キンキンやらかし通学班
あーあやっぱりあいつやらかしやがった。
私はそれでもやるだけのことはやった。
一番最悪なことは回避するために予防線は初日に貼っておいた。
それなのに…あいつはやらかした。
あれは三日前…曜子通学班初日…
「班長の琴金星子です。これから一年生にお伝えしたいことがあります。これからお話しすることをちゃんと聞いていてね。」
と言い終わったとたん。
「はーーーーーい!!!」
曜子だ…。予想通り無駄にでかい声で返事していた。
あーマジ恥ずかしい…
今年の一年生は曜子含めて3人。
曜子以外は男の子だったのが本当に救いだった思う。
これが女の子が一人でもいたら、おそらく曜子の言いなりになるようなかわいそうな子か、曜子のことが嫌いになるかで面倒でしかないことしか見えない。
「では、まず名前を呼ばれた人はこちらに来てください。
秋葉慎一郎くん。加藤 猛くん。中川智哉くん。」
呼ばれた3人は私の隣に並ぶ。
「まず、副班長は加藤猛君です。
私が休んだときとかには班長になってもらう立場ですので、それはしっかり覚えていてください。」
私は猛に挨拶するように目配せすると、猛は一歩前に出て
「副班長加藤猛です。よろしく。」
うまい子と挨拶ができた。
「そしてここにいる彼ら4年生3人ははみんなの指導係です。私一人だと目が行き届かないかと思うので、この3人にサブとして、みんなの交通安全を守っていきたいと思います。
この意見に賛成の方は拍手でお願いします。」
そこで全員から、大きな拍手をされた。もちろん曜子もである。
あと2年生と3年生の紹介もおわり。
最後に1年生の紹介。
「最後に一年生に自己紹介してもらいたいと思います。一年生前へ。」
3人の一年生が私の隣に並ぶ。
ここまではうまい子と曜子も並んでくれたと感心した。
「1年1組 磯崎正雄です。」
1年生のトップバッターであるにもかかわらず、しっかり紹介できた。
すごいなー。
次は曜子だ。
「1ね……………す……。」
なんだあいつ、いつもはキンキンうるさいくせにこういうときだけぶりっ子かよ。
お前は今更ぶりっこしても、最初のあのバカみたいな返事でもうバカ丸出しなんだよ。
あぁなーんも聞こえやしない…。
こういうときこそ、ちゃんといえよ。
でも本人はなぜかにっこにこの満面の笑み。
今まで曜子の曜子に関して一切触れなかったが、曜子は外見だけは色白のすこぶるかわいこちゃん。
こいつ黙ってれさえすれば、だれからも愛されるような完璧な美少女。
それゆえか、うちの父も曜子には、とんでもないほど甘やかしている。
私も曜子が生まれる前までは父から可愛がられていたけど、曜子が生まれてから私の性格がまがっちたせいか、父の興味の対象は全部曜子に注がれるようになった。
「…………………」
ニコニコしながら何も言わないでいる。なんなんだこいつ!!!?
お前がどんなにぶりっこしても化けの皮ハガレンのは時間の問題なんだよ!最初ぐらいはっきり言えや!
とどんなにも言いたかったか…。
しゃーないなー
これは覚悟きめないとだめだな…。
「で?なんだって?もう一回行ってみてくれる?」
とりあえず、耳栓セットして耳を澄ませるふりをした。
「い……2く………よ……で…す……。」
一応、少しはなんとか言っていたみたいなので。
「1年2組の曜子ちゃんらしいです。ハイ拍手」
と適当に言っておいた。
ここであえて苗字はいわずにいた自分に大拍手だ。
というか、曜子がここではっきり自己紹介できなかったことはある意味ラッキーだったといえよう。
何せ私とこいつが兄弟であることがばれずに済むことは好都合でしかない。
「ハイ最後に…」
「1年3組加藤満です。」
言わんとばかりこの子は猛の弟だ。ちなみに3年には姉の光がいる。
加藤家はこの商店街で一番の子だくさん一家だ。
「ハイ一応、無事に自己紹介が終わったので、通学班のルールを説明したいと思います。」
「うちの班では安全第一に考えて、ここから学校に行くまでの時間はおしゃべりは禁止とします。
ただし、私と指導係である4年生は班員に注意するときだけは声を出すことをを許してます。これも安全のためです。」
「えーーー」
案の定曜子が不満の声を出した。
「そこ、声を出さない!」
「私と4年生の指導係の指示に従って、安全を一番に通学に臨みたいと私は考えております。
賛成の方は拍手でお願いします。」
まぁこのルールはやっぱりあまり受けがよくないことはわかってはいるのでさっきよりかは拍手は小さいが、一応曜子含めて全員拍手していたのでOKだろう。
それにこの拍手する様子は3年生の5人に1年生の様子を見ながら、確認してほしいと頼んでおいたので、これも後に役に立つということは計算している。
いうまでもなく曜子はしぶしぶ拍手していたいうのは、目に見えてわかった。
それでもだ…。
なんでこんな結果になるんだ?
やっぱり曜子の考えはホント斜め上を行くのでやってられない。
そう話は今に戻る…。
「ウォーーーウォーーーーウォーーーー♪いぇーーーい♪」
登校中、曜子は歌い始めた。
今はやりの「サバイバーダンス」という曲だ。
「おい!喋るなよ!」
「えー?ようこ喋ってないもん。歌ってるんだもん」
らしい。そう来るか。
「だいたい、智哉君だって喋ってるじゃん。先に喋ったのは智哉君じゃん。曜子なんも悪くないよ。」
「は?」
もうこの時点で智哉はぶちぎれていた。
当たり前だ。
新通学班として活動して一週間もたたないうちにこうやって通学班ルールは破綻したのだった。
「それにさーなに?なんでうちの班だけおしゃべり禁止なの?ねーなんでなんで?」
あーはじまったー。曜子の何でなんでどうして攻撃ー。
「…えっと…。」
あかんこれは、絶対に曜子のペースに飲まれる…。
「あぶないからって言ってなかったっけ?」
そこで思わずフォロー入れたのは3年の明美。
もうこの際3年でもいいからこれはマジでナイスー。
「ねーなんで?どーしておしゃべりしてると危ないの?」
あーまじしつこい
「ねーねーなんでー?」
曜子は今度は明美に問い続けるが
「……」
明美は自分の立場が分かっているせいかこれ以上は何も喋れないと思って黙ってしまった。
「ねーねーなんで?」
の繰り返しだった。
もういい加減イライラしてきて、私のすぐ後ろに歩いている光と奈緒にちょっと止まっててと頼んで、曜子に向かって
「そこうるさい!いいかげん黙りなさい!!」
と叫んだ。
「じゃあ、そういうあんたは何で通学班のルール一つ守れないの!!?」
「え?」
「ねーなんで?なんで?なんで??」
「…あ……。」
「人にはあれだけしつこく言うくせして自分はなんも言えんのか!?」
「……」
「ねぇなんで?なんであなたはルール破ったの!?なんで?なんで?なんで?」
そこへ隣の栄太の班が
「ねぇ先行ってもいい?」
ときた。
のでいったん冷静になって
「どうぞ」
と先にとおした。
「私はね。班の安全のためを考えて作ったルールなの。なんで、あなたにはそれをわかってくれないわけ?シャベルも歌うもダメなわけ?なんでかわかる?」
曜子は首を振った。
その時だった
「きゃっ」
今、一番前にいる奈緒が転んだ。
「大丈夫?奈緒ちゃん…」
私はあわてて前の方の奈緒たちに駆け寄って様子を見てきたが、運がいいことに奈緒がたまたま長ズボンをはいていたので、けがは大したことなくてすんでいたようだ。
私はまた曜子の元に戻って説教しようとしたら、なんといつの間にか曜子が私の真後ろにいてびっくりした。
「ちょっと、なんであんたがここにいるの?」
そしたら、曜子は
あのキンキンした声で
「大丈夫?大丈夫なの?お姉ちゃん??」
奈緒に駆け寄ってあのキンキンした声で耳の近くで叫ばれたので奈緒は頭をくらくらさせていた。
「もう!あんたは余計なことしなくていいの!なんでわからない!?」
ホント余計なことしかやらない!
「奈緒ちゃんが転んだのはあんたのせいよ!あんた一人がルール破ったからこうなったのよ!だいたいシャベルも歌うも声を出す時点でだめ。なんでかわかる?いきなり声出されてびっくりするからよ。それで今みたいに誰かが転んだりしたらどうするの!?」
「………」
こういうときでも曜子はごめんなさいの一言も言えない。
でもまぁ、この年にしてそれはいいにくいのはわかるけど、ここでごめんなさいの一言も言えんようでは、かわいげなくて嫌われるだけだ。
「もういい!あんたは自分の位置に戻って!」
私は曜子が嫌われようがどうだろうがどうでもいい。これからも苦しめばいい思うのでなんも言わない。
もうこのまま、曜子は智哉に任せていこうとした。
「うわぁーーーーーーーーんわんわんわん。うぉーーーーーーーーんわんわんわん。」
曜子はいきなりあの大声で泣き出した。
きつくしかりすぎたかもだが、これぐらい言わないと、曜子には何も響かないので仕方ない。
曜子とペアを組んでいた智哉はすでにイヤそうな顔をしていた。
もう察してか、私も仕方なくいやいやそのあとは曜子とペアになり、曜子の手を引いて学校まで行った。
一応学校まで着いたら、3年生以上を残して校門付近で緊急通学班会議した。
「まぁいろいろごめんね。私はしゃべるなといった意味わかったでしょ?」
と言ったら、一応みんな納得してくれた。
「確かに俺、あいつとはしゃべりたくない…。」
「私も…。」
「あの子めんどくさすぎ…」
といっていた。
「奈緒ちゃんごめんね。あの声で耳の近くでしゃべられるときついよね…。」
奈緒はもう曜子とは絶対に関わりたくないというかんじだった。
「実はね。あの時、隣の班の栄太君がさ、私にわざと転べと言ってきたの。」
「そうだったんだ」
そうか、栄太が手っ取り早く曜子との問題を解決してほしいがためにフォローしてくれたんだな。
こういう時は栄太はホントに役に立つ。
「ごめんね。ホントは別にみんなで今まで通り喋りながらでもいいかと思ってはいたんだけど、私はあの子の声で、みんながびっくりしていきなり転んだり列が乱れたりしたりしないかと危惧してたのね。」
「なるほどなー」
「今日は明美ちゃんが一言しゃべってしまったけど、あれはナイスフォローだったので許すけど、これからはみんなでしゃべらない姿勢でいて、下級生たちにもお手本になってほしいんだ。お願いします。」
私は相手が年下であろうと、絶対に協力してほしい思ったので必死で班のみんなにお願いした。
「なんかよく分かった。」
「これから俺たちも協力するわー。」
「じゃあよろしくね。これから銀座通り商店街1班、3年生以上で曜子対策委員会結成します。」
「OK」
まさか、曜子一人のために3年生にまで協力してもらうとは思わなかった。
これで何とかなればいいかなと思った。通学班一周目だった。




