45 三人集合
八重と百合菜は、深い森の中を闇雲に突き進んでいた。二人は、由依がどちらの方向に向かったのか分からなかったので、ただ足場の良い場所を選びつつ、森の中を突き進むより他にしようがなかった。実際、何の当てもなかった。
そうこうしているうち、二人は急な下り坂に行き当たった。その眼下の深い底の方に、清らかな小川が流れているのを二人は発見した。こうなると人間の行動パターンは大体決まっていて、何もない森を突き進むのをやめて、とりあえず小川に向かうのであった。このあたりは由依と同じ行動だった。
この二人の判断は、上手くいった。ふたりが小川のほとりに飛び出すとすぐに、砂利の上に横たわった由依の姿を見つけたのである。
「由依!」
八重は悲痛な叫びを上げて、駆け寄った。まだ出会って一月ばかりのこのルームメイトだが、八重には昔から共に過ごしてきた親友のように思えてならなかった。その親友が死んでしまったのかと思って、八重の胸は張り裂けるように痛んだ。
しかし、それは八重の完全な思い過ごしだった。由依は見たところ何の怪我もしていなかったし、体を何度か揺すると、彼女はすぐに目を覚ましたのだ。
「や、八重……? どうしたの?」
うとうとした眼つきを彷徨わせながら、由依は、八重を見上げた。八重はそれを見るや、安心を行き過ぎて、ちょっと拍子抜けした。
「なんだ、無事なの……」
「なんだってなに……無事じゃ嫌だった?」
由依は、状況が把握できていないような顔をしていたが、八重の言葉に対して、ちょっと不満げに言った。
「いや、そんなことはないけどさ。で……一体、あれから何があったの?」
と八重は、その話をはぐらかすようにしながら、由依に状況の説明を要求した。由依は寝起きであったから(実際には、気を失っていたのだけど)、すぐには細かいことを思い出せない様子であった。
由依は頭を抱えて、ぼんやりと瞑想にふけってから、少しずつ自分の頭を整理していった。そして、記憶が蘇ってきたらしく、由依はたどたどしい口調で、こんなことを話し始めた。
「私が、犯人を追いかけていると……犯人を見失って……その後、この小川に辿り着いたんだよ」
「そうなんだ」
「それで、ここで後ろから襲われたんだよ」
「誰に?」
「分かんない……」
「犯人の顔は見なかったの?」
「見なかったね……」
見ていれば、犯人の尻尾を掴めたのに、と八重は残念に思った。しかし、気になることはまだある。
「それで? 犯人に襲われて、どうして由依、今生きてるの?」
その問いに、由依ははっきりと答えられないらしく、
「さあ……ビビったんじゃない?」
とだけ、ぼそりと述べた。
その時、後ろから声が聞こえた。
「八重ちゃん、由依ちゃん……」
振り返ると百合菜が少しおろおろしていた。
「とにかく、一刻も早くこの場から離れましょう」
と、百合菜がたまらなそうに叫んだので、由依は頭を抱えてよろよろと立ち上がった。そして、ちょっと不満げに一言。
「分かってるよ……」




