第9話 4人の冒険者
翌朝、ギルドへ到着した私たちは、受付の前で思いがけない二人に出迎えられた。
「おう、来たな」
聞き慣れた声に顔を向けると、そこには長い槍を肩に担いだフリーダが立っていた。その隣には、いつもの穏やかな表情を浮かべたクルシュもいる。二人ともすでに装備を整えており、これから依頼へ出発するところらしかった。
「あれ? 二人ともどうしたの?」
「どうしたの、じゃないだろ。今日は一緒に仕事だって聞いてるぞ」
「……え?」
私は思わず首を傾げた。
昨日、エリナから依頼されたのは魔獣の討伐だった。タクマをポーターとして同行させることも伝えてあるけれど、フリーダたちと組むという話は聞いていない。そもそも、昨日まで二人は別の依頼に出ていたはずだった。
「二人とも、もう戻ってたんだね」
「ああ。昨日のうちに片づいたんだよ。で、今朝エリナに呼び出されたってわけだ」
フリーダはそう言うと、私とタクマを交互に見た。
それから、何かを察したように口元を緩める。
「……リカ。まさかお前がタクマにお熱だったなんてな」
「……え?」
「昔、男には懲りたって言ってなかったか?」
私は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
タクマも隣で首を傾げている。
「……何の話?」
「なっ……何言ってるの、フリーダ!」
思わず声が大きくなった。
フリーダはそんな私を見て、ますます面白そうに笑う。
「おいおい、そんなに慌てるなよ。別に悪いことじゃねえだろ?」
「慌ててないし! そもそも、そういうんじゃないから!」
「へえ?」
「本当に違うんだってば!」
フリーダは明らかに信じていなかった。
私は助けを求めるようにクルシュへ視線を向けたけれど、彼は困ったように笑うだけだった。
「フリーダ、その辺にしておきなよ。リカが困ってる」
「お前もそう思うだろ?」
「……僕は何も言ってないよ」
クルシュはそう答えながらも、どこか楽しそうだった。
私は思わずため息をついた。
どうして朝からこんな目に遭わなければならないのだろう。
それに、昔の話を持ち出すなんて反則だ。
あの頃の私は、自由になれたことが嬉しくて、何もかもが新鮮だった。王宮の外で暮らすことも、冒険者として自分の力でお金を稼ぐことも、誰かと気軽に酒を飲むことさえ、すべてが初めての経験だった。
そして、世の中には親切そうな顔をして近づいてくる人がいることも、その頃に知った。
……思い出したくない。
私は小さく首を振り、余計な記憶を追い払った。
「おはよう、みんな!」
そこへ、エリナが受付の奥から現れた。
いつもの明るい笑顔だったけれど、私と目が合うと、少しだけ表情を変えた。
「リカ、ちょっとこっちに来てくれる?」
「……何?」
私は嫌な予感を覚えながら、エリナに近づいた。
彼女は私の腕を軽く引き、タクマたちから少し離れた場所へ連れていく。
そして、声を落とした。
「……リカ。昨日はあえて突っ込まなかったけどさ」
「うん?」
「タクマを安全な場所で待たせるって、何を考えてたの?」
「……え?」
エリナは呆れたように眉を寄せた。
「魔獣のいる森で、リカが戦ってる間、誰がタクマを守るの?」
私は口を開きかけて、止まった。
……あ。
「もちろん、リカが強いのは知ってるよ。大抵の魔獣なら一人で倒せるでしょう。でも、戦ってる最中に別の魔獣が出てきたらどうするの? タクマはまだ新人なんだよ?」
「……うん」
「ポーターを連れていくなら、護衛役も考えないと。普段のリカなら分かってることでしょ?」
返す言葉がなかった。
確かに、そのとおりだった。
