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死んだ幼馴染が、帰ってきた

朝食を終え。


野営地を片づける。


馬車が街道へ戻ると。


ガイルが御者台から言った。


「ディアドラまでは、まだ数日かかる」


「今日も野営?」


俺が聞く。


「いや。今日は途中の村で一泊する」


ダイスが荷台から顔を出す。


「宿?」


「ああ」


「酒場も?」


「ある」


「飯は?」


「あるだろ」


「よし!」


ジルが呆れたようにため息を吐く。


「あなたって、本当に食べることばかりね」


「旅の楽しみでしょうが」


「昨夜も同じこと言ってたわよ」


二人のやり取りを聞きながら。


馬車は街道を進んでいった。




村へ着いたのは。


昼を少し過ぎた頃だった。


大きな街ではない。


石造りの城壁も。


高い建物もない。


低い家々。


水路。


風を受けて、ゆっくり回る風車。


村の外には畑が広がり。


水を張った田には、青々とした稲が並んでいる。


前世で見た。


田舎の景色を思い出した。


「腹減ったー」


ダイスが馬車から降りる。


「着いて最初の言葉がそれ?」


ジルも後へ続く。


「朝飯から、そんなに経ってないでしょう」


「訓練したから腹が減ったんですよ」


「あなたは見てただけじゃない」


「指導は頭を使うんです」


「石ころを見て笑ってただけだろ」


俺が言うと。


ダイスが肩を組もうとしてきた。


「五属性さん、根に持ってんの?」


「持ってない」


「絶対持ってる」


ガイルが宿の看板を見る。


「ちょうど昼だ。先に飯にするぞ」


「さすがガイルさん!」


「うるせえ」




宿の一階は。


小さな酒場になっていた。


村人らしい客に混ざり。


革鎧や武器を身につけた冒険者の姿もある。


ディアドラへ続く街道の中継地点。


旅人が立ち寄ることも多いのだろう。


俺たちは窓際の卓へ座った。


しばらくして。


給仕の女性が、大きな皿を運んでくる。


「お待たせ。村で採れた米と卵を使った、香草炒め飯よ」


皿の上を見る。


白い米。


細かく刻まれた肉。


卵。


葱に似た緑色の野菜。


香ばしい匂い。


『……炒飯じゃん』


木匙ですくい。


一口食べる。


「うまっ」


米は少し硬め。


肉の脂。


卵。


香草の香り。


完全に同じではない。


それでも。


前世で昼休みに何度も通った、駅裏の町中華を思い出した。


「何だ、その顔」


ガイルが聞く。


「いや」


俺はもう一口食べる。


「なんか、懐かしくて」


「この村に来たことあるの?」


ジルが首を傾げる。


「……似たようなものを、昔食べたことがあるんだ」


前世で。


とは言えない。


ダイスは、そんな俺の返事など気にせず。


二杯目を頼もうとしていた。


穏やかな昼だった。


少し前まで。


ヴァルドの地下で、人間が売られる光景を見ていたことが。


遠い出来事のように感じるほどに。


そこへ。


一人の男が近づいてきた。


三十歳前後。


使い込まれた革鎧。


腰には剣。


冒険者らしい格好をしている。


だが。


顔色がひどく悪い。


目の下には濃い隈。


髪も乱れ。


靴と裾には、乾いた土がこびりついていた。


男は何度も。


酒場の入口を振り返っている。


何かに追われているように。


あるいは。


何かが入ってこないか、怯えているように。


やがて。


ガイルの大剣と。


ダイスの短杖。


ジルの杖へ視線を向けた。


「すみません」


声が震えていた。


「冒険者の方ですよね?」


ガイルが木匙を置く。


「ああ」


男を見る。


「何だ」


男は。


首から下げていた小さな金属タグを握りしめた。


指が。


白くなるほど強く。


「助けてください」


「何があった」


男は口を開く。


だが。


なかなか声が出なかった。


何度も息を吸い。


ようやく。


「三日前に」


絞り出すように言った。


「三日前に、幼馴染を埋めたんです」


誰も。


何も言わない。


男は。


握りしめた金属タグへ視線を落とした。


「魔物にやられて……確かに死んだ」


「俺が、この手で埋めました」


ガイルの目が細くなる。


「それで?」


男の唇が震えた。


「昨夜」


青ざめた顔で。


俺たちを見る。


「そいつが、俺の家の前に立っていたんです」


一度。


大きく息を吸う。


「死んだときの傷も」


「墓の土も」


「全部、そのままで」


男は。


泣き出しそうな声で言った。


「三日前に埋めた幼馴染が」


「昨夜、帰ってきたんです」

ここまでお読みいただきありがとうございます。

これからどんどん成長していくアドリスをよろしくお願いします。

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