第4話
――三智桜歌
慧人さんに一緒に話を聞いて欲しいとお願いされた私は、アサミンとキーに帰るように伝えたのだが、ニビルから知的生命体ウルディンの存在に好奇心を刺激されたらしく全員が二人と話をしたいと言い出した。
そんなわけで、私達は公園のベンチに座ってカ・キリさんと、カ・マリさんからお話を聞くことになった。
「そもそも、お前らどうやって神戸まで移動したんだ?」
慧人さんが一番気になる質問をぶつけてくれる。
日本で普通に電車やバスを利用できる慧人さんと違い、カ・キリさんと、カ・マリさんの外見は犬と見分がつかない。
おまけに、戦闘服を着て、武装しているのだから、明らかに不審人物――いや、不審犬だ。
そんな彼らが電車や飛行機に乗れるとは思えないので、北海道から神戸までどうやって移動したのかは想像もつかない。
「その件だが、いま俺とカ・マリは日本に住んでいる。三智隊が解散したあと慧人が日本に行くのを見たとき思ったんだ。俺達も広い世界を見てみたいってな」
「都合よくPHCアマハラで、日本の警察へ出向する隊員を募集していたから、それに手をあげたの。詳しい場所は機密だけど、私達はいま慧人と比較的近いところに住んでいるのよ」
慧人さんの話によると二人は双子の兄弟で、カ・キリさんがお兄さん、カ・マリさんが妹らしい。
性別にあわせてボイスロイドも男声と女声を選択しているおかげかもしれないが、カ・マリさんの口調はカ・キリさんに比べてとても柔らかい。
「警察ってことは、お前らお所属は対マか?」
「だから機密だって。私と兄さんの所属と住所は守秘義務があって話せないの」
信じられない話だが、私にはカ・マリさんがニコリと笑みを浮かべているように見えた。
あと直接話してはいないが、二人の現在の所属は慧人さんの推測通りで間違いないだろう。
警察にはSATと呼ばれる対凶悪犯罪者用の特殊部隊が組織されていることが有名だが、最近対アクマ用の特殊部隊を立ち上げたという噂がささやかれている。
ニビルでは肉体に魔力器官を宿した野生動物をマモノ。
マモノから奪った魔力器官を素材にして作り上げた魔動兵器を使ってマモノを狩る人間をマモノハンター。
そして、魔動兵器を使って犯罪行為を行う人間はアクマと呼ばれている。
日本は島国だし、ニビルとの唯一の接点であるオントネーゲートも政府の厳重な管理下にあるのでマモノやアクマが侵入して来る可能性はほとんどないが、中南米やアフリカといった政情が不安定な地域ではニビルから不法入国したアクマの存在が社会問題になっている。
確実ではないが、カ・キリさんと、カ・マリさんは、警察がアクマ犯罪に対抗するために立ち上げた特殊部隊に参加している。
私はギュッと気を引き締める。
警察の特殊部隊に所属している人からの頼まれる仕事だ、どんな危険な仕事を頼まれるのか想像もつかない。
「それで、慧人に頼みたい仕事なんだが――ニンテンドウXなるべくたくさん、ウルクに持ち込んで会計ギルド主催のオークションに出して欲しい」
カ・キリさんから頼まれた仕事は予想の斜め上の内容だった。
「たくさんって、どのくらいだよ?」
「目標は150台。最低でも100台は欲しいそうだ。あと、ゲームソフトもなるべくたくさん」
「100か、多いなあ」
慧人さんが思わず天を仰ぐ、晴天の霹靂のような話だがニンテンドウXを100台以上用意するなんて普通の中学生には途方もない話だ。
「調達資金が足りないようなら、俺とカ・マリが無利子で融資する。正確には、会社が直接融資できないから俺がポケットマネーを一時的に融資して会社が補填する形だな」
「まあ調達資金を融資してもらえるなら何とかなるか。わかった、引き受けるよ。あと、住所が機密ならせめてプライベートな連絡先教えろ」
そういうと、慧人さんと、カ・キリさん、カ・マリさんの3人はパルスフォンを取り出して連絡先の交換を始める。
3人とも使っている機種がカメラやスピーカーを全てオミットした完全防水のZショック三型なのが印象的だ。
「感謝する。俺の方からゲーム機の件、慧人が引き受けてくれたって会社に報告しておくよ」
「しかし、何があったら俺にゲーム機の仕入れを頼むことになるんだよ?」
「別に大したことじゃない。先週、定期便がマモノに襲われて、運んでいたニンテンドウX300台が灰になったんだ」
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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