第十四話 仲間と醤油への道
それから一週間。
俺たちの日常はすっかり形になっていた。
朝は四人で森へ。
シオとショーとユウが角ウサギを狩る。
ウルフの群れが出た時は俺が指一本でとどめを刺す。
あとは薬味を摘む。
食材集めは順調だった。
昼には街へ戻り四人でラーメンを食べる。
そのたびに全員のステータスが少しずつ上がっていく。
夕方から屋台を営業する。
そんな日々の中で二人は着実に成長していった。
ショーとユウが初めてゴブリンを倒した日のことだ。
それまでゴブリン一匹倒せなかった二人は森の浅いところで一匹のゴブリンと遭遇した。
「ユウ行くぞ!」
「うん!」
ショーの木剣がゴブリンの胴体に勢いよく打ち込まれる。
ユウの盾が反撃の棍棒をしっかりと受け止める。
息の合った連携。
ゴブリンはあっという間に倒れた。
「……やった」
「やったユウ!倒したぞ!」
二人は抱き合って泣いた。
「ラメルさん!見ましたか!?俺たち勝ちました!」
「見てたよ。立派だった」
俺は笑って二人の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
初めて自分たちの力で勝ち取った勝利だ。嬉しくないはずがない。
そしてその夜。
屋台を閉めた後でショーとユウが改まった様子で俺の前に並んだ。
「ラメルさん。お話があります!」
「どうした二人ともそんなかしこまって」
「俺たちラメルさんとシオ姉さんの仲間になりたいんです!」
ショーがまっすぐに俺を見つめた。
「ラーメンを食べて強くなれたのもそうです。でもそれ以上に毎日が楽しいんです。俺たちずっと一緒にいたい!」
「ぼ、僕も!ラメルさんのラーメンを世界中に広めるお手伝いがしたいです!」
ユウも顔を真っ赤にして頭を下げた。
……ああ。
胸がじんと熱くなった。
屋敷を追い出されたあの夜。
俺は一人きりだと思っていた。
けれど今はこうして仲間が増えている。
一緒にラーメンを食べて狩りをして笑い合う。
そんな当たり前の日々がいつの間にか俺の居場所になっていた。
シオが隣でそっと微笑んだ。
「ラメルさん答え決まってますよね」
「……ああ」
俺は二人に向き直った。
「ショー、ユウ。ようこそ。うちのラーメン屋台へ」
「「はい!!」」
二人の元気な声が夜の北門に響き渡った。
こうしてショーとユウは正式に俺たちの仲間になった。
その夜、宿屋の部屋で俺は一人頭の中の雑誌を開いていた。
『ラーメンWalker』
前世から何度も何度も読み返したあの雑誌だ。
今となっては一ページ一ページ暗記しているくらい。
ぱらぱらとページをめくる。
基本構造の図解。
塩ラーメンの特集。
麺の打ち方。
灰色のページはまだ大部分を占めている。
……なんとなくいつもの癖で最初から最後まで通して読んでいく。
そして最後のページを閉じたその時だった。
ふわりと全身が橙色に光った。
『ラーメンWalker 読了:全能力+1アップ』
「……え?」
俺は自分の手を見つめた。
ステータスが上がっている。
ほんの少し。でも確かに。
雑誌を何度も読み返した。
そのこと自体が経験になって俺の能力を押し上げたらしい。
その瞬間、頭の中の雑誌がばさりと風に煽られたようにページをめくり始めた。
灰色にかすんでいたページのいくつかがすうっと色を取り戻していく。
『閲覧可能ページが増えました』
「ほ、本当に……!?」
俺は慌てて新しく読めるようになったページを開いた。
そこには見出しが大きく書かれていた。
『醤油の醸造方法』
息が止まった。
醤油。
ラーメンのもう一つの柱。
塩ラーメンも悪くない。
でも、あの黒くて香ばしい醤油ラーメンをこの世界で作れるのだとしたら。
想像しただけで胸が躍った。あの深い香りと旨味をこの世界でも味わえるかもしれないのだ。
震える手でページを読み進める。
原料は大豆と小麦と塩と麹。
蒸した大豆と炒った小麦に麹を混ぜて麹を育てる。
それを塩水と合わせて長い時間をかけて発酵熟成させる。
「……大豆と麹」
この世界に大豆はあるのだろうか。麹は?
俺はラーメンマップを開いた。
視界に薄く光る地図が広がる。
遠くの方にいくつかの星が灯っていた。
『ズンダ豆(★★★)醤油向き』
『カビ米(★★)麹向き』
「……あった」
ズンダ豆。
見た目は緑色のさやに入った豆。
醤油の原料になる大豆に似た食材だ。
カビ米。
放置された米が白いカビに覆われたもの。
麹の代わりになりそうだ。
「これを見つけて醤油を作る」
俺は拳を握りしめた。
醤油ラーメンの完成。
それが次の目標だ。
翌朝。
俺は三人の仲間を屋台の前に集めた。
「みんな次の目標が決まった」
「何ですかラメルさん!」
「ズンダ豆とカビ米を探しに行く。醤油を作るんだ」
「しょうゆ?」
三人が首をかしげる。
俺はにやりと笑った。
「塩の次に大事な黒くて香ばしいラーメンの味だ!」
お読みいただきありがとうございます!!
ショーとユウが正式に仲間入り!
初めてゴブリンを倒した二人の成長に加えてラメルにも新たな変化が……。
『ラーメンWalker』を読み通したことで全能力がアップ!
さらに、解放されたページには醤油の醸造方法が載っていました。
ズンダ豆とカビ米を手に入れて醤油を作ることはできるのか!?
次回もお楽しみに!
ラーメン+醤油=新たな可能性!




