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キンキンあだ名をつけられる

5月…


曜子は学校では、ものすごく有名人となった。

もう、曜子の存在を知らない者は誰もいないぐらい…。


ホント普通の子なら、この時期はたいていは絶対にそんなことはあり得ない。

個性の強い子にしてもだ。「あああの子か…」「まぁ面白い子だよねー」だけの噂ぐらいで済む。


だが、曜子は違う…。


「おい、あいつだろ?」


「そうそう」


「私、嫌いなのよねー。悪いけど関わりたくないわー。」


「無理無理無理無理」


「きたぞきたぞー」


「おい、めんどくさいから、逃げるぞ」


曜子の姿を見るや否や。

上級生たちは全力で嫌がっている。


運悪くたまたま学校行事や月に一度のゲーム前項集会とかで、曜子とペアを組まされる上級生はみんな



「あはははははははは・・・。」



と苦笑いして、心ここにあらずで、その行事の時間が終わるまでずっとしらけている。

明らかに曜子より、なんもできないハナちゃんという女の子がいるのだが、それでもハナちゃんとペアを組んだコンビの方が、


「私、上原美緒よろしくね」


「ハナちゃんっていうのね。よかったいいこそうでー」


「ああ、よくできたねー」


「うん上手上手」


といった感じで、ハナちゃんはほとんどしゃべらないけど、こちらの方が上級生も楽しくリードできている様子だ。



一方曜子とペアは


「おねえちゃんがんばれー!」


とキンキンしたうるさい声で、曜子が応援してるのだが、曜子のそのキンキン声が原因で調子がくるって、当たり前のように失敗する。


「あーうまくできなかったーーー。」



そして、それに見るに見かねた曜子が



「お姉ちゃんへただから曜子が全部やるねー」


と

ホント満面の笑みで生意気過ぎる余計な一言を言って、本来楽しむべきことも全部曜子が奪っていく。

「お姉ちゃん下手」ってさ、あんた一体どこから、その自信が出てくるわけ!?


要領が悪くてどんくさいあんたがやったら余計に無理だってーの!!


とマジで突っ込みたくもなってきた。


結局、曜子ペアは全失敗に終わった。



私がそのペアだったって?


いいやちがう!


行事でペアを組まされるのは、だいたい毎回1年生と6年生だ。

5年の私が組む相手は2年生なので、曜子と組まされることはまずない。


まぁ曜子はペアを組んだ相手のことを「おねぇちゃん」と呼んでいるが、多分そのくまされた相手は曜子から、名前すら覚えてほしくないから、曜子には名前を名乗っていないのだろう。


気持ちはわかる。


イヤ…。というか、入学式に曜子と手つなぎペアを組まされた6年生が曜子のことをよく知らずに名前を名乗ってしまって、


「かすみおねぇちゃーーーーん」


といまだに、顔見るたびにでかでかとした声であいさつしている有様なので、他の6年生は曜子のことは警戒して、それ以降は誰も絶対に名前を名乗らなくなったのである。


いうまでもなく、曜子はいまだに6年2組女子8番鈴原かすみには今だになれなれしく話しかけている。

普通の子なら、入学式の時の手つなぎペアのことなど忘れている。


が曜子は違う。


入学早々から、曜子のことを相手してくれるものなどほとんどいないため、頼りになるのは入学式の時に自分に愛想よく自己紹介してくれた鈴原かすみがそれだといまだに勘違いしているのだ。


まぁ時々ものすごい上級生受けがいい子は、むしろ6年生の方から覚えられていて、そういう子は6年生が卒業するまでずっとかわいがられる。おそらくそれを見て曜子は勘違いしたのであろう。


まぁしまいにゃ見るに見かねたかすみの友人が



「あんたさー。いいかげんにしなよ。」


「かすみとあんたはたまたま入学式でペアになっただけで、友達じゃないわけ。」


「かすみに付きまとうのやめてくれない?」


とまで、言われたと曜子から聞いた。



当たり前だ。



本当に彼女らの言うとおりである。

まぁこんなこともあるから、本来は一度ペアを組んだら一年間ペアを変えないのが通常だが、今年に限っては微妙に変えたりくじ引きにしたりでいろいろ工夫するそうだ。

(ホントほとんど曜子のせいでめんどくせー)


曜子はその日シュンとした顔で帰ってきたので、母が曜子から事情を聴いてみたらそれだったそうだ。


それを母は、


「まぁ今回はついてなかったね。学校にはたっくさん人がいるんだから、もっと素敵なお友達に出会える思うよ。」


みたいな曜子に期待させるようなことを言っていた。


やめてくれ!これ以上被害者を増やすなよ!


入学して2か月もたっていないというのに、曜子は学校で一番有名な嫌われ者だぞ!


