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冴えないおっさん、AIと異世界で国を作る〜魔法社会を科学でひっくり返す〜  作者: れいじ
第6章 新生国家ジャポン編

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第6章 新生国家ジャポン編 第14話「たんぽぽ村の地下」

第6章 第14話です。


今回から、サウスガルドの“裏側”へ。


砂影という地下組織、

そしてオリオン・レオナルドが本格的に登場します。


さらに、アルディオンという存在の危険性も、

少しずつ輪郭を見せ始めます。

セラディウスを出てから半日。


修一たちは南西へ向かっていた。


乾いた風が砂を巻き上げる。


見渡す限りの荒野。


その先に、小さな村が見え始めた。


「……あれか」


修一が呟く。


クロウが軽く頷いた。


「たんぽぽ村」


名前だけ聞けば穏やかな村だ。


実際、遠目には普通の農村に見える。


畑。


風車。


土造りの家。


小さな井戸。


どこにでもありそうな景色だった。


だが、近づくにつれて違和感が増していく。


静かすぎる。


人はいる。


畑を耕している男もいる。


荷を運ぶ女もいる。


それなのに、全員が一瞬だけこちらを見る。


そしてすぐ視線を外す。


修一は小さく言った。


「普通の村じゃないな」


クロウが鼻で笑う。


「表向きはな」


エルメディアも周囲を見ていた。


「気配が多いですね」


修一も感じていた。


見られている。


監視されている。


しかも隠れ方が自然だった。


村人にしか見えない。


だが、動きに無駄がない。


クロウがぼそっと言う。


「農民の手じゃねえ」


「武器握ってる手だ」


村の奥へ進む。


やがて、一つの古い井戸の前で止まった。


石造りで、かなり古い。


周囲には誰もいない。


修一は井戸を見下ろす。


「ここか?」


「ああ」


クロウが井戸の縁へ手をかける。


低い音。


石がゆっくり動く。


地下へ続く階段が現れた。


冷たい空気が流れてくる。


修一は思わず眉を上げる。


「本当に地下なんだな」


「言っただろ」


クロウは先に降りていく。


修一、エルメディア、アルゴも続いた。


階段は深い。


降りるほどに空気が変わる。


静かなのに、人の気配が増えていく。


やがて視界が開けた。


修一は足を止める。


「……街か」


地下空間。


そこには巨大な都市が広がっていた。


石造りの通路。


並ぶ店。


武器、防具、薬草、魔道具。


情報屋。


傭兵。


ローブ姿の魔道士。


地上では見ないような人間もいる。


天井には巨大な魔光石。


地下だというのに明るい。


エルメディアも驚きを隠せない。


「これほどの規模とは……」


クロウは慣れた様子で歩く。


「砂影は情報で食ってる」


「表で動けねえ連中も多いからな」


修一は周囲を見る。


危険な空気はある。


だが無秩序ではない。


独自の秩序がある。


その時、数人の男たちがクロウに気づいた。


「あれ……クロウか?」


「久しぶりだな」


「まだ死んでなかったか」


クロウが嫌そうに顔をしかめる。


「うるせえ」


修一は少し笑った。


「意外と知り合い多いんだな」


「昔のだ」


クロウはそれ以上語らなかった。


地下都市のさらに奥。


大きな扉の前で止まる。


見張りの男がこちらを見る。


「誰だ」


クロウが答える。


「ルミナの紹介だ」


男の目が少し変わる。


「……待て」


数分後。


扉が開いた。


中は広い部屋だった。


壁一面に地図。


大量の書類。


そして中央には、大きな水晶板。


修一は目を細める。


「通信装置か」


「砂影製だ」


クロウが答える。


「アルゴの方が上だけどな」


修一はアルゴを見る。


『通信接続準備開始』


アルゴの胸部が淡く光る。


水晶板と接続され、魔法陣が展開された。


その時、奥から声がした。


「ルミナの知り合いって時点で面倒臭そうだな」


長身の男が歩いてくる。


黒髪。


気だるそうな目。


片目だけが金色だった。


軽装だが隙がない。


修一は一目で分かった。


強い。


男はクロウを見る。


「……久しぶりだな」


クロウが鼻で笑う。


「生きてたのか」


「お前もな」


短いやり取り。


だが長い付き合いが見えた。


男は修一へ視線を向ける。


「オリオン・レオナルドだ」


「神谷修一」


「ジャポンの代表だ」


オリオンが眉を動かす。


「ジャポン?」


「聞いたことねぇな」


「最近できた国だからな」


その間にもアルゴは接続を続けている。


