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キンキン声の秘密

じいちゃんがこの世を去った夏休み。


いうまでもなく夏休み中が49日の状態であった。


それまでにいろんなことがありすぎた。

というかいろんなことを知りすぎたといえよう。



なんとあのじいちゃんは驚くべきことに生前奥さんが二人いたのであった。

まぁじいちゃんはバツ2だったらしいので、同時進行で奥さんが二人いたいうわけではないらしいが、これだけでもかなり驚いた。


一人は私たちもよく知っていて、ホントのおばあちゃんと言ってもいいぐらいに今でも交流がある人だった。事情はよくわからないけど、じいちゃんとは別居中なだけであり、じいちゃんとはいまだに仲がいい。地域のいろいろな行事とかに一緒に参加したり、お正月とか、たまに会いに行っていたとっても優しいおばあちゃん。名前は吉祥晴子というらしい。


そしてもう一人のおばあちゃん…。

この人は正直、存在することさえも知らなかった。


この人がだ。


じいちゃんの葬式でいきなり現れたのだった。


私はそこで初めて、じいちゃんにとってもう一人の奥さんであり、私たちにとってもう一人のおばあちゃんの存在を知った。


葬儀の最中にいきなりドアが乱暴に開く音が聞こえて、そのあとすぐ、派手に厚化粧をした50代後半ぐらいの女が現れた。まぁよく言えば、年の割には身ぎれいで若いときはさぞかし美人だったことは伺える容貌だ。


私はその人を一目見ただけで、すぐ嫌いになっていた。


開口一番にその女は…



「死んだの?あの人?」



だった…。



それを聞いたとたん、だれもが呆然としてしまった。


それもその威圧感ありまくりなかん高すぎるキンキン声…。


これってもしかして…


「一応最後に挨拶に来るだけはきたわっ!これでいいでしょっ!?」


その女は香典をパッと放り投げ、帰ろうとしていた。



そこへ…



「母さん」



今確かに父はその女のことをそう呼んだ。


つまりはだ。


この女こそが私たちの本当のおばあちゃんであることがそこで判ったのであった。


なるほど、この女ホントにみれば見るほど曜子のコピーと言っていいほど、何から何まで曜子に似てる。

曜子の性格も、曜子の口調も、曜子のあのキンキン声も、認めたくもないが曜子のあの容姿の良さも全部この女から来たものだということがこの時本当にわかった。


曜子の遺伝はここからきていることとなると、曜子の兄弟である私たちもこの人の血を受けついていることになる。


私はそれを考えると…ぞっとしてしまった。

もうショックでしかなかった…。



そこへ父に続いて、いきなり沈黙を破ったのは…。



「ねぇねぇこの人、お父さんのお母さんなの!?」


よりにもよって曜子だ。



「そうよ…」



この時ばかりはさすがの母も小声で曜子にそう伝えていた。



「へぇじゃあ、この人は曜子にとっておばあちゃんってことになるよね?」


と曜子は葬式には似つかわしくないぐらいに明るい声でそう言い放った途端。




バッシーーーーーンっ!!




という音が部屋中に響き渡った。

なんと、その女は曜子の頬を思いっきりひっぱたいたのだった。



さすがの曜子もびっくりして声を失っていた。


「失礼なこと言わないでくださるっ!!?誰がおばあちゃんよっ!!?」


と今までのキンキン声がさらに迫力を増して部屋中に響き渡った。

なんか、この人いろいろ訳わからないし、こんな孫がいるのも嫌だという気持ちも判らないわけではないが、事実を思いっきり捻じ曲げている。それはこの場にいる誰が見ても確かだった。



「きょ…響子さん…」


晴子ばあちゃんもこの場を自分が何とかしようとしていたが、もうそれは遅かった…。



「うわーーーーーーーーーーーーーんっ!!」



予想通り、曜子の大爆音の泣き声が部屋中に響き渡っていた。


それに付け加え、それに負けじと


「なんなのよっ!この子はっ!!?

初対面から失礼なこと言うし、クッソやかましいし、いったいこの子の親はどういうしつけしてるのよっ!!?」


また部屋中にキンキン声が飛び交う。


その中で母が


「すみません。すみません。すみません。」



と言いながら、曜子を抱きか変えて慌てて部屋を出ていく…。


もうその地獄絵図な状態で私はその場で吐きそうになって、倒れてしまった。



そしてその女は



「もう何なの?この家の子は?こんな時にいきなり倒れるなんてなにっ!?」



と私にまでそう言い放った。

私はそのキンキン声を聞いて余計に気分が悪くなってきた。



もう…お願いだから、あんたはこれ以上喋らないで……。



とさえ願った…。


部屋を出て行ったとはいえ、ただでさえ曜子のあのキンキン声の泣き声がいまだに余裕でここまで響いているのだ。これ以上そのキンキン声がダブルで響きわたるとなると本当にきついのだ。

多分、今は静かに耐えている兄ですらもさすがに限界に来てると思う。だからやめて…もう喋らないで…。



という願いもむなしく。



「立ちなさい!」



え…。



何言ってるのこの人?

