全部キンキンのせいだ!!
あの日…
私が築いてきたものは全部崩れ去った…
優等生だった私………
運動神経抜群な私………
人気者だった私………
誰からも信頼されてきた私………
全部全部全部、私がこれまでに一生懸命築いてきたクラスカースト上位が曜子のせいで一瞬で崩れてしまった。
あの時の雅美の表情はもう忘れられない。
雅美はおそらく、このクラスでは曜子のことを他の子よりかは詳しく知っている存在だ。
というか、このクラスで曜子と私は姉妹であることを知っているのは栄太とまさみぐらいなものだ。
曜子が教室に来た時にはさすがに雅美も目を丸くしていたが、曜子が雅美の前を素通りしていったときには、
「よかったーターゲットは私ではない。」
という表情はさすがに見逃さなかった。
なんかあの子許せない。
別に雅美とは普段は可もなし不可もなしな存在で、仲が悪いというわけではない。
まぁ普通に話せるいい奴ではある。
がこういう突飛的なトラブルがあるとあからさまに距離を置いてくるところが信用できないのだ。
そしてほとぼりが冷めるまで一切かかわってこないのもお約束。
まぁ人としてそれは普通な行動で私だってそんなことはよくあるが軟化されるとむかつくわけで…。
絶対に雅美だけには負けられないという思いで、成績はクラストップを意地でも貫いている。
ちなみに雅美はだいたいいつもクラスで2番から4番ぐらいの成績をうろついている。
だから常に気を抜かなかった。
運動、ピアノ、料理に裁縫、最近はイラストにだって凝り始めていて、ちょっと苦手だった絵の腕だって結構上がってきた。
容姿に然りだ。曜子よりかは確かに表情が乏しく愛想がないので不利な点も多いが、決して悪くはないと思っている。証拠としてだが、小3の時の学級新聞にて、クラスの美人コンテストで5位だった。ギリギリランキングに入っていたのも事実だ。ちなみに雅美は入ってなかった。
だから、私は何一つ雅美には負けてはならなかったのだ。
そんな私は常にクラスの女子ではトップに君臨して、ずっとこのままいけると思っていた…。
そんな私は今現在不登校…。
そして一番、今うざいのは…。
「星子ちゃん。そろそろ学校に行かないと…」
母さんだ。
もとはといえば、こいつのせいで私は学校で恥かいたのだ。
どうもこのクソババアは…
「なーんだ、曜子ちゃん友達いないならお姉ちゃんとこ行きなよー。お姉ちゃんなら友達いっぱいだから、ぜーったい楽しいってー。ハハハハハハハハーーーー!」
と曜子に余計なことを吹き込んだらしい。
そりゃ曜子があまりにも人見知り過ぎておとなしくてな子だったら、まだ手を差し伸べてもいいが、うるさすぎて生意気なことばかり言ってもう、学校中から嫌われている曜子なんかどうやったって救いようはないわ!
それをだ。「助けてやって」だと!?無謀だわそれ!いくら、私でもそんなの無理だわ!私だって今の位になるまでに血のにじむような努力をしてきたんだ。それを今まで我儘したい放題に生きてきて、なんも努力してない曜子のためになんか白なんて、絶対にイヤだっ!
なんて余計なことしてくれるんだ!?
そのせいで私は私は…。
「うるっせーなっ!そもそもお前のせいでこうなったんじゃないかよっ!!責任とれやっ!ぅそばばあー!!!」
といったとたん。
バッシーーーーーンっ!
私はいきなり横っ面をひっぱたかれた。
「なんて冷たい子なんだ!?私はあんたをそんな子に育てた覚えはないよっ!!」
「はぁっ!!?お前だっていろんな人におべっか使ってるんじゃねぇよっ!!おまえのそういうとこまねしてなにがわるいよっ!!!?あああんっ?」
もうめちゃくちゃ罵り合っていた。
そこへ…。
「…花江さん。」
来たのはじいちゃんだった。
「お義父さん…」
「融治が呼んでいるから言ってやって。」
「…え…でも……。」
「ここはわしが何とかする」
いつもこういうときにいさめてくれるのはじいちゃんだ。
でも今の私は多分じいちゃんでも無理なぐらい心が荒れている。
母さんはしぶしぶ部屋を出て行った。
母さんが出てって、完全に部屋から離れたことを確認してすぐ、
「出かけるぞ」
とたった一言じいちゃんはいった。
「え、でも…」
「心配するな。遊びに行くだけだ。」
私はこの後、植物園に行った。
「どうだー。けっこういいだろー。」
いい香りときれいなお花に囲まれて素敵な気持ちになれた。
「うん」
「よろこんでくれてよかったー。」
世の中にはこんなに素晴らしい場所があったなんて。
私は今すごく感動していた。
「星子…。わしはお前の笑った顔が好きだ。」
「え?」
私の笑った顔??