この先、どうあがいても曜子のことをまともに相手する者なんか誰もいない思うのに余計なことをするなー!!

って、そもそもうちの母、はっきり言って曜子のあのうるささに何とも思わないのか!?

と思えるぐらいにのんきにノー天気に構えていると思いきや、実はそうでもないのだ。


多分、母は曜子がいろんな人に迷惑をかけていることは知ってはいる。

そりゃご近所が商店街であり、商売人同士のネットワーク情報はイヤでも母の耳に入ってくる。


その情報を誰よりも素早くゲットして一番素早く動いているのはおそらく母であろう。

母は家のため曜子のため、だれもが嫌がるような商店街や時事会役員を進んで立候補したり、だれが何が好きかということを手早く把握して、定期的に何らか個人的に贈り物をしているのだ。


そうすることで周りから、何も言わせないようにしているんだなということは、私は保育園のころから、なんとなく気づいていた。

母のその姿をずっと見てきたせいか、私も大人受けする優等生でいい子を早々と演じ始めていた。

おそらくそうしないと私は、だれからも受け入れてもらえないんじゃないか?とさえ気づいていた。


まぁ兄を見てだけど、私は兄みたいな失敗はしまいと心に誓ったのだ。


現に兄の太郎は誰にも迷惑をかけてはいないものの、性格が無口で引っ込み思案すぎて、友達は本当に少ない。それもその友達もやっぱり兄と同じくおとなしい系や運動音痴系で目立ったグループの子ではないことは明らかにわかる。3月の通学班会では兄も少しは頑張ってくれたが、あの当時の兄は6年生で唯一役職に選ばれなかった存在であった。やっぱり、うちの兄はパッとしない存在なのは確かである。まぁ兄もいい奴ではあるのだけど、どうもいい人どまりで終わりそうなキャラなんだよね。


まぁ、あんな妹を持ってしまったからには自分は兄みたいに妥当に目立たず触らぬ神に祟りなしというやり方もありなのだろうけど、私はいやだ。

私だって楽しくいきたい!自分の人生だもん。

それに通学班でつくったルールみたいに前もって予防しておけば、

あの曜子が起こすめんどくさいトラブルを避けたり、

あの曜子の忌々しいキンキンした声を少しでも聞かずに済むのであれば、

積極的に何らか行動を起こした方がいいかもしれない。


という希望にかけている。



そうそして、うまいこと今でも曜子が私の妹であることは知らない人の方が多い。


というか、通学班内部でも私と曜子が姉妹であることに気づいてない子だっているぐらいだ。



そりゃ私は行動を徹底しているからだ。


まず、朝学校に着いたら、


「解散!」


とたった一言班員に告げて、自分は猛スピードでその場を離れて急いでその場から離れて下駄箱まで行く。

それでなるべく急ぎ足で廊下を歩いて、階段を一気に駆け上がっていく。


朝、ここまでこれば一年生の曜子が階段を上がってくることはまずないので安心できるということだ。

おまけに足の遅いのろまの曜子が、クラスの女子でも毎年リレーの選手に選ばれる私の足に追いつくなんてことはまずない。

おまけに通学班で並ぶ順は班長の私は一番前で一人でいることが多いので、いつでも逃げれるようにできている。ちなみに曜子は真ん中よりやや後ろ目の位置に並ぶので、スタート地点で私とはかなり差はあるのでこれまた私には追い付けない。


そして私は5年生になってからというものの…



「おい星子ー、一緒にサッカーやろうぜー。」


というお誘いが放課では、サッカーだのドッチボールだの、はたまた野球までも、いまだに男子からくるぐらいだが、それを全部断っている。

私は保育園の時のあのころから、外遊びはもうさんざん遊び倒したぐらいに男子顔負けなぐらいに上達していたのだった。


「なんだよー最近の星子付き合い悪いよなー。」


と男子の間では言われているらしい。


あらぬことか、男子の間では「あいつ生理になったんやね?」とまで邪知してくるいやらしい奴もいると栄太から聞いた。が私は断じて!


「そんなではない!!」


と栄太からそれ聞いたときは本気で怒ってしまった。

まるでその時だけは曜子みたいだったと栄太に言われたのがショックだったが、


「ああ星子さー、あいつどうやら今では読書や絵を描くことに夢中らしくてさー。」


と栄太はうまいこと男子たちに言っておいてくれたらしい。

ホント、栄太はいい奴だ。


まぁ確かに5年生になってからというものの、私の行動は変わった。


曜子が絶対に入ってこれないであろう2階にある図書室にこもったり、教室で絵をかいたり、女の子同士で普通におしゃべりしたりでなるべく一階には下りないように気を付けていた。基本1年と2年は2階に入るのは先生の監視下がない限り無理なので、曜子が2階より上のフロアに来ることはまず無理なのである。ましてや5年と6年の教室は3階にある。だから、そうやって曜子と学校で会うことを回避していた。


ここまでこんな風に曜子のことを語ると、私がすごく意地の悪い奴だと思うかもしれないが、これも自分の学校生活を守るために仕方のないことだ。



そして…6月に入ったある日のこと…



「どうした?キンキンちゃん」



どこからとなく、そんな会話が耳に入ってきた。


「おい、キンキン!そりゃねぇだろー?」


どうやら、キンキンという名前の人物がいるらしい。

へぇ~珍しい名前の人がいるもんだ。

一体、そんな変な名前の人物は一体誰だろう?と思った時だった。



「私っ!キンキンって名前じゃないもんっ!

