第71話 ただの領主が最強の魔王との決着をつけた件
「俺の体が植物?何をぬかすかと思えば・・・」
「まぁ、本人に知覚できなくても仕方ないか。この植物はとりついた対象と強制的に同化し、細胞の組成を生物のものから植物のものに作り替える力を持つ。何を言っているかわからないかもしれないがな。」
「あまり魔王を舐めるでない。その手の研究に関しては俺の世界はこの世界よりも進んでいる。つまり、俺の体の組成は植物に作り替えられ、植物型モンスターと同義だ、と?」
「そういうことだ。あとは皆まで言わなくても分かるだろ?」
「貴様のスキル対象だとでも言いたいんだろうがそう簡単なことでもない。俺と貴様の実力差は明白。ディアブロ程度を取り込めたからと調子に乗らないことだな。」
「そうだな。ディアブロは確かに格下だが、本気で戦えばディアブロにも2割程度は勝率があるだろう。」
「何が言いたい?」
「要は格下は格下でもかなり実力が近いということだ。そのレベルを吸収できるんだ。格上だろうとスキル対象に取れさえすれば・・・・」
ブチッ
「グハッ」
「安心したよ。魔王でも痛覚はあるんだな。」
「貴様・・・!」
「ほら、治せよ。魔族の得意技だろ?」
一瞬で腕を再生させるナスク。
「随分と嬉しそうだな。植物に変えるときに脳までいじった記憶はないんだが・・・」
「てめぇ、絶対にぶっ殺してやる!」
魔力を練り上げ始めるナスク。ただ、こいつは見落としている。植物には魔力核という魔力を生成、制御する機関がある。こいつが同化草と同化した際にほとんどの器官は細胞の組成を植物に作り替えたうえで機能するように調整しただけだが、植物細胞で構成される肉体は自身の魔力核で生成された魔力以外では魔法や魔力を使用したスキルを使用できない。
パァン
「今度は何だ!?」
「魔力核を爆発させた。ナスク、これでお前は魔力を使うことすらできない。肉体能力だけが高いただの植物型モンスターだ。」
「き、貴様ぁぁぁぁ、ぐぁぁぁぁ」
叫びながら襲い掛かってこようとしてきたためとりあえず両足を引きちぎる。どれだけ格の違いがあろうと、このスキルは魔力核への干渉を無条件にできる以上、植物型モンスターを相手にして負けることはない。そして魔力を失えば格下となるのもまた必然。
「さて、お前を楽に殺してやるつもりはない。今から両手も引きちぎり胴体だけにしたうえで断面のみを強制治癒し、俺のスキルで作り出した植物の持つ亜空間にお前を放り込む。お前は意識だけの状態で身動きも取れず自殺もできない空間で永遠に苦しみ続けることになるだろう。」
ブチィ
「ぐぁぁぁぁぁ」
両腕も引きちぎり、スキルで断面を強制治癒。仮にこいつが再生方法を見つけたとしても断面がふさがっているため、腕や足を生やせないようにする。
「これでお前の言葉を聞くのは最後だ。言い残すことはあるか?」
「勇者アラン、貴様、貴様だけは絶対に許さん!」
「最後の言葉がそれか。まぁいいや。」
ナスクの首を掴み専用に作り出した次元門に放り込む。
「絶対に許さんぞ!勇者!」
遠くなっていくその言葉を聞きながら次元門の唯一の入り口を閉じた。
「こちらアラン。魔王ナスク撃破。ムムはどうだ?」
『こちらヒナツ、えっとね。ミラン女王から聞いた話も込みでまとめると、魔王リンを送ってもらってから魔王リベルドが軍勢を召喚し続けるだけで奥に引きこもっちゃって、多分ほかの魔王の援軍を待つ判断だと思う。魔王リンは魔王ディアブロ撃破の報告のちょっと前に急に消えちゃったよ。』
「分かった。おそらく片割れのランが消滅したからリンも消えたんだろ。トールのほうの拘束も問題なさそうだからいったんリベルドを片付けに行く。各軍生き残りの軍勢の処理を進めてくれ。指揮官はいない。魔王の力で強化されていただけのはずだからそこまで強くもないはずだ。以上。」
通信を終了し、サクっと次元門で転移してきた。
「誰・・・?」
おどおどした少女の見た目をしているが、こいつがリベルドだな。
