するだけでお腹が空いてきますね……!

果たしてラメルは異世界でどんな海鮮ラーメンを作るのか!?

次回もお楽しみに!!

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