第16話
――関谷亜沙美
思い返してみると中学に入ったばかりの私はツマラナイ女だったと思う。
内向的で、いつもオドオドしていて、口数も少なく、いつもうつむいていた。
だから目を付けられたのだろう。
相手は同じクラスの一軍女子だった。
容姿も派手で、野球部に彼氏がいて、いつも大声でゲラゲラ笑っている彼女達にとって、根暗で地味なクラスメートは目障りな存在だったのだろう。
最初は教科書に落書きをされた。
ブスとか、ノロマとか、心無い言葉が殴り書きされて私の心はすごく傷ついた。
次第にクラス中の女子から無視されるようになり。
不意に突き飛ばされる。
トイレに入ったら上から水をかけられる。
そんな嫌がらせを頻繁に受けるようになった。
夏前から始まった嫌がらせは、夏休みが終わって2学期になっても続き、私は限界を迎えた。
9月の半ば、私は授業中に教室の窓枠によじ登った。
それは私の復讐だった。
クラスの全員が見ている中で、窓から飛び降りて死ぬ。
「私を見ろッ! 私の死に様、お前らに見せつけてやるッ!」
そうタンカを切って、私は窓から飛び降りた。
1年の教室は校舎の3階で頭から落ちれば死ねると私は思った。
でも――私は死ねなかった。
地面に落下する寸前、私は強い力で横方向に突き飛ばされ、さらに突き飛ばされた先で待ち構えていた女の子に激突した。
正確には彼女は墜落する私を受け止めてくれたのだ。
私を救ったのは、偶然体育の授業でグラウンドに出ていた桜歌ときいだった。
彼女達は校舎の3階で自殺未遂を図っている私を見つけると、迷わず落下地点に駆け寄り。
落下する私をきいが突き飛ばすことで落下のダメージを軽減して、桜歌が私を受け止めることで助けようと作戦を立てたのだ。
彼女達の作戦は成功し、私は一命をとりとめた。
しかし、命の代償は大きかった。
私は頸椎を損傷してベッドから一か月以上起き上がることもできないほどの重傷を負い。
桜歌も右腕と肋骨の亀裂骨折で全治一か月の重傷を負った。
同じ病院に入院した桜歌は、私の病室に毎日話をしに来てくれた。
私は桜歌に大ケガをさせてしまったことが悲しくて泣いて謝ったが、彼女は「亜沙美さんの命が助かったんだから、この程度は必要経費です」と笑って許してくれた。
それから桜歌は、私の身に何が起こったのかを親身になって聞いてくれた。
たどたどしい口調で、私がクラスでいじめられていたことを話すと、桜歌は「お母さんは弁護士なので、亜沙美さんを助けることが出来ると思います」と言ってくれた。
そして3か月後、退院した私が学校に戻ったときには全てが終わっていた。
いじめの首謀者だったクラスの一軍女子は、私が復学する前に全員学校から逃げるように転校していた。
桜歌は私が死んで復讐するしかないと思った敵を簡単にやっつけてしまった。
彼女の強さに感動した私は思わず叫んでいた。
「私、桜歌みたいに強くなりたいッ!」
私には、強くて、頭が良くて、優しい桜歌が決して届くことのない輝く星のように見えた。
でも、憧れるだけの私に桜歌はこう答えた。
「亜沙美さんが本気で私みたいになりたいというならお手伝いします。
私は勉強が得意です。あと料理が好きで、裁縫好きです。
そういう、私の好きなことや、得意なことを、亜沙美さんに教えます。
考えてみてください。
亜沙美さんが、私が好きなことや得意なことを全部できるようになれば、亜沙美さんは私と同じくらい強いことになりませんか?」
こうして桜歌の行動を模倣するすることが私のライフワークとなった。
それは現在も続いている。
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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