私一人なら、魔獣が何匹現れようと自分で対処できる。けれど、タクマが一緒なら話は別だ。彼にはまだ十分な戦闘能力がないし、魔法もほとんど使えない。私が討伐対象と戦っている間に、別の魔獣が彼へ近づいてきたら、守りきれるとは限らなかった。
昨日はタクマをポーターとして連れていくことばかり考えていて、そこまで頭が回っていなかった。
「……ごめん」
私は小さく頭を下げた。
エリナはため息をついた。
「だから、フリーダとクルシュに声をかけておいたの。二人とも昨日の依頼が終わってたから、ちょうどよかったけど」
「……ありがとう」
「ただし、その分の報酬も必要だから、討伐数は増やしてあるよ。今日は一体倒して終わりじゃないからね?」
「うう……」
私は思わず肩を落とした。
エリナはそんな私を見て、少しだけ声を柔らかくした。
「……リカ、本当にどうしちゃったの?」
「……分かんない」
正直に答えると、エリナは一瞬きょとんとした。
それから、何かを察したように口元を緩めた。
「……そっか」
「何?」
「ううん。何でもない」
絶対に何でもなくない顔だった。
私はそれ以上追及するのを諦め、フリーダたちのところへ戻った。
*
「話は終わったか?」
フリーダがにやにやしながら尋ねた。
「……終わったよ」
「ずいぶんしょんぼりしてるじゃねえか」
「誰のせいだと思ってるの」
「さあな?」
フリーダは楽しそうに笑った。
その隣で、タクマが少し困ったような顔をしている。
「えっと……結局、今日は四人で行くってこと?」
「そういうことだね」
クルシュが答えた。
「僕とフリーダが周囲の警戒と護衛を担当する。リカは主な討伐役で、タクマは素材の回収と運搬だね」
「なるほど。分かりました」
タクマは素直にうなずいた。
私は少し申し訳なくなった。
「ごめんね、タクマ。昨日は私、ちゃんと考えてなかったみたい」
「いや、別にいいよ。むしろ、フリーダさんたちが一緒なら安心だし」
「だろ?」
フリーダが胸を張った。
「タクマのことは任せとけ。お前はいつもどおり派手に暴れてくれりゃいい」
「……派手に暴れたりしないよ」
「どうだかな」
私は思わず頬を膨らませた。
クルシュが苦笑する。
「まあ、久しぶりに一緒に仕事するんだし、楽しもうよ。リカが一人で何でもできるのは知ってるけど、たまには誰かと組むのも悪くないでしょ?」
「……うん。そうだね」
私は小さくうなずいた。
フリーダとクルシュは、私が冒険者になってから長い付き合いのある二人だ。特にフリーダには、まだ何も知らなかった頃から何度も世話になっている。
昔の私がどれほど無鉄砲だったかも、彼女はよく知っていた。
だからこそ、遠慮なくからかってくるのだろうけれど。
「……リカって、結構いじられるんだな」
タクマがぽつりと呟いた。
「タクマまで!?」
「いや、いつもは頼れる先輩って感じだから、ちょっと意外でさ」
タクマは笑っていた。
フリーダが大きな声で笑い、クルシュも口元を押さえている。
私は思わず顔を覆いたくなった。
……もう、今日は絶対に変なことを言わないでおこう。
*
今回の討伐対象は、昨日のグランボアと同じ森林地帯に出現した別の魔獣だった。
エリナから渡された依頼書には、複数の魔獣が目撃されたことが記されている。種類はグレイウルフ。普通の狼より一回り大きく、群れで行動する習性を持つ魔獣だ。
単体ならC級冒険者でも十分に対処できるけれど、群れになると厄介だった。仲間と連携して獲物を追い込み、隙を見て側面や背後から襲いかかってくるため、少人数での討伐は危険が大きい。
今回は少なくとも五体以上が確認されており、ギルドからは群れの討伐を依頼されていた。
「五体以上か。まあ、四人いれば何とかなるだろ」
フリーダが依頼書を確認しながら言った。
「そうだね。ただ、タクマがいるから、無理はしない方がいいと思う」
クルシュが穏やかに答える。