曜子ってちゃんとした名前があるもんっ!そんな変な名前で呼ばないでっ!!」



とあの何年たっても聞きなれないあのキンキン声が聞こえてきた。




この声…




間違いない…





曜子だ……



確かにあのキンキン声なら、そんなあだ名付けられてもおかしくない。

多分お前ら正解だ。

私だって、そのあだ名で呼び続けてやりたいぐらいだ。

私だって、楚のあだ名で曜子のことを読んで、以下に曜子がしゃべるだけでうるさいか自覚させたいぐらいだ。


と思っていた…




「えーお前の名字キンキンって読むじゃないかー。」


と曜子をからかっていた男子の一人がそう言っていた。


「おまえっていうのやめてくれるーーーー?」


ああまた曜子のめんどくさい我儘で、お約束の「お前っていうのやめて!!」だ。

お前なんて言う言い方、いう奴はいうんでいいかげんあきらめろ思うんだけどね。

曜子はそのどーでもいいことをスルー出来ないことがホントめんどくさい!

てか、お前呼ばわりされる方もその程度の低俗な人間なのでは?とさえ思う。そんなにお前呼ばれたくないなら、そのようなご立派な身分になってみろ!思う。お前が我儘すぎなんだわ。としか思えれない。

お前がそんな面倒な奴だから嫌われるんだわ。



ただ、そこで私は「ん?」と思った。


私は逃げようとしていたがその男子の意見を聞いて、なるほどと合点してしまった。


確かに読み方は「ことがね」だけど、別の読み方に直すと「キンキン」とも読める…。




あれ?




そうなると…?



と思ったとたんやっぱり声の出どころは壁越しとはいえ、猛ダッシュでその場を離れないといけないと思った。

私は急いでその場を離れた。


離れながら思った。


てことは私も「琴金」という苗字なので、私までキンキンと呼ばれることになるのか!?

というか琴金なんて苗字。鈴木や佐藤と違って珍名だから、バレるのは時間の問題?


私はまさか自分の名字に対して、そんなあだ名がつけられることは想定外だったことに気がついて、初めて動揺した。



仕方なく、私がたどり着く先は…。



「そればっかりはかばいきれんなー俺も…。」


栄太だった。


「ああ、私せめて鈴木さんか佐藤さんだったらよかったのに…。」


「なんだよーーー佐藤なんて俺の名字じゃないかーーー。」


そう、栄太のフルネームは佐藤栄太だ。



「なんなら、俺んちに嫁に来るか?」



「冗談!」



「あははははーーー俺って冗談で言ってるわーーーw」


まぁそうだろう…。



「じゃなくて、いっそ私、栄太の姉になりたい…。」


「そっちかよw」


ホントこういう時、目立たない苗字は便利だし憧れる。


「でも、どうするんだ?お前?」


「それでも逃げ切るしかないよ。私も椎名ちゃんみたいに国立なり私立なりの小学校受験しなかったんが悪いんだから。」


「まぁな…」



「それはそうとできる限りのサポートは何らかしてくれると助かる」



やっぱりそれだけしか作戦はなかった。







そして運命の日はついに来てしまった。



教室で私は仲のいい女子たちとおしゃべりしている時だった。



”がらっ!”


血相を変えて栄太が教室に入ってきた。


「おい!星子大変だ!キンキンが違反して階段上っていた!!逃げろ!!」


「え?」



「キャーーーーっ!!」


曜子の噂は誰もが知っているがゆえに教室中は大パニックだった。

みんな一斉に逃げ出した。


私も廊下に出て逃げようとしたところ




「お姉ちゃーーーーーーーーあああぁぁぁぁーーーーーーーん」



すでにあの忌々しいキンキン声がフロア中に聞こえていた。



「え?お姉ちゃんって誰っ?」


「え、私知らない。」


「誰?あの子に関わったバカはーーー?」



と逃げながらみんな大パニックだった。



そして…。



「せぇーーーーこおねえちゃぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーん!!!」



さっきよりも大声で名前付きで呼んできた。



終わった…。



もう…この時点で、私の今まで築いてきた地位は全部水の泡となったのであった。

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