16 文芸部の人々
柏崎先輩が引き戸を開けると、すでに室内には部員たちの姿があった。
四角い教室のような会議室には、長方形のテーブルがありホワイトボードもある。右の壁には二つの扉があって、一つは図書室に通じ、もう一つは書庫に通じているようだった。
柏崎先輩は一同の姿を眺めまわし、五人しかいないことがひどく気になったらしく、
「なんだ、これだけか……」
と呟くと、八重を自分の近くの席に座らせた。
「ほら、ノート……」
柏崎先輩は、文芸部のノートをテーブルの向こう側に座っている男子生徒に手渡した。
八重はつられて、斜め前のその男子生徒を見た。
黒ぶちの眼鏡をかけた色白な男子生徒が、うつむいたまま、いかにも繊細そうな指付きでそのノートをめくっている。
その男子生徒は、つやのある黒髪を無造作に下ろしている。前髪が眉毛の下まで届いていたせいか、よく顔が見えなかったが、痩せた頬の色白なのが印象的だった。
この人物も、なかなか綺麗な顔つきをしているのだが、人を容易に寄せ付けない繊細さが感じられて、八重はどうも話しかけられそうもなかった。
「古宮、今日、これだけしかいないのか?」
柏崎先輩が、不満げにあたりを見回して、その色白な男子生徒に語りかけた。
古宮と呼ばれた男子生徒は顔を上げた。ふたつの目が鋭く光っているように見えた。
「これで、全員のようだね」
と呟くと、またノートに目を移した。
(とても神経質な人かもしれない……)
八重はそう思って、柏崎先輩をちらりと見ると、
「ああ、彼は二年の古宮政幸だよ」
と先輩は、すぐさま答えてくれた。そして付け足すように、
「まだ、覚えられていないだろ?」
と言った。
「はい。まだ全然なんです」
「文芸部員は、今年十五人だ。しかし、幽霊部員もいるから、実質は十人程度だと思ってくれ。それどころか、こうして、ミーティングで呼び出しても、いつも、五、六人しか集まらない……俺たちは烏合の衆だからな」
柏崎先輩が、なんとなく悲しげな顔をして言うので、八重は無性にあわれを感じた。そしてなにか労わりの言葉をかけようと思った。
「あ、あの、柏崎先輩……」
「どうした?」
いざとなると思い切り緊張して、言葉がすんなりと出なかった。代わりに先輩にさっぱりした顔で聞き返されたので、八重はひるんだ。
「いえ……」
「どうした、なんか、あるなら言いなよ」
「ああ、その……」
タイミングを逃したにもかかわらす、しつこく柏崎先輩が尋ねてくるので、
「なんか、その、もう……いいんです」
と言って、思わず顔を背けた。会議室に変な空気が流れた。
「なんか、俺、悪いことしたかな……」
極限まで空気が変になったところで、引き戸が開いて部長が入ってきた。
「夏目部長!」
柏崎先輩の左隣に座っている、眼鏡をかけた文学少女が声を上げた。