「もちろん。タクマは俺の後ろから離れるなよ」
「はい。よろしくお願いします」
タクマは真剣な表情でうなずいた。
私はその様子を見ながら、少し安心した。
フリーダはB級冒険者として十分な実力を持っているし、クルシュも魔法の扱いに長けている。二人が護衛についてくれるなら、タクマが危険な目に遭う可能性はかなり低くなるだろう。
……それにしても。
昨日は自分一人で何とかなると思っていたのに、こうして改めて考えると、ずいぶん無責任なことを言ってしまったものだ。
私は小さくため息をついた。
フリーダの言うように、私がタクマに夢中になっているからなのだろうか。
……いやいや。
そんなはずはない。
私は慌てて首を振り、余計な考えを追い払った。
*
森林地帯へ到着すると、私たちはまず周囲の様子を確認した。
昨日のグランボアがいた場所よりも少し北側で、木々の密度が高く、足元には低い草が生い茂っている。ところどころに獣道があり、魔獣が移動した痕跡も見つかった。
「……いるな」
フリーダが低い声で言った。
彼女は槍を構え、周囲へ視線を巡らせている。
クルシュも杖を手に、魔力の気配を探っていた。
「少なくとも三体は近くにいると思う。もう少し奥にも反応があるね」
「うん。私も感じる」
私はうなずいた。
グレイウルフは群れで行動するため、一体だけを見つけても油断できない。周囲の茂みに仲間が潜んでいることが多く、獲物を囲むように動く習性がある。
タクマは少し緊張した様子で、私たちの後ろに立っていた。
「……思ったより静かだな」
「こういうときほど気をつけた方がいいよ」
私は小声で答えた。
「魔獣が近くにいると、普通の動物が逃げて静かになることがあるんだ」
「なるほど……」
タクマは周囲を見回した。
その様子を見て、フリーダが小さく笑った。
「緊張してるか?」
「……正直、ちょっと」
「そりゃそうだ。初めての討伐依頼なんだからな。でも、今日は俺たちがいる。無理に何かしようとするなよ」
「はい」
「それと、何かあったら俺の指示を優先しろ。リカが戦ってる最中に、あいつのところへ走っていくような真似はするなよ?」
「分かりました」
タクマは真剣に答えた。
私はそのやり取りを聞きながら、少しだけ胸が温かくなった。
フリーダは昔からこういう人だった。
口は悪いし、からかうのも好きだけれど、危険な場面では必ず周囲を気にかけてくれる。特に経験の浅い冒険者には、必要なことをきちんと教えるし、無理をさせない。
私も、何度も助けられてきた。
だからこそ、タクマを任せられるのだ。
*
最初のグレイウルフが姿を現したのは、それから間もなくのことだった。
茂みの奥から低い唸り声が聞こえ、灰色の毛並みをした大きな狼が姿を現す。
普通の狼より一回り大きく、肩の高さはタクマの腰ほどある。鋭い牙を剥き出しにし、こちらを警戒するようにゆっくりと歩いていた。
「一体……いや、二体か」
フリーダが呟いた。
その言葉どおり、少し離れた茂みからもう一体が現れた。
私は周囲の気配を探った。
さらに奥に、複数の魔力反応がある。
「……全部で六体かな」
「六体か。まあ、予定より一体多いくらいなら問題ねえな」
フリーダは槍を構え直した。
クルシュも杖を掲げ、魔法の準備を始める。
「タクマ、僕たちの後ろにいて。荷物はその木の根元へ置いておこう」
「はい」
タクマは指示に従い、持ってきた袋を木の根元へ置いた。
私は一歩前へ出た。
グレイウルフたちは、こちらの人数を確認するようにゆっくりと動いている。すぐに飛びかかってくる様子はないけれど、少しずつ距離を詰めながら、左右へ広がろうとしていた。
私は右手を軽く上げた。
「……じゃあ、始めようか」
風の魔力を集中させる。
最初に動いたのは、正面のグレイウルフだった。
