最終話 ただの領主が世界の守り人に認定された件
魔王トール撃破後、各戦場に赴き残党をそれぞれ一掃し終えるころには暗くなっていた。各々疲れ切っていたこともあり、一度解散し、それぞれの居に戻った。ヒナツはブレクルス王城につくなり泥のように眠った。俺はというと・・・
「アラ、大丈夫か?」
「ご主人?ボクなら大丈夫だよ。ちょっと疲れちゃっただけ。」
「そうは言うがまだろくに動けないだろ?」
「バレてる?」
「あぁ。本当に今できる最大限をぶつけてくれたんだな。」
「うん。ご主人のためならなんだってやるよ。戦うのはしばらくごめんだけど。」
「いいさ。それに戦いは終わったんだ。ゆっくりするくらい許されるさ。」
「そうかもね。」
「俺も疲れたから寝る。お休み。」
「うん。おやすみ。」
自室に戻り眠りについた。
いつもに比べて眠りが深かったように感じる。夢の一つも見なかった。
目が覚めるとすでに正午を回っていた。ミラン女王との会合が正午だったのだが、完全に寝坊してしまった。まずいな。とりあえず次元門で急いでいくか。
「遅かったですね。お疲れでしたか?」
「すまない。普通に寝坊した。」
「それほど待っていませんし、大丈夫ですよ。それにあなたは世界を救ってくれた勇者様なのですから。」
「そんなたいそうなものかね。それで、軍と街の被害状況は?」
「軍は皆さん以外に魔王と接敵した者もおらず負傷者のみで済みました。街は被害なし、一部街道が被害を受けましたが想定の範囲内です。」
「人民に被害がないようで良かった。」
「そういえばアラさんは大丈夫ですか?」
「あぁ。昨日の夜はまだ反動で体も動かせないみたいだったが今朝はもう普通に動くくらいはできるようになってたぞ。それこそ寝坊していた俺を起こしてくれたのはアラだしな。」
「それならばよかったです。魔導マジクルス王国を救っていただいたことと、魔王討伐のお礼を兼ねて祝勝会を大々的に執り行おうと考えているのですが、招待を受けていただけますか?」
「英雄国ブレクルス国王兼勇者として謹んでお受けいたします。」
正式な招待の場だ。普段の口調で受けるわけにもいかない。
「そんなに硬くならなくてもよろしいのに。招待を受けていただけなくても開催はするつもりでしたのよ。日時は今晩日没した頃、あまり時間もございませんが皆さまをお連れしてくださいませ。」
「あぁ。伝えてくる。」
ということで一旦ブレクルスに戻り、アラ、ヒナツ、ブレクルスを連れて4人でマジクルスに赴いた。兵たちは戻す労力を考えてマジクルスにまだ滞在していたため、そのまま参加させることにした。
勇者としてスピーチをさせられたりもしたが、おいしい料理に舌鼓を打ち、にぎやかなムードのまま祝勝会は幕を閉じ、俺たちはブレクルス王城へと戻ってきた。
休もうかとした矢先、全員をブレクルスが引き留めてきた。
「少し話がある。」
「なんだ?」
「アランよ、この国の王であり続ける気はないか?」
「ねぇよ。残念ながら俺は研究に専念したいんだこの国に居てくれっていