第2話
――三智慧人
今日は6月最後の日曜日。
この日、三智家に、きい、亜沙美、奏君がやってきて、来月頭に控えた期末テストに向けた勉強会を開くことになった。
勉強会の主な目的は、俺ときいと奏君が、桜歌と亜沙美に勉強を教えてもらうこと。
ハッキリ言って毎日学校に早出して勉強している桜歌と亜沙美に勉強会に参加するメリットはないが、二人は優しいのでこころよく先生役を引き受けてくれた。
こうしてタジ中で最も頭のいい二人の指導を受けながら勉強していたのだが、勉強の合間に雑談していたときに奏君から不意に質問された。
「慧人先輩は、マモノハンター2以外になにか遊んでるゲームありますか?」
「多分、一番遊んでるゲームはポケモンだと思う。PMCアマハラに居たときは夕飯食った後によく仲間と対戦してた」
PMCアマハラの仲間に限らず、マモノハンターは勝負事が好きな人間が多いので、自由時間になると食器を片付けた食堂で、将棋、トランプ、ゲームと、あちこちで勝負が繰り広げられていた。
特にポケモンは1回の対戦に要する時間が短いのと、ウルクでもキャラクター人気が高かったので対戦ゲームの中では一番人気があったと思う。
「ほほう……一緒に暮らし始めて2か月経ちましたが、慧人さんがポケモンをたしなんでいたとは初耳ですね」
俺がポケモンで遊んだことがあると聞いて、隣に座っていた恵子は目を細めて不敵な笑みを浮かべる。
「聞かれなかったからな。でも、俺の私物にニンテンドウXがあるのは知ってるだろ」
「それは、まあ……慧人さん、よかったら息抜きにポケモン対戦やってみませんか? 私もポケモン対戦にはちょっと自信があるんですよ」
そんな感じで、桜歌に誘われてポケモン対戦をすることになった。
この2か月で桜歌が頭のイカレタ天才だということは思い知らされていたので、なんとなく強そうだと思っていたが、実際に対戦してみると想像の10倍くらい強かった。
「勝ちましたッ!」
2体残しの完全勝利をあげた桜歌が、ゲーム機を片手に両手を高く突き上げる。
「桜歌、お前普段ゲームなんてほとんどやらないのに強すぎだろ」
俺は三智家に着て2か月しか経っていないが、桜歌の日常は、家事、勉強、和裁でほとんどの時間が占められていて、ゲーム機を触っている姿を見たことはほとんどない。
それなのに目の前で圧倒的な強さを見せつけられたのだからワケがわからない。
「最近はあまり遊んでいませんが、昔取った杵柄って奴ですね」
「小学校の頃は、僕と姉さんと桜歌さんの3人でよくポケモン対戦をやっていたんです。もっとも、僕は桜歌さんにボコボコにされた記憶しかありません。ポケモンの選択や基本戦術は教科書通りなんだけど、とにかく行動予測の精度が高くて必ず裏をかかれるんです」
奏君が小さくため息を吐いきながら、桜歌の強さの秘密を教えてくれる。
「奏君もボコボコか……確かに俺の動きも完璧に読まれていたからな」
さっきの勝負は初手の読み合いで負けた時点で、ほぼ勝負はついていたと思う。
「まっ、桜歌に知恵比べで勝つのはシンドイよ。あたしも小学校の頃はよくポケモンで対戦したけど、10回に1回勝つのがやっとだったからね」
「むしろ、きいは、よく1回勝てたな」
奏君がボコボコなら、きいは桜歌との知恵比べなんて投げてしまいそうだが、思いのほかしぶとく食らいついていたみたいだ。
「桜歌に勝ちたいなら『カイリュウ』がオススメだよ。ステ振りで戦闘スタイルが変わるポケモンなら桜歌の行動予測をかわせるから」
「きいさんは、5種類の『カイリュウ』を用意して対戦の度に入れ替るので、さすがに行動を予測しきれなかったです」
「そこまでやって勝率1割」
小学校の頃から桜歌の頭の良さはバケモノレベルだったようだ。
「よく付き合ったわね。そこまで勝てないとイヤにならない?」
亜沙美もため息交じりにツッコミを入れる。
「私は逆だな。バケモノみたいに強い桜歌にどうやって勝つか、それを考えるのが一番面白いんだよ」
きいのチャレンジャー気質は、小学生の頃から変わらない筋金入りのようだ。
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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