第一章10 杖職人の町 エオタルム
ーーーカズ・・・
ーーーカズキ・・・
「おい、カズキ起きろ、朝だ。」
「う、うーん・・・」
カズキが目を覚ますと、ユイが顔を覗きこんでいた。どうやら昨日の夜、草むらで夜空を眺めたまま眠ってしまったらしい。
「もう、そんなところで寝てるなんて、信じられないわ!ほら、行くわよ!」
四人は次の目的地に向け歩みを進めた。しばらく歩くと町が見えてきた。小さな町のようだ。道の看板には『この先、杖職人の町エオタルム』と書いてあった。
「杖職人の町かあ、いい杖が手に入りそうだな。」
「そうね、ちょうど新しい杖が欲しかったところなのよ。行ってみましょ!」
四人は町に入った。杖職人の町の名の通り、並んでいる出店はほとんどが杖専門店だ。皆、『この杖はどこどこ名産の良質な木を使用してます!』とか、『この杖は何とかの魔法が込められてます!』などと自分の杖のすごさをアピールしていた。
カテリナは一つ一つの店を回り、杖を吟味しては、『これは色がイマイチね。』だの、『これは形が気に入らないわ。』だのと難癖をつけ、まるで上級魔法使いのようなこだわりぶりだった。使えるのは中級魔法止まりだというのに。
「何かどれもしっくりこないわねー。」
「なあ、見た目も大事だけどさ、まずは機能性を重視して今のより少しスペックが高くて扱いやすい『上質の杖』あたりでいいんじゃないか?」
「イヤよ、あんなの大量生産されてるどこにでも売ってる普通の杖じゃない。全然かわいくないわ。」
「そんなことないぞ。シンプルイズベストという言葉がある。真の上級者は、逆に奇抜さや無駄のないシンプルなものを選ぶもんだ。」
「うるさい!」
カテリナはぴしゃりと言い放った。くそっ、もういい、勝手にしろ!
と、その時一人の杖職人の老人が声をかけてきた。
「やあやあそこのお嬢さん、杖をお探しかい?」
「そうよ。強くてかわいい杖ある?」
「あるともあるとも。ほれ。」
そう言って老人が差し出したのは、ピンクの棒の先に星形の飾りがついており、白い羽がついた、いかにも魔法少女が使っているような杖だった。
「これかわいいわね!」
「いやいやちょっと待て!世界観おかしくね?中世異世界ファンタジー設定どこ行った?つかこれ3歳くらいの女の子がよく遊んでるやつだろ!」
「うるさいわね、世界観なんてどうだっていいじゃない!女の子は何歳になっても魔法少女になりたいのよ!」
「ちなみにこの杖は10万Gじゃ。」
「たけーよ!」
その後もその杖を欲しがるカテリナとカズキの攻防は15分くらい続いたが、なんとかカテリナを説得し、上質の杖を買わせることに成功した。カテリナは非常に不満そうだったが、カズキは自分のファインプレーっぷりに大満足だった。マリーとユイは店の外でソフトクリームを食べていた。
「おかえりなさーい。」とマリー。
「長かったな。」とユイ。
カズキは休日に子供たちを大型ショッピングセンターに連れてきた父親みたいな気分だった。町に来て一時間くらいしか経ってないのにすごい疲れた。
さて、カテリナの杖も買えたことだし、情報収集といくか。カズキはすれ違った冒険者に話しかけた。
「あの、ちょっとすみません。俺たちこれから沼地に向かおうと思ってるんですが、そこのボスってどんな奴か知ってますか?」
「ああ、知ってるぜ。何でも恐ろしい魔法を使う魔女で、人をカエルに変えちまうらしい。人血のスープを飲んでるとかいう噂もある。この町の職人たちも、杖に使う木を取りに沼地に行き、何人かは行方不明になってるからな。魔女は沼地の奥にある屋敷に住んでいると聞く。もし行くなら、用心することだな。」
「とんだイカレ野郎じゃねえか!」
「あ、あと、『熱風』と『冷風』」の魔法を覚えていくといい。必ず役に立つ。」
「分かった。ありがとう!」
「ふざけた魔女ね。そんな奴私の魔法で豚に変えてやるわ!」
カテリナが言った。いやそんな魔法使えないだろお前。
「とにかく、魔術書ショップに行って『熱風』と『冷風』の魔術書を買いに行こう。この魔法なら中級魔法だからカテリナでも使えるはずだ。俺はもう習得してるから、カテリナがちゃんと使えるようになるまで練習してから沼地に行こう。」
「何よ、奴隷のくせに上から目線ね。はいはい私はどうせ中級者ですよーだ。」
「拗ねるな。」
四人は魔術書ショップへと向かった。




