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前世で食べ損ねたラーメンを求めて ~追放された俺は『ラーメンWalker』で異世界を無双する~  作者: マトンさん


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第十三話 ステータスの秘密

 屋台を始めて二週間が過ぎた。


 夜。店じまいをしながら俺はずっと頭の中である疑問を転がしていた。

 ラーメンの効果の違いだ。

 シオが食べた時は全能力がぐんと上がった。

 一晩寝ても元に戻らなかった。

 むしろ日に日に強くなっている。


 一方お客の冒険者たちは『全能力+10%(数時間)』。

 しばらくすると元に戻ってしまう。

「同じラーメンなのになんでこんなに違うんだろう?」

 洗い物をしながら呟くと隣でどんぶりを拭いていたシオが首をかしげた。

「私が特別なんでしょうか?」

「いやそれは違う気がするんだ。ショーとユウだってまかないを食べても数時間で元に戻ってたろ?」


 そう、あの二人もお客と同じだった。

 つまりシオとショーとユウの違いは「仲間かどうか」ではない。

 じゃあ何だ。

 考えられる違いはいくつか。

 食べた回数。

 一緒にいる時間。


 それとも——。


「……素材かな?」

「素材?」

「うん。俺とシオはあの最初のラーメンの材料を自分たちで集めた。ウルフを狩って、野草を摘んで、重曹を運んで」

「あ……」

 シオが目を丸くした。

「重曹、確かに私が運んできました」

「でも、お客さんは材料を集めてない。ただ食べるだけ」


 もしかして。


 ラーメンの材料を自分の手で集めてから食べると一時的ではないステータス上昇になるのではないか。

「確かめてみよう。明日ショーとユウを連れて狩りに行こう!」

 俺はまかないのラーメンを夢中ですすっている二人に声をかけた。


「なあ二人とも。明日一緒に狩りに行かないか?」

「狩りですか!?」

 ショーが麺をすすりかけたまま顔を上げた。

「そう。素材を集めてからラーメンを食べたらどうなるのか確かめたいんだ。もちろん無理はさせないしシオにもついてきてもらう」

「行きます! 俺やります!」

 ショーが勢いよく手を挙げた。

「ぼ、僕も行きたいです!足手まといにならないように頑張ります!」

 ユウも大きく頷いた。


「よし。じゃあ明日の朝に北門で集合だ」

「はい!」

「よろしくお願いします!」

 二人は嬉しそうに返事をすると再びラーメンに向き直った。


 翌朝。

 北門の外の森の入口に四人の姿があった。

「今日は狩りだ。夕方の営業前の腹ごなしだと思って付き合ってくれ」

「はい!がんばります!」


 ショーが木剣を握りしめて鼻息を荒くした。

 隣のユウも大きな盾をぎゅっと構えている。


「目標はあの角ウサギだ。★一つ。ウルフほど強くない初心者向けの獲物」

 ラーメンマップに小さな星があちこちで瞬いている。

「シオは二人のサポートを頼む。ショーとユウが自分たちの力で仕留めるんだ」

「分かりました!」


 シオが短剣を抜いて身構えた。

「ラメルさんは?」

 ショーが聞くと俺は森の奥を指さした。

「俺は別のところで素材集めをしてる。終わったら合流しよう」


 俺は森の奥の方へ足を向けた。

 ラーメンマップが視界に★★のマークをいくつも灯している。

『シロネギリ草(★★)』

『ニンニの根(★★)』

『ユーズの葉(★★)』

『コショの実(★★)』。


 薬味の宝の山だ。

「……俺こういうの向いてるんだよな」

 誰もいない森で俺は黙々と草を摘んだ。


 ちなみに、角ウサギを狩る方は遠くから聞こえる声で状況が手に取るように分かった。

「うおおおっ!」

「ショー後ろ!ユウ盾!」

「は、はいっ!」

 どすん。ぱきん。


 悲鳴と気合の声と時々シオの的確な指示。

 ……楽しそうで何よりだ。


 一時間後、合流すると三人は泥だらけででも満面の笑みで俺を迎えた。

「ラメルさん!やりました!三羽も狩りました!」