『通信塔へ接続中』


『対象者を呼び出します』


オリオンが首を傾げる。


「通信塔?」


クロウが苦笑する。


「最近変なもんばっか増えてんだよ」


数分後。


水晶板の向こうで声がした。


『はい?』


知らない男だった。


『本日の通信塔管理担当です』


『ルミナ様を呼びますので少々お待ちください』


オリオンが目を細める。


「……本当に繋がってんのか」


修一は肩をすくめた。


「そのうち慣れる」


しばらくして映像が切り替わる。


ルミナだった。


背景には通信塔の部屋が見える。


壁には新しい魔道具や線が並んでいた。


『聞こえる?』


「ああ」


オリオンが片手を上げる。


「久しぶりだな」


『生きてた?』


「勝手に殺すな」


軽口。


だが、ルミナの表情はすぐ真剣になる。


『オリオン』


『これから話すこと、ちゃんと聞いて』


空気が変わる。


ルミナは静かに説明を始めた。


研究塔。


契約魔法。


エーテルコア。


異空間。


そして――


アルディオン。


その名前が出た瞬間、オリオンの表情が変わった。


「待て」


低い声だった。


「アルディオンだと?」


修一が頷く。


「知ってるのか」


「当然だ」


オリオンは眉をひそめる。


「マスターの右腕だぞ」


エルメディアも静かに目を細める。


オリオンは椅子にもたれながら言った。


「サウスガルドの裏側じゃ、前から噂になってた」


「マスター側が怪しいってな」


クロウが腕を組む。


「まあ、そうなるわな」


「情報が消える」


「奴隷商が守られてる」


「裏取引も揉み消される」


オリオンは続ける。


「全部、上が絡んでるとしか思えなかった」


修一は静かに聞いていた。


オリオンは少し考え込む。


「だが……アルディオンか」


その声に、確かな驚きが混じる。


「マスター本人じゃなく、右腕側が動いてたってことか」


エルメディアが口を開く。


「サウスガルドのマスターはエルフです」


オリオンは頷いた。


「ああ」


「男のエルフなんて時点で異常だ」


「しかも歴代でも最強クラス」


その声には本物の緊張があった。


「ちょっとやそっとじゃ絶対に勝てねぇ」


ルミナが静かに続ける。


『でもアルディオンは違う』


『ハーフエルフ』


部屋の空気が少し変わる。


クロウがぼそっと言う。


「なるほどな」


オリオンも険しい顔になる。


「……典型か」


修一が聞き返す。


「典型?」


オリオンはゆっくり説明した。


「エルフは長命だ」


「時間をかけて物事を見る」


「逆に人間は短い時間で欲を求める」


金色の目が細くなる。


「ハーフは、その悪い部分が極端に出ることがある」


「力への執着」


「焦り」


「支配欲」


エルメディアは静かに目を伏せた。


否定しない。


つまり、あり得る話なのだ。


ルミナが続ける。


『アルディオン本人が言ってた』


『平和が退屈だったって』


部屋の空気が凍る。


オリオンの表情から完全に余裕が消えた。


『マスターの座を奪う』


『結界を壊す』


『ゼノン島を解放する』


静寂。


修一は静かに続けた。


「そのために百年準備してきた」


「エーテルコアも、契約魔法も、そのためだ」


オリオンがゆっくり立ち上がる。


「……正気か?」


エルメディアが静かに言う。


「マスターが死ねば、結界は崩壊します」


「ゼノン島の魔物が世界へ流れ込む」


クロウが腕を組む。


「しかも、あいつは魔物支配の研究までしてる」


全部が繋がった。


研究塔。


契約魔法。


異空間。


百年単位の準備。


オリオンは額を押さえる。


「……だからか」


「世界が混乱した後、自分だけが支配する気か」


修一は静かに頷いた。


オリオンはしばらく動かなかった。


やがて深く息を吐く。


「……厄介なんてもんじゃねぇ」


金色の瞳が細くなる。


「アルディオンは国を欲しがってるんじゃない」


その声は低かった。


だが確信があった。


「世界を壊したがってる」

たんぽぽ村という穏やかな名前の地下には、

巨大な情報都市が広がっていました。


砂影は正義ではありません。

ですが、この世界の闇を最も知っている組織でもあります。


そして今回、ようやくアルディオンの目的が整理され始めました。


彼はただ権力を欲しているわけではない。

世界そのものを壊そうとしている。


そのために百年を費やしてきたという事実は、

修一たちにとっても、オリオンたちにとっても重い現実でした。


ここから物語はさらに大きく動いていきます。

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