「お前が魔王リベルドだな。リベルドなんて名前をしているからてっきり男の魔族かと思っていたが」
「男の姿に変身することが多いから・・・これが本来の姿・・・あなた、もしかして勇者・・・?」
「あぁ。勇者アランだ。」
「ナスクを放置して私なんかのとこに来ていいの・・・?王都を襲撃するって言ってたよ・・・?」
「あー、お前ほかの魔王の反応を終えないのか。」
「そうだけど・・・なんで・・・?」
「魔王ランと魔王ディアブロは、2人を強制同化させ、俺が吸収した。魔王リンはお前の知っている通りここの援軍に来させた。魔王ドーラはアラが撃破、魔王トールは俺の仲間が結界で拘束している。この後討伐に赴く予定だ。そして魔王ナスクはこの通りだ。」
亜空間から出すつもりはなかったがこのほうが速いだろう。口をきけないよう猿ぐつわをかませてはいるが。
「そ・・・みんな負けたんだ・・・」
「そういうこった。で、残りは二重身の魔王のあんただけってわけだ。」
ナスクを亜空間に戻しつつ返事をする。
「殺すなら早く殺して・・・抵抗しないから・・・」
「理由を聞いても?」
「ナスクが負けた相手に勝てないもん・・・」
「そうか。それにしてもお前、面白い体のつくりをしているようだな。」
「そう・・・?自覚はないけど・・・」
「二重身に会ったことがないからそう感じるだけかもしれないがな。少なくとも俺のスキルの対象に取ることが出来る。というより植物の細胞を持っているようだな。」
「私は特殊だから・・・変身した全部の生物の細胞を持ってる・・・」
「ますます面白い。リベルド、俺の従魔になる気はないか?」
「殺さないの・・・?」
「俺はこの戦争が終わり次第植物の研究者になる。といっても間もなく終わるわけだが。その研究にお前のその力は役に立つ。それにお前別に魔王になりたくてなってないだろ?」
「なんで・・・?」
「俺は一部ではあるがお前の知覚したものを情報として得ることが出来る。俺がここに来た瞬間、お前から恐怖と安堵の感情を感じた。死への恐怖、悪の道から解放される安堵の2つを同時に感じていたんじゃないのか?」
「そう・・・だけど・・・私は魔王で・・・」
「それを言ったらアラだってそうだ。死にたいのならここで楽に殺してやる。選べ。」
「死ぬのは怖い・・・でも・・・」
「でも?」
「私だってこの戦争を仕掛けた魔王の1人・・・ちゃんと殺して・・・」
「惜しいが分かった。」
手をかざし吸収する。まぁ、吸収してエネルギーに変換してもその肉体情報は残る。それを使ってあの肉体の再現をすればいいだけか。念のため複製が成功するまではエネルギーに変換はせずに人格とか記憶も残るようにしておくか。
「こちらアラン、リベルド撃破。トールを処理次第、残党処理に加わる。」
各街に配置した軍の代表者からの返事を聞いたのち、魔王トールのもとへ向かう。
「よぉ。お前が魔王トールか。」
「勇者、ということはナスクは負けたのね。」
「あぁ。俺の作った亜空間で永遠に苦しむだろうさ。」
「そう。やるならさっさと殺して。あーしもこんな居心地悪い場所に長居させられて気分悪いから。」
「いいのか?俺と本気でやりあわなくて。あくまでもナスクに勝ったのは作戦勝ちに近いものがあるからな。」
「やりあったとこででしょ。こんな結界用意して、ナスクを倒せる作戦用意してるやつがあーし程度倒せないはずもないでしょ」
「それもそうだな。居心地は悪いだろうし結界は解いてやろう。逃げれないよう拘束したうえで、だがな。」
神蔦でトールの全身を拘束し、結界を解除させる。
「さっさと殺せし。」
「まぁ、待て。こっちにも順序というものがある。」
よし、同化草の同化が完了したな。
「よし、準備はできた。苦しみなしないだろうさ。言い残すことはあるか?」
「あるわけないっしょ。勇者なんかに。」
「そうか、それじゃサヨナラ。」
あっという間に吸収し、エネルギーとして分解した。これでアラ以外の魔王は全員消滅。人類の完全勝利だ。