「僕も一羽、盾で動きを食い止めました!」

「えらい!」


 シオが手際よく角ウサギを解体している。

 慣れた手つきだ。

 ショーとユウも見よう見まねで手伝っている。

「解体は私に任せてください!孤児院でよくやってましたから」

 彼女はそう言って胸を張った。

 こうして俺たちは角ウサギと薬味の素材をそれぞれ手に入れた。


 狩りを終えて街へ戻った俺たちは屋台の裏で昼食の準備を始めた。

 今日のラーメンは角ウサギとウルフの骨を使ったスープ。

 シロネギリ草とニンニの根とユーズの葉をたっぷり。

 最後にコショの実を砕いたものを少しだけ振りかければ完成だ。


「「「「いただきます!」」」」


 四人分のどんぶりが並んだ。

 ショーもユウもシオも勢いよく麺をすする。


「うめえええっ!やっぱりラメルさんのラーメン最高!」

「おいしい……」

 やがて四人の体がふわりと橙色に光った。


『食事効果:ラメル 全能力+1/シオ 全能力+15/ショー 全能力+8/ユウ 全能力+8』


 ……ん?


 俺は表示を凝視した。

 いつもの『数時間』という文字がない。

 昨日ショーとユウが食べた時は確かにあった。

『全能力+10%(数時間)』と。

 けれど今日の表示には期限の記載がどこにもない。


「ラ、ラメルさん!俺、体がすっごく熱い!」

「僕も!なんだか全身に力が染み込んでくる感じ!」

 二人が興奮して叫んだ。


「やっぱりか……」

 俺は確信した。


「素材を自分で集めてからラーメンを食べるとステータス上昇が一時的ではなくなる。これが答えだ!」


「え?どういうことですか?」

「前の日は二人ともお客さんと同じで素材を集めてない状態で食べたろ?だから時間制限付きだった。でも今日は自分で狩りをして解体を手伝って素材を集めてから食べた」

「……あっ!」


 ショーとユウがはっとした顔になった。

「じゃあ俺たち、強くなったってことですか!?」

「そういうことだな!」

「やったああああっ!」

 ショーが拳を突き上げて飛び跳ねた。

 ユウもぽろぽろと嬉し涙をこぼしている。


「でも、一つ確認しておきたい」

 俺は屋台を見回した。

「お客さんの方は本当に時間制限付きのままか。今日の営業で確かめよう」


 夕方営業が始まった。

 いつもの通り北門のそばに冒険者たちが列をなす。

「ラーメン二つ!」

「こっち三つ!」

 ラーメンを食べたお客の体が橙色に光る。


『食事効果:ダルク一行 全能力+10%(数時間)』


「やっぱり時間制限付きだ」

 俺は小さく頷いた。

 営業終了後念のため何人かの冒険者に確認した。


「昨日のラーメンの効果っていつまで続きました?」

「ん?ああ。あの力が湧くやつか。一晩寝たら元に戻ってたな」

「そうなんですね」


 やっぱり間違いなかった。

 お客は時間制限付き。素材を集めた仲間は永続。


 この違いがラーメンWalkerのもう一つの仕組みだ。

 ……つまり。


「ラーメンの材料を自分たちで集めるほど仲間は強くなる」

「じゃあ私たち毎日素材集めをすればずっと強くなれるってことですね!」

 シオが目を輝かせた。

「そういうことになるね」


 俺はにっと笑った。

 ただし気になることが一つある。

 シオが+15でショーとユウが+8。なのに俺は+1だけだ。

 素材を集めた量が関係しているのか。それとも俺だけ何か違うのか。

 今のところ答えは出ない。


 ……この仕組み。仲間がどんどん強くなるのは嬉しいけど俺の出番がどんどん減っていく気がする。

お読みいただきありがとうございます!!

今回はラーメンWalkerの新たな秘密が判明しました!

でも自分たちで素材を集めてから食べるとステータス上昇が一時的ではなくなる!

これならショーとユウもどんどん強くなれそうです。

……ところでラメルだけ能力上昇が+1なのはなぜなのか?

ラーメンWalkerのスキルの神秘はまだまだ奥が深いようです。

次回もお楽しみに!

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