表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/49

第25話

――関谷亜沙美


 スゥゥゥゥ……ハァァァァ……。

 緊張を少しでも和らげるために深呼吸を繰り返す。

 私はいま星華高校の正門の側まで来ていた。

 身に着けているのは、香織さんから借りた星華高校の制服。

 星華高校の夏服は真っ白なワンピースで腰回りを革のベルトでまとめている。

 兵庫県内でも制服がかわいい学校として有名で、この制服着るために受験をする女子も少なくない。


「しかし、中高一貫の女子高だけあってセキュリティにはけっこう気を使っているなあ」


 市立で貧乏なタジ中とは違い、有名私立の星華高校は、不審者が容易に入り込めないように正門に駅の改札機に似た形のセキュリティゲートが設置されていた。

 ゲート自体は香織さんから身分証とカードキーを借りているので突破できると思うが、厄介なのはゲートの目と鼻の先に守衛所があり、そこで警備員がゲートを乗り越えてくる不審者がいないか監視してることだ。

 人間の記憶はあてにならないとよく言われるが、同時に想像以上に優秀な面もあって、警備員のような全校生徒の顔を毎日見るような職業に就いている人は、学校に通う数百人の生徒と教職員の名前は知らなくても、全員の顔や体格をうっすらと覚えている。

 もし私が何も考えずに制服だけ借りて潜入しようとしたら、間違いなく警備員に見覚えのない生徒が来たと思われて呼び止められるだろう。

 一応、対策はしている。

 私は容姿を身分証の顔写真に似せるために、ウイッグを被って前髪で目が隠れるヘアスタイルを再現し、コンシーラーで鼻周りのソバカスも再現した。


「ラス、メッセージ。オッカ、まだ待機なの? いい加減待ちくたびれたんだけど」

【最初に説明したとおり、慧人さんが警備員さんに呼びとめられるまで待ってください。不審者の対応をしているときなら警備員さんの注意も甘くなるはずです】


 変装で警備員に身分証の提示を求められても誤魔化せるようにしたうえで、さらに桜理さんは私のボディガード兼潜入の援護役として慧人君を同行させることを提案してくれた。

 具体的には不良生徒の格好をした慧人君が星華高校の校門の前に立って、誰かの出待ちをしているフリをして待機し、警備員さんが慧人君を注意しに来たタイミングを見計らって学校に潜入するという作戦だ。

 そんなわけで、私は星華高校の校門の側まで来たものの、さっきから電柱の影に隠れて不良生徒に変装した慧人君の様子を伺っていた。

 ちなみに、慧人君のファッションは板場君達の格好を参考にして私がコーディネートした。

 具体的には、慧人君が着てもダボダボになるサイズのロゴ付きTシャツの上から学ランを羽織り、ズボンは黒のチノパン、靴も彼らが好んで身に着けるコンバースのスニーカーを履いている。

 さらに、頭髪をウイッグで赤毛にして、ネックレス代わりに慧人君が私物で持っていたドックタグを首から下げてもらった。

 体格のいい慧人君が、学ランのボタンを全て外してTシャツにプリントされた髑髏のロゴを見せつけるような着こなしをしていると、誰が見ても粋がった不良少年だと思うはずだ。

 コーディネートを担当した私がいうのも変な話だが、慧人君を着せ替えたあと、普段とあまりにも印象が違うので私と桜歌は思わず笑ってしまった。

 こうして不良少年に変装した慧人君は、誰かを待っているかのよう星華高校の正門前に立ち、ときどき自分の姿を見せつけるようにセキュリティゲートの前を往復する。

 そんな不審な行動を10分くらい続けていると、警備員が守衛所から出てきて慧人君に声をかける。


「君。さっきから校門の前をウロウロしてるけど、この学校の生徒さんに用があるのかな?」

「あーなんだよ、いきなり!? ここは公道だろ? 公道歩いてなにが悪いんだよ」


 慧人君は、私が潜入する隙を作るために意図的に警備員に反抗的な態度を見せる。

 このチャンスを逃す手はない。

 私は電柱の影から飛び出し、早歩きで正門に向かう。

 私が正門前にたどり着くと、警備員さんは私が怪しい不良少年に絡まれないように、慧人君と私の間に割って入って壁になり、早く中に入れと言わんばかりに手を振ってくれる。


「いつもおつかれさまですッ!」


 私は心の中で警備員さんに謝りながら、タッチパネルにカードキーを押し当てて星華高校の門をくぐった。

校舎に入ったところでパルスフォンが着信音に設定している音楽を奏で始める。

 桜歌から着信が入ったようなので、私はラスに命じる。


「ラス。音声通話を許可。イヤホンマイク起動」

「亜沙美さん。無事学校に潜入できましたか?」


 通話を許可すると、桜歌が不安そうな声音で状況を聞いてくる。


「無事潜入できたよ。慧人君が注意を引いてくれたから助かった。警備員さん、私が慧人君に絡まれないように庇ってくれたからチェックが甘くなったんだと思う」

「その対応から察するに警備員さんはけっこうプロ意識の高い方みたいなので、慧人君に陽動を頼んで正解でしたね」


 桜歌の言う通り、慧人君の陽動が無ければ、見覚えが無い生徒が日曜日に学校に来るのを不審に思って呼び止められていたかもしれない。


「いま、慧人さんから校門前から離脱したと連絡がありました。慧人さんも警備員さんもケガはしていないので安心してください」

「警備員の人って、なんで居るのか不思議だったけど。生徒を守るためにシッカリ仕事してるんだね」

「私、次、登校したときはちゃんと警備員さんに、お礼を言うことにします」


 どうやら桜歌はスピーカーモードで話していたようで、警備員の話を聞いて香織さんがコメントを挟んでくれる。


挿絵(By みてみん)

ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。


【読者の皆様へのお願い】 下にあるポイント評価(星マーク)は、作品のランキングに直結する非常に大きな力になります。 「面白かった」「今後に期待」と思っていただけましたら、応援のつもりで星をタップしていただけると嬉しいです!


頂いた評価や感想を糧に、さらに面白い物語を届けていけるよう頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