低く唸りながら地面を蹴り、こちらへ飛びかかってくる。
私はその動きに合わせて風魔法を放った。
圧縮した風が狼の身体を打ち、勢いよく横へ吹き飛ばす。グレイウルフは地面を転がり、近くの木へぶつかった。
その隙に、もう一体が側面から飛びかかってくる。
「リカ、右!」
フリーダの声が響いた。
私は振り返らず、右手を軽く動かした。
地面から土の壁が立ち上がり、グレイウルフの突進を遮る。魔獣は壁へぶつかり、驚いたように後退した。
「相変わらず器用だな!」
フリーダが笑った。
私は軽く肩をすくめた。
「このくらいならね」
そのとき、クルシュが声を上げた。
「左から二体来るよ!」
私は視線を向けた。
茂みの奥から新たなグレイウルフが飛び出し、こちらへ向かってくる。
けれど、そのうち一体は私ではなく、後方にいるタクマへ狙いを定めたようだった。
「……っ!」
タクマが息を呑む。
私は魔法を放とうとした。
しかし、それより早くフリーダが動いた。
「させるかよ!」
長い槍が鋭く突き出され、グレイウルフの進路を塞ぐ。
魔獣は慌てて方向を変えようとしたけれど、フリーダは一歩踏み込み、槍の石突きで地面を叩いた。鋭い音に驚いた魔獣が一瞬動きを止める。
その隙に、クルシュが魔法を放った。
地面から伸びた蔓がグレイウルフの脚へ絡みつき、動きを封じる。
「リカ!」
「うん!」
私はすぐに魔力を集中させ、風の刃を放った。
鋭い風が魔獣の首元を切り裂き、グレイウルフはその場へ倒れ込んだ。
私は残る魔獣たちへ視線を向けた。
群れはまだ諦めていない。
けれど、こちらの連携を見て警戒したのか、少しずつ距離を取り始めていた。
「逃がすと、また街道に出てくるかもしれないね」
クルシュが言った。
「そうだね。ここで片づけよう」
私はうなずいた。
風の魔法で周囲の空気を動かし、逃げようとするグレイウルフたちの進路を塞ぐ。フリーダが槍で牽制し、クルシュが土と蔓の魔法で足を止める。
私はその隙に、一体ずつ確実に仕留めていった。
戦闘はそれほど長く続かなかった。
最後のグレイウルフが倒れると、森には再び静けさが戻った。
「……終わったかな」
私は周囲の気配を探った。
近くに残っている魔獣の反応はない。
フリーダも槍を下ろし、クルシュが魔法を解いた。
「お疲れさん。やっぱりリカがいると早いな」
「二人がいてくれたからだよ」
私は素直に答えた。
実際、タクマへ向かった魔獣をフリーダが止めてくれなければ、私は攻撃を中断して彼を守る必要があっただろう。
自分一人で戦うのと、誰かを守りながら戦うのは違う。
そのことを、改めて実感した。
*
戦闘が終わると、今度は素材の回収が始まった。
グレイウルフからは魔石のほかに、毛皮や牙、爪などの素材が取れる。特に毛皮は丈夫で、加工すれば防寒具や防具の材料になるため、一定の需要がある。
ただし、六体分となると相当な量だった。
「さて、どうするかね」
フリーダが倒れた魔獣を見下ろしながら言った。
「全部持ち帰るのは無理だろうな」
「そうだね。魔石と牙を優先して、毛皮は状態のいいものだけにしようか」
クルシュが答える。
私はうなずいた。
「うん。それでいいと思う」
すると、タクマが少し考え込むような顔をした。
「……ちょっといいですか?」
「ん?」
フリーダが振り返った。
「荷物を運ぶ前に、どの素材をどれくらい持ち帰るか、先に決めておいた方がいいと思うんです」
「ほう?」
「全部解体してから考えると、結局運べないものが出てくるかもしれないので。先に優先順位を決めて、袋ごとに分けておけば、作業も早くなると思います」
フリーダは少し感心したように眉を上げた。
「なるほどな。確かに、そっちの方が無駄は少ねえか」
タクマはうなずいた。
