↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
49/50

49.君のためになら喜んで

「あの、よろしいのですか? まだ公式には皇太子様でも、実質王位継承一位になったということは……」


「ちゃんと許可をとったのだからあちらの顔も立つ。それよりも……」


 珍しく余裕のない表情でこちらを見る。


「?」


「妻……なのだな」


「〜〜〜〜っ!!」


 顔を真っ赤に、照れたようにその言葉を口に出され、こちらまで恥ずかしくなる。


 あんなに堂々と妻も同然っておっしゃっていたのに。


「はい。宜しくお願いしますわ……ええと、あなた?」


「っ!?」


 えっ!? そんな下を向いて……まさか、間違えましたかしら……


 急に下を向く様子に、目線を外され、何が悪かったのかと不安になる。


 公爵夫人としての教養をあれだけ受けさせてもらったのに、肝心の呼び名が抜けてましたわ。旦那様や、ルーシス様では他の方と呼び名がかぶりますし。お母様がお父様を呼ぶ時の真似をしたのですけど……高貴な貴族間では使わない表現でしたかしら。


 手が震える。


 せっかくの晴れ日に、大失敗をしたのではと不安になる。


「もう一度」


「え?」


 今度は勢いよく顔を上げる。


「もう一度呼んでくれるか?」


「あの、あなた……ですか?」


「〜〜〜〜っ、可愛すぎる」


「っ!?」


「それはまずい。そんな呼び方をされたら、公爵としての顔なんて無理だ」


 口元が緩むのを手で慌てて隠すその様に、思わず手を握りしめる。


 確かに、このお顔を周りの方に見られるのはなんだか嫌ですわ。私だけが見ていたいなんて……


 着飾った自分を周りから隠したいなんて言われた時は大げさとすら思ったが、今ならその気持ちが分かってしまう。


「お慕いしております。私も」


「あっ、あぁ」


「ルーシス様と、今までのように呼んでも宜しいですか?」


「え……」


「名前を初めて呼んで頂いた時、とても嬉しかったんですわ。ルーシス様と呼んで良いと言われた時も……ですから、お名前で呼んでも良いのでしたら……」


「それなら、様は不要だろう」


「はい?」


「名前だけを呼んでくれるか?」


 それは、つまり……


「ルーシス……」


「〜〜〜っ!! ダメだ!! それも可愛いすぎる!!」


「私もっ、なんだか恥ずかしいですわ」


「……っ。いや、やはりそのまま呼んでくれるか? ミラ」


「……お慕いしてますわ。ルーシス」


「「〜〜〜〜っっっっ!!!!」」


 赤面でお互い顔が見れない。


「あの、屋敷に向かうで宜しいでしょうか?」


 いつまでも出発の指示が出ないことを心配してか、護衛騎士として同伴するローが声をかける。


「あっ、いや。もう1箇所寄ってくれ」







 一面花畑で囲まれる古城。


「どうだ?」


「はい。綺麗になってますわ」


 初めて2人で訪れたこの場所は、他の人から見れば美しい景色に魅せられたことだろう。だが、ミラが視た風景はまさに悲惨さそのものだった。


 とても、綺麗ですわ。本当に。


 ミラが視ても、何もない花畑が広がるその景色に、解放する約束は守ったのだと分かる。


 まったく、彼女には振り回されましたけど。


 そのおかげでアレとの対峙を決意できたともいえる。


「はい」


 ルーシス様が渡したのは、包装したあのネックレスだった。


「どうして……」


「妻のことで把握できないものはない」


「ふふっ。ありがとうございます」


 どう渡すか分からないその品物を受け取ると、守護獣がふいに現れたことに気づく。


 まさか、持っていってくれるのかしら?


 黙って頷く動きに、その包みを差し出す。


「あ……」


 口にくわえたと思った次の瞬間には、その姿ごと消えていた。


「今のは?」


「どうやら私の旦那様は当主としてずいぶんと認められているようですわ」


「そうか」


 突然目の前で包みが消えたことに驚いた様子だったが、すぐに優しいまなざしを向ける。


「君のためになったのなら良かった」


「えぇ。とても」


 あまりにも見つめられ、思わず前を向いて歩く。


「ミラ」


 呼び止められ、振り返るとひざまずいた姿で小さな箱を持っている。


「あの、これは?」


「浄化石は砕けてしまったが、いくつかまだ光のあるカケラを集め磨かせた。ネックレスにするには小さいだろうから、指輪にしてみたのだが、貰ってくれるか?」


「ありがとうございます」


 左手の薬指にはめ、瞳の色と同じ紫の宝石を見つめる。


「帰ろうか」


「はい」


 ヴァロアナ家の公爵夫人として、一緒に家に帰る。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。