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前世で食べ損ねたラーメンを求めて ~追放された俺は『ラーメンWalker』で異世界を無双する~  作者: マトンさん


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第十五話 醤油は歩いて作る

 ズンダ豆とカビ米を探す旅は意外なほどあっさり終わった。


 理由は単純だった。

 この世界の人間にとってどちらも価値のないものだったからだ。


 ラーメンマップが示した★★★の先は街から少し歩いた先にあった牧場だった。


「ズンダ豆?ああうちの牛のエサだよ」

 牧場主のおじさんは麻袋いっぱいの緑の豆をひょいと持ち上げてみせた。

「こんなもん欲しいのかい?いくらでも持っていきな。袋ごと鉄貨三枚でいいぜ」

「……三枚ですか」


 牛のエサ。

 確かにこの世界ではズンダ豆は家畜に与えるものらしい。

 俺は震える手で一粒摘まみ上げた。大豆そのものだ。


『ズンダ豆(★★★)醤油向き』


「ありがとうございます!十袋お願いします!」

「十袋!?お、おう……」 

 牧場主のおじさんが目を丸くする。だが俺にとっては鉄貨三枚で手に入る宝の山だ。


 次はカビ米だ。


 こちらは牧場の隣の古い穀物倉庫にあった。

 湿気で傷んだ米が真っ白なカビに覆われて山のように積まれている。


「ああそいつか。ゴミだよ。捨てるのも面倒でな。持ってってくれるならむしろありがたい」


 倉庫の主はそう言って笑った。

 もはやゴミ同然。けれど俺にとっては宝の山だ。


『カビ米(★★)麹向き』


「ショー、ユウ頼んだぞ!」

「「はい!」」


 二人は元気いっぱいにカビ米を袋に詰め始めた。

 シオも袋を担いで倉庫と荷車を往復する。

 もちろん俺も運ぶ。

 誰か一人に任せるのではなく四人全員で素材を集めた。

 ラーメンの材料を自分たちで集めてから食べればステータスが上がる。

 今回もきっといい結果につながるはずだ。


 街に戻った俺たちは屋台の裏で仕込みを始めた。


 ズンダの実を大鍋で蒸す。

 小麦をフライパンで炒る。

 そこにカビ米を混ぜ合わせる。

 醤油づくりの第一段階だ。


 蒸し上がった豆の香り。

 炒った小麦の香ばしさ。

 白い麹が全体に広がっていく。


「ラメルさんこれ本当に食べ物になるんですか……?」

 ユウが不安そうに白い塊を見つめた。


「なるんだよ。ここから塩水を混ぜて樽に詰めて発酵させる」

「発酵?」

「そう。時間をかけてゆっくり味が変わっていく。早くても数ヶ月。普通は一年くらいかかる」

「い、一年!?」


 ショーが仰け反った。

「そんなに待てないですよ!」

「だよな。俺も一年は待てない」


 俺は苦笑した。

 とはいえ、醤油づくりは時間がかかるものだ。

 いくらチートスキルがあってもさすがに一瞬で完成するわけじゃないだろう。


 ……いや。


 俺にはラーメンボックスがある。

 もしかしたら何か特別な機能があるかもしれない。

 樽に先ほどのズンダ豆と塩水を詰めた。

 ずっしりと重い木の樽。


 少しでも短い期間で醬油ができたらなと、淡い期待を抱きながらラーメンボックスに収納してみた。

 その瞬間。

 視界の端に見慣れないポップアップが現れた。


『醸造しますか?はい/いいえ』


「……醸造しますか?」

 俺は思わず声に出して読んだ。


「ラメルさん?」

「ラーメンボックス、醸造までやってくれるのか……!」


 迷わず『はい』を選んだ。


『醸造を開始します。残り歩数:50000歩』


「……歩数?」

 ラメルは首をかしげる。

「ええと、ラーメンボックスの中の醤油があと五万歩歩かないと完成しないらしい」

「五万歩……?」


「俺が歩くたびに減っていくのかも」

 試しに数歩歩いてみる。


『残り歩数:49996歩』


「減った」


「まさか歩くだけだなんて…すごいスキルですね!」

 シオがこっちに駆け寄ってきてくれた。


『残り歩数:49988歩』


 ラーメンWalker。


 Walker。

 それがこのスキルの最後の一つ。

 ずっと「歩くだけ」と笑われていたあの項目の本当の意味だった。


「つまり、時間じゃなくて歩数で醸造が進むんだ。しかも、みんなの歩数も合算されるらしい」

「ふむふむ……じゃあ私たちも歩けばいいんですか?」

 シオが首をかしげた。

「そうかもしれない。みんなで狩りに行ってみよう」

 こうして俺たちは醤油を完成させるために歩き回ることになった。


 その日の午後。

 四人で森へ向かった。

 角ウサギを狩り薬味を摘みさらに奥へと進む。


 歩く歩く歩く。


 休憩を挟みながらひたすら歩数を稼いだ。


 そして夕方。街へ戻ってきた時だった。

 視界のポップアップはこう変わっていた。


『残り歩数:0歩』


「…………ゼロだ」

「えっ!?」


「五万歩達成してる!」

 俺は慌ててラーメンボックスから樽を取り出した。

 どすんと地面に置かれた樽の蓋を開ける。

 ふわりと懐かしい香りが漂った。

 黒い。濃い。そして香ばしい。


 小皿に一滴垂らして舐めてみる。

「…………」

 しょっぱくて深くてほんのり甘い。

 紛れもなく醤油だった。


「でできたああああっ!」


 俺は思わず叫んでいた。

 普通なら一年かかるはずの醸造がたった半日で終わったのだ。


 まさにWalker。

 歩けば歩くほど時間が進む。

 このスキルを「歩くだけ」と笑ったあの神殿の人々の顔が頭をよぎる。


 ……ざまあみろとちょっとだけ思った。

お読みいただきありがとうございます!!

チートスキル「Walker」の本領発揮です!

まさかの歩数で醸造が進むという驚きの機能。

普通なら一年かかる醤油づくりも仲間たちと歩けば一日で完成!

これでいよいよ醤油ラーメンへの道が開けました。

ラーメンWalker。歩けば歩くほどラーメンが近づいてくる!

ちなみに、醤油ラーメンあるあるは、コショウをふりかける→くしゃみが出るまでがデフォです。

次回もお楽しみに!

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