3話 イチココの村
お,あれが魔物か?
なんというか…著作権が心配だが,青いスライムっぽいのがいる.
うん,スライムだ.Theスライムだ.
ちょっと目とか違うけど,ちょっと不気味な感じだけど,スライムだ.
多分経験値と金が1手に入る雑魚魔物だ.
とはいえ,あの神が作った魔物…油断はできない.
「おぅおぅ,俺の縄張りに人間が踏み入れるとは,いい度胸じゃねぇか」
「お前…話せるのか?」
「ふ,俺が人間の言葉を話すことにビビってるようだな」
「いや,ビビってはない.驚いただけだ」
「まぁ旅の最初は俺だって決まってるからな」
「決まっているのか?たまに最初に羽の生えた黒い悪魔っぽいやつの時もあるんだが」
「いやいや,ドラ◯エといったら俺でしょ?やっぱ」
「おい,魔物が危ない発言をするな!スクエニに怒られるぞ!」
「ドラゴンをクエストする感じの名前だけどさ,やっぱりスライムじゃん?もう代名詞じゃん?俺が主人公と言っても過言ではない感じじゃん?」
いや,過言だ.
しかもゲーム名に”を”を入れただけで大丈夫なのか?
そこは竜を追い求める的な言い回しがあるだろ.
「いやいや,竜って言ってもボスだろ?というかドラゴンってやつがいるじゃん,中ボスみたいな.それに名前に王がつくと1のラスボスになるけどさ.竜よりも特徴的な魔物結構いるぜ?」
まぁ神がやってたゲームの方が名前からイメージしやすいけどさ.
それでも1ではちゃんとドラゴンを倒してるじゃん.
そのために旅してるじゃん.
一応名前通りじゃん.
「無駄話もあれだ…その…そう,時間の無駄だ.ってことで戦うぞ!とりゃー」
この流れで急に襲ってくるのかよ!
剣が…抜けない!
ドッ
くっ,痛い.1ダメージくらい痛い…
「ふん,最初なんて1ダメージでも痛いものだ.まだまだ行くぞ!とりゃー」
あ,抜けた.
えい.
「ぐあぁぁぁ!」
てれれれれー
おぉ,1経験値と銅貨1枚を手に入れた.
というかなぜ魔物が持ってるんだ?
「くっ…この先にあるイチココの村には…行かせんぞ…ガクッ」
あ,消えた.
そうか,この先にイチココっていう村があるのか.
「くっ,次の分かれ道を右に行った先にあるイチココの村には…行かせんぞ…ガクッ」
「くっ,200mほど戻って東にあるイチココの村には…行かせんぞ…ガクッ」
「くっ,ここから逆方向にあるイチココの村には…行かせんぞ…ガクッ」
なぜスライムを倒すと道案内をしてくれるんだ?
そういうシステムなのか?
というか魔物って死んだらすぐに消えるイメージあるんだけど,遺言タイムなるものが存在しているのか.
最初は剣もすぐに抜けなかったが,こう魔物が多いと流石に慣れるな.
剣なんか持ったことなかったが,結構なんとかなるもんだな.
相手がスライムだからか.
おっと…あの魔物は…サボテン?サボテンだ!
「よく来たな.この先はイチココの村がある.だが,通すわけにはいかないな…」
ってか,お前は最初に出てくる敵じゃないだろ!?
「いやいや,最後のファンタジー的なゲームでは有名だぞ?だいたいコラボすると俺がいるんだからな」
確かに,あのゲームをやったことなくてもこいつは知ってるってやつは結構いそうだ.
スクエニ敵に回すようなことしてる気がするんだが…大丈夫なのか?
なんかボロが出る前に倒すとしよう.
「くっ…この俺が…負ける…だと…こんな…序盤に…出てきたのに…ガクッ」
ててててーてーてーてーてっててー
あ,音楽が変わった.
こいつは死ぬ前に情報教えてくれたから遺言タイムは好きなこと言いやがったな.