私無理だよ…。


だいたい倒れたのあんたのせいだよ…。



「ちゃんと立つのよっ!!いい歳して恥ずかしくないのっ!!?」



だってさ…ハハハハハハハ……

いい年ってあんただって、もうクッソババア言われてもおかしくない歳じゃん…。

あんたこそその歳でそんな言い方しかできないなんてダッサー…



と思った瞬間だった…


「響子さんやめて!」


という晴子おばあちゃんが言ったあとすぐに…。




「耳が聞こえんのかねっ!!!」



という超爆音のキンキン声が耳元で聞こえてきた。


私はもうマジで耳がつぶれるかと思ったぐらいびっくりして、目を見開いた。


顔の近くでにやりと笑う不気味な笑顔を見て私はぞっとした。


そして、私は



「うっせぇんんだよくそばばぁ!!!」



とマジ切れしていた。

その女の襟首をつかみかかっていた。



「お前のキンキン声!ゲロ吐きそうになるぐらいキモいんだよっ!!

二度とその声でしゃべるなっ!!その声クッソ迷惑なんだよっ!!マジ黙れっ!!

くっそぶぁぶぁあーーーーがっ!!」



と言いたいことを言った後の記憶はなくなっていた…。



気が付いたら、晴子ばあちゃんの住むアパートで眠っていたのだった。



まぁ、後で兄から聞いた話だが、葬儀はあの後めちゃくちゃになったらしい。

さすがに私の場合はいくら部ちぎれてる最中とはいえ、仏壇に飾ってあったも仏具にまでは手を出さなかったらしいが、あの女響子はなんと仏具にまで手を出して、私に向かって投げていたらしい。お坊さんも前代未聞なぐらいあれた葬式だったと言っていたそうだ。


私だって、じいちゃんの葬式をこんな風にはしたくなかった…。最後ぐらいはしっかりとじいちゃんを見送りたかった。


「ごめんね。じいちゃん…。」


今更ながら、おばあちゃんの部屋で何度もそれをつぶやいていた。


そしたら、


「大丈夫だよ。星子ちゃんのその思いはじいちゃんに届いてるよ。」


といつものあの温かい声が聞こえてホッとした。

ホント私はいつもこの声に癒されている。


でも、私は…この人のホントの孫じゃない…。

今はそれがショックでならなかった。


ずっとホントのおばあちゃんだと信じてきたのに…。


私が暗い顔をしていたことを察してかおばあちゃんは…


「もしかしてだけど…。」



「!!?」




「星子ちゃん今日のことで、あの響子さんがホントのおばあちゃんと思ったにかい?」


図星をつかれてしまった。


私は今本当にそのことで悩んでいることがやはりわかるらしい。

そうだよね。


あの人ホントに何から何まで曜子そっくりなんだもんなー。


「大丈夫よ…。」


もう、あの人が曜子にそっくりなだけで私たちのおばあちゃん確定なのに一体何が大丈夫なんだろ。

晴子おばあちゃんもおばあちゃんで、気休めはよしてよとさえ思った。


「曜子ちゃんは確かにあの人の孫だけど、お兄ちゃんと星子ちゃんは確かに私の孫よ。」


「え?」


それを聞いてびっくりしている…。


ってうそでしょ?なんかすごく無理があるんだけど…。



「一体どういうこと?」


「まぁ今の星子ちゃんにはまだ早いから、これ以上のことは言えないけど、それはホントのことだから信じて…。」


と言われても…私にはよくわからなかった。


「大丈夫。その証拠に私と星子ちゃんは同じ血液型よ。星子ちゃんも知っての通り、曜子ちゃんと星子ちゃんは全く違う血液型でしょ?」


確かにそうだ。

私と曜子の血液型は明らかに体軸ともなるような血液型だ。


そして、私はばあちゃんに連れられて二人で鏡の前に立った。


「ほら、私たちよく似てるでしょ?」


そういえば気づかなかったが、確かに顔立ちはよく似ていた。


そうだ。そういえばじいちゃんは私の笑った顔が好きだと言っていたことを思い出した。


それはきっと、じいちゃんはあの人よりもばあちゃんのことが好きということか…。

なんか、それはそれで私はばあちゃんのことを信じることができる気がしてきた。



「いつか大きくなった時に私たち大人の事情を知ることができるようになるから、

今は私が星子のおばあちゃんであることを信じて自信もって生きてほしい。」


いまいちよく見えない部分もあるけど、おばあちゃんの目は明らかに真実を訴えていた。


いろいろ大人になれた10歳の夏だった。

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