第一章11 カエル親衛隊
カテリナに魔法を習得させたのち、四人はエオタルムを出発し、沼地に向かった。30分ほど歩くと、足元がだんだんとぬかるんできて、空気も湿っぽくなってきた。所々にマングローブのような木が見られるようになった。沼地に入ったらしい。
「何かあります。」
マリーが指をさした。見ると看板が立っていた。『注意!この先魔女の領域につき、会いたくなくば引き返せ。』と書いてある。
「いよいよだな。」
カズキは顔を強張らせた。霧もかなり濃くなっていた。この視界の悪さでは、敵の発見が遅れる可能性がある。用心しなければ。
と、しばらく沼地を進んだところで、ユイが言った。
「待て、この先に何かいる。」
ユイのスキルは半径100メートル以内の敵の位置を察知する。このような視界が悪い状況では非常に重宝するスキルだ。
「敵か?」
「まだよく分からない。複数の生命体がこちらに向かっている。」
カズキたちは武器を構え、少しずつ慎重に進んだ。
「あと50メートル。」
まだ何も見えない。
「あと25メートル。」
進行方向に複数の影が見えてきた。四人は臨戦態勢をとりつつ、少しずつ影に近づいていく。そして、ついにその正体が明らかになった。
それは、身長一メートルほどの二足歩行するアオガエルだった。服を着て、武装していた。剣士の恰好をしているものもいれば、木こりの恰好をしているものもいた。
「ねえ、こいつらって・・・。」
カテリナが言った。
「ああ、さっき町の人が、魔女は人間をカエルに変えると言っていた。こいつら、カエルに変えられた元人間だ。」
すると、カエルの一人がしゃべった。
「何だお前ら。ここは魔女様の領域だぜ。用が無いなら帰んな。それともお前らも魔女様のファンクラブに入りに来たのか?」
「ファンクラブ?」
「おうよ。俺たちは魔女様のファンクラブの一員よ。魔女様はとてもお美しく、慈悲深いお方だ。俺らみたいなオッサンでも愛してくれるんだ。でも人間のままじゃだめだ。魔女様が大好きなカエルの姿になって初めて愛してもらえるんだ。」
「てことは、お前ら自分から進んでカエルになったのか?」
「ああ、そうさ。魔女様に出会った者はみな、魔女様の美貌に惚れ込んじまうのさ。」
「魔女が人血スープを飲んでるってのは本当なのか?」
「いや、そんなものは飲まねえ。ただ、魔女様は血のように赤いブラッドトマトのスープが大好きでな。きっとそれのことだろう。」
カズキは拍子抜けした。魔女がさぞかし恐ろしい奴だと思っていたのが、まさかこんな真相だったとは。
「俺たち、今からその魔女を倒しに行くんだが。」
「何だと!?そんなことはさせないぞ!」
カエルたちは武器を構え、敵意を剥き出しにした。逆鱗に触れてしまったようだ。もう対話の余地は無いだろう。
「いいか、みんな。あいつらは元人間だ。魔女を倒せば元通りになるかもしれない。峰打ちでいこう。」
「うん。」
三人も武器を構えた。
「魔女様を守れー!」
「おーっ!」
カエルたちが襲い掛かってきた。カズキたちは応戦した。元人間のカエルたちは戦闘能力はやはり落ちているらしく、パワーこそ無かったが、移動スピードとジャンプ力が格段に向上しており、カズキたちの攻撃を素早くかわした。
「くそっ!ピョンピョンはねやがって!攻撃が当たりゃあしねえ。」
「へへ!どこ狙ってやがる!」
カズキたちは息を切らせた。このままやみくもに攻撃しても体力を消耗するだけだ。一体どうすれば・・・。
「相手はカエル・・・そうか、分かったぞ!」
ユイが言った。
「何かいい策があるのか?」
「カズキ、カテリナ、こいつらに『熱風』の魔法を使え!」
「あ、ああ、分かった!」
「分かったわ。」
そう言って、二人はカエルたちに魔法を使った。
「熱風!」
二人が叫ぶと、前方に空気の渦が発生し、そこから熱風が吹き出した。
「ぐあっ!」
すると、カエルたちは急に動きが鈍くなり、苦しそうな顔をした。
「カエルは乾燥に弱い。範囲魔法である熱風は回避するのは難しい。この魔法はここで使うんだ。」
「ナイスだ!ユイ!」
マリーとユイは、動きが鈍くなったカエルたちに次々と手刀をくらわせた。カエルたちはバタバタと倒れていった。素晴らしい連携だった。やっとパーティらしくなってきたじゃないか。
「よっしゃー!制圧完了!」
四人はさらに奥の魔女の領域へと進んだ。