魔物倒すたびに遺言聞かなきゃいけないシステムなのか?
お,なんかレベルが上がった感じがする.
魔法も覚えたな…
えっと,これは…?
火属性の魔法か.
戦闘に使えるかもしれない.
「よし,チャッカ!」
ボッ…
指先からライター程度の火が!
って,ただのライターじゃねぇか!
どこが戦闘に役立つんだよ!
せいぜいタバコの火がつけられる程度だろ!
…いつか役に立つ時がくるだろうか.
『おいでませ,イチココの村へ』
やっと着いたな,イチココの村.
まぁイチだから最初の村なんだろう.
お,なんかいい匂いがするな…
これは,スパイスの…おや?これは…もしや…またやばい関係なのでは?
「ようこそ,イチココの村へ.ここは様々なスパイスを使ったカレーが有名な村だよ」
おい!イチココって,あれじゃねぇか!
あの10辛まであるカレー屋じゃねぇか!
俺は黄色い看板のゴリラが書いてあるカレー屋の方が好きなんだが…
「いやいや,こんな前世をリスペクトしまくりの世界でいいのかよ!」
おや?なんだか奥の方が騒がしいな.
ちょっと覗いてみよう.
「さぁ,イチココ村名物,大食い大会決勝.残ったのは〜旅人,そして魔法使いのエリックだ!」
「ここまで来たら勝つしかなかろう」
「対するは,この村の〜村長だ!」
「…わしに勝てると…お思いかな?」
いや,村長老人やん.
あんな辛いもの食えるのかよ.
「決勝では,普段食べることができない,30辛みのカレーです!それでは〜試合,開始!」
辛みって,そこ辛だけでよくね?
1辛み2辛みって単位なの?
「おっと!村長が火を吹いてダウンだ!勝者は…エリックだ!」
「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」
村長,無理するなって.
歳には勝てないよ.
しかも…あれ比喩じゃなくて本当に火を吹いてないか?
間違いなく俺のチャッカより火力あるぞ?
「優勝したエリックには,この村に代々伝わる秘伝の杖を差し上げます」
ほぉ,杖が商品だったのか.
それであの旅人魔法使いが参加していたのだな.
これは仲間にするしかないな.
「ほぅ,これはこれは…お主も旅の者か」
「はい,俺は…なんだっけ?そう,レオだ」
「うむ,自分の名前を忘れるとはおかしなやつだな」
まぁさっきつけられたんで.
「俺はエリック,魔法使いだ」
「エリック,よかったら俺と旅をしないか?」
「ふむ,パーティの誘いだな.まぁいいだろう.ちょうど一人では退屈していたところだ」
「ありがとう.それで,エリックは何の魔法が使えるんだ?」
「俺の魔法に興味津々か,しんしんしんなのか.よし,そこまで言うのなら見せてやろう…ラリッタ」
ラリッタ…どんな呪文なんだ?
名前からして混乱系の魔法のようだが.
…何も起きないな.
「失敗ですか?」
「いや,成功だ.レオ,まっすぐ歩いてみろ」
「?あぁ」
あれ?まっすぐ歩けない…これは…
「そう,このラリッタは対象を二日酔いの状態にする魔法だ.1度かければ千鳥足に,2度かければ頭痛が…そして3度かければ…2軒目に向かう」
…確かに混乱系だが…
これは?強いのか?
「そして何度もかければ,もうそれはそれは酒がほしゅうてほしゅうてたまらなくなる.そういう魔法だ」
「流石魔法使い.俺のチャッカよりもいい魔法だ」
「何?チャッカだと?それは伝説の勇者が使えたという魔法.勇者がヘビースモーカーだったため炎属性の魔法を極限まで弱めた魔法を開発したというあのチャッカか!」
…そんな裏設定があったとはな.
なるほど,ヘビースモーカーだったのか.
それなら便利な魔法だな.
