78 二通目の脅迫状
その時、百合菜の部屋のドアをノックする音が響いた。百合菜ははっとそちらの方向を見た。そして、金縛りにあったように体が固まった。背筋がぞおっと冷たくなって、何かが這い上ってくるように薄気味悪かった。
(誰なの……?)
百合菜は震えた。しかし、すぐにある声が響いた。
「百合菜っ! 私、八重だよ」
八重の声だった。
百合菜は一気に金縛りが解けて、ドアの方に走っていった。そして、解鍵してドアを開いた。廊下には八重と由依が立っていた。百合菜は、二人に抱きつきたい衝動にかられた。しかし、八重の手に握りしめられている紙に気づくと、はっと息を呑んだ。
「れ、例の脅迫状がまた来たんだよ……」
八重は、震えながら、その紙を百合菜に見せた。そこには例の無機質な活字が並んでいた。
*
キョウBTヲコロシタ。コレガショウコダ。モウイチドツタエル。コレイジョウシウンガクエンノナナフシギニツイテシラベタラ、オマエタチモアノBTノヨウニナル。
*
「これは、殺人犯からの……」
百合菜はあまりの恐ろしさに叫んだ。
八重は深く頷いた。しかし、それと同時に八重には疑問もあった。BTとは何のことだろうか。八重には、それがひどく気になった。殺された淀川多恵のことだろうか。そう思うと、疑問を口にしたくてたまらなくなった。
「でも、BTってなんのことだろう……」
「淀川さんのことでしょ、他に何があるの」
と百合菜はいくぶん興奮した口調で言った。それは百合菜に珍しく、ため口であったから、八重は驚いてひるんだ。
由依は、不機嫌そうな顔をした。
「そんなん、なんだっていいよ。でもこれで分かったんじゃん。脅迫状を送ってきた人物と殺人を犯した人物は同一人物。本当に私たち、殺されちゃうかもしれないってことがさ……」
それから、由依は百合菜の部屋に入ってきた。由依はこんな時でも、余裕ぶっているように見えた。口元はわずかににやけているし、鼻歌も歌っている。そして、ベッドにどっかと座った。
「どうすんの。このこと、警察に伝えるの?」
八重は、ぽんっと手を叩くと、あることを提案した。
「よしっ、伝えよう。実は、祐介さんと顔なじみの刑事さんがいるんだ」
「誰?」
「ネゴロウさんだよ?」
「いや、ネンゴロウさんって誰……」
「ほら、事情聴取した人」
「若い方? でかい方?」
「でかい方」
「あ、あの人……」
由依は、なんと言ってよいか分からない顔をしている。あの人ってネンゴロウって言うんだ……と思っていた。