笑っている顔なら、曜子の方が得意そうだ。
あれは機嫌が悪いとき以外はいつでも笑っているといってもいいぐらいだ。
まぁ曜子だって、ギャン泣きするはすごい勢いで怒るわ喜怒哀楽が激しいが、なんでか立ち直りが早くて気が付いたら、笑顔になっている。
私はへこむと立ち直るまでに時間がかかるので、おそらく曜子よりも笑顔でいる時間は少ないであろう。
「お前には、ずっと笑顔でいてほしい。」
だから、じいちゃんは私のことをいつも楽しませてくれてるんだな。
じいちゃんのことは大好きだ。
「いいか。じいちゃんはいつでも星子の味方だ。だからずっと笑顔でいておくれ。」
じいちゃんは私の首に何かかけてきた。
「これ持ってて、絶対星子のことを助けてくれるから…。」
おまもり?
「ありがとう。」
私はこの時じいちゃんの言葉を信じた。
明日からは学校に行こう。
ホントにそろそろ行かないと、雅美に負けちゃう。
「もうすぐ、林間学校だろ?少なくともその時間だけは安全じゃないか?」
というじいちゃんの言葉。
確かに林間学校には曜子は来ない。
「楽しんで来い」
じいちゃんのおかげで2週間近く学校を休んでいたが、ようやく復帰できた。
通学班に行けば、班長代理の猛がげっそりした顔で班長の旗を渡してくるし、同じクラスメートからは
「星子ーあんた、苦労してるんだねー」
の連発だっただけで、私はそれ以降も特に自分が嫌われるとか、そういうことはなかった。
まぁ私の普段の行いや努力や人望が功を出たのだろう。
ただ…私までもが…
「あいつだろ?キンキンの姉ちゃんって。」
とイヤな意味で有名になってしまったのはイヤだった…。
そして…楽しみにしていた林間学校…
途中まではホントに楽しかったのだが…
二日目の夜…
これから、参加する予定だった肝試しよりも恐ろしいことが起った。
「せいこねえちゃん!」
いきなりむしろからあのキンキン声が聞こえてきた。
その声にクラス全員が振り向いた。
なんでこんな時に曜子!?
こういうときぐらいは曜子のことは誰もが忘れたかったゆえに、曜子のその姿を見た途端みんなすごく嫌そうな顔をしていた。
曜子の隣には、従業員の門倉さんがいた。
さっきまでみんな、肝試し前とはいえものすごく騒がしかった空気が、曜子が来たとわかったとたん、一気にシーンとなった。その状況に曜子は
「なぁに?みんななんで?そんな顔するの??」
曜子は今にも泣きだしそうだ。
ああ、このままもし泣き出したら…。
おい誰か、いさめろよ…。
と思うが周りはみんな曜子を見て固まったまま何も喋らない。
そこへ担任の佐倉先生がしぶしぶ対応していた。
何で曜子がこんなところまで来たのか?誰もが謎であった。
そしたら、さらに後ろから、
「よーこちゃん!もういったいどこにいってたのー??」
「よーこーーーー!!こんなとこにいたかーーーー??」
と曜子よりも騒がしい声。
酔っぱらった父と母までがやってきた。
「あの…、琴金さん困ります。今ここは林間学校の会場でして…。」
先生はうちの両親を一生懸命説得していた。
「いやーーー。すみません。家もキャンプしてましてーーーたまたまかぶってしまったみたいですなーーー。がははははははーーーーっ」
と父は豪快に笑っていた。
「ホンっとすみませーーーん。なんなら、いっそ曜子ちゃんもお姉ちゃんたちと一緒に参加してみたらーどうかなー?林間学校の予行練習にもなるしーーー」
と母までもがノー天気に絶対誰も笑えないほども冗談を言っていた。
二人とも完全に酔っていた。
冗談どころの騒ぎじゃない!曜子と一緒に林間学校なんて、恐怖でしかない!
私は恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。
みんなどこの家庭でも、こんな日まで家族でキャンプ場に押しかけてなどこないのに…。
この時、私は同級生全員からの冷たい視線が刺さりっぱなしだった。
私はこの後…一応宿泊場には戻ったが、クラスメートと同じ部屋には戻らず先生の部屋で寝た。
で、私が止まるはずだった部屋には代わりに曜子が寝たらしい…。
いうまでもなく、部屋ではしゃいでるのは曜子だけで、他はみんな白けていた状態だったらしい。
もうなんなん?この謎展開…
そして私はもう恥ずかしすぎて、みんなの元には戻らなかった。
帰りはみんなと一緒にバスにの乗らず、門倉さんと二人で車で帰った。
ちなみに5年1組のバスには私の両親と曜子が代わりに乗って帰ったらしい。(最悪だ)
帰りのバスの中は曜子がいたせいでやかましすぎたと聞いた。
普通、旅行時の帰りのバスというものはだいたいみんな疲れ切って眠ってしまう子が多いはずだが、その帰りのバスは曜子だけが張り切っていて異様な雰囲気だったとのこと。
そして私は…そのまま夏休みを迎え、そのままあの5年1組のクラスにも戻らなかった。
まさかではあったが…
林間学校から、帰ってすぐ…と言ってもいいぐらいに、じいちゃんが亡くなった…。
家で唯一の心の支えだったじいちゃんは、小5の夏休みに…天に旅立った…。