まぁ俺は吸わないから使わないだろうけど.
「ふふ,ならば俺もより精進せねばならぬな.勇者の力を持つ者のパーティに入れるとは…光栄だな.後衛だけに」
「…あぁ」
くだらんな.
「ゲラミ」
「はっはっは!ヒッヒッヒー,腹が…痛い,笑いが…止まらない…アハハハ!」
「ゲラミは相手を爆笑の渦に巻き込む…最強呪文だ!」
「ははは…と,とりあえず,解いてください」
「残念ながらこの呪文は…解けない!3分で効果が切れるからそれまで待て」
「ククク…わ,わかりました…ふぅ,やっと収まってきた」
「布団がふっとんだ」
「アッハッハ!やばい,笑いが止まらない!フハハハハ!」
「なんだ,お前は魔王みたいな笑い方をするやつだな」
ふぅ,やっと切れたか.
これは腹筋が鍛えられる魔法だな.
二度とかかりたくないものだ.
「随分お楽しみだったな」
「…お陰様で」
「それで,次はどこへ向かうんだ?」
「そうだな.とりあえず魔物に聞いてみよう」
「むむ?むむむ?魔物が教えてくれるのか?」
「あぁ,俺はそうしてこの村に辿り着いた」
「珍しいこともあるもんだ」
「というかここのカレーは美味しいな.ぜひまた立ち寄ろう」
「ちなみに,イチココの村はチェーン村だから世界各地にあるぞ」
なんだ,チェーン村って.
まぁ,いいか.あの神が作った世界だからな.
「お,魔物だ.あいつに話しかけてみよう」
「あれはーおっと,やばい感じじゃね?え,こんな序盤に,ジョバンニ出てくるやつだったっけー」
「ジョバンニ?」
「そう,ジョバンニ.名前の割に結構強い魔物だ.今の俺たちでは…ひとたまりもないだろう」
「…オマエ…オレに…ナニカヨウカ…」
「えっと,次の行き先を教えて欲しいんだが」
「…フン…オマエガ…ヒガシノ…ゼリヤノムラニ…イコウガ…オレノシッタコトデハナイ」
「次はゼリヤの村みたいですね」
「おぉう,おうおうおう.マジで教えてくれるんだ.やさしー」
「ダガ…オマエラニハ…ココデシンデモラウゾ!」
「エリック!何かいい魔法はないのか!?」
「んーそうだなーそうだなーんーよし,ステルス!」
おぉ,これは透明化の魔法か!
これで無事に逃げられる…あれ,透明になってる…のか?
「エリック…ステルスとは?」
「ふふ,まぁ見ておれ」
エリックが…どこからともなく1リットルの牛乳パックを出して…開けて…飲んで,飲んで,飲んで,うわっ,一気飲みした!それで?ジョバンニに近づいて…牛乳パックを渡して…ん?ジョバンニが走り出したぞ?どこ行ったんだ?
「ふふ,まぁざっとこんなもんだ」
「これは…どういう魔法なんだ?」
「自分が牛乳を1リットル一気飲みをするのと引き換えに,相手にそのゴミを捨てに行かせる魔法だ」
ステルス…すてるス…捨てるス…捨てるッス?
まさか,パシリのように捨てに行かせる魔法か!
「凄い…これならどんな強いやつでもパシらせることができるのか!」
「あぁ…だが,俺は牛乳がそんなに好きではない!」
「なんだと!つまり…そんなに好きではない牛乳を一気飲みとは…代償が大きすぎる…」
「あぁ,それに俺は腹を下しやすい.1日1回が限度だ」
「そんな貴重な魔法をいきなり使う羽目になるとは…」
「しかも,俺は先ほど超激辛のカレーを食べた.つまり…もう…限界だ」
「村に戻ろう.そして…トイレを借りるぞ!」
「…あぁ」
こうして頼もしい仲間が加わり,俺たちは魔王を倒すため,旅に出るのであった.