「あと、重いものを一つの袋にまとめると運びにくいので、できれば重さを分けた方がいいと思います。帰り道のことも考えると、持てる量を最初に決めておいた方がよさそうです」
私は思わず笑ってしまった。
やっぱり、タクマはこういうことが得意らしい。
昨日までの運搬依頼でも、荷物の扱い方や作業の順番を考えるのが上手だった。戦闘能力はまだ低いけれど、こうした段取りのよさは十分に役立つ。
「じゃあ、タクマに任せてみようか」
私がそう言うと、タクマは少し驚いた顔をした。
「いいのか?」
「うん。もちろん、解体は私たちが手伝うけど、荷物の整理はお願いしたいな」
「分かった。やってみるよ」
タクマは嬉しそうにうなずいた。
それから、私たちは手分けして素材の回収を始めた。
フリーダが牙や爪を取り外し、クルシュが魔石を回収する。私は毛皮の状態を確認し、傷の少ないものを選んで解体した。
タクマはそれぞれの素材を袋へ分け、重さや大きさを確認しながら荷物をまとめていく。
最初は少し戸惑っていたけれど、作業が進むにつれて手際がよくなっていった。
「……なるほどな」
フリーダが感心したように言った。
「お前、戦いはからっきしだが、荷物の扱いは上手いな」
「ありがとうございます。前の仕事でも、こういうことは結構やってたので」
「へえ。そりゃ頼もしいじゃねえか」
タクマは少し照れくさそうに笑った。
私はその様子を見ながら、自然と嬉しくなった。
フリーダがタクマを認めてくれた。
それが、何だか自分のことのように嬉しかった。
……不思議だな。
昨日、ミーナがタクマを褒めていたときは、なぜか少し面白くなかったのに。
今日は、同じように褒められている姿を見て、素直に嬉しいと思える。
私は自分の気持ちの違いに少し戸惑いながらも、目の前の作業へ意識を戻した。
*
素材の回収を終える頃には、日が少し傾き始めていた。
タクマがまとめた荷物は、思っていた以上に運びやすくなっていた。重さを分散させ、持ち手になる部分を縄でまとめてあるため、四人で分担すれば十分に運べる量だった。
「よし。これなら帰れそうだな」
フリーダが荷物を持ち上げながら言った。
「タクマ、なかなかやるじゃねえか」
「ありがとうございます」
タクマは嬉しそうに笑った。
クルシュも穏やかにうなずく。
「初めてのポーターとしては十分だと思うよ。こういう仕事は、慣れている人がいるだけでずいぶん違うからね」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
タクマは少し照れくさそうだった。
私はそんな彼を見ながら、ふと思った。
タクマは、確実にこの世界で自分の居場所を作り始めている。
最初は何も分からず、私に頼るしかなかった彼が、今では自分の得意なことを活かして仕事をしている。ほかの冒険者とも協力し、少しずつ信頼を得ている。
それは、とてもいいことだ。
私は心からそう思った。
けれど、昨日のことを思い出すと、少しだけ複雑な気分にもなる。
……どうして、ミーナのときはあんな気持ちになったんだろう。
私は小さく首を傾げた。
答えは、まだ分からなかった。
「リカ?」
タクマが声をかけてきた。
「どうした?」
「ううん。何でもないよ」
私は笑って答えた。
「それより、今日はお疲れ様。初めてのポーター、大成功だったね」
「ああ。みんなのおかげだけどな」
タクマはそう言って笑った。
私はその笑顔を見ながら、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
……まあ、いいか。
今はまだ、答えを出さなくても。
こうして一緒に仕事ができて、タクマが楽しそうにしている。
それだけで、十分なのだから。
私たちは荷物を分担し、夕暮れの森をあとにした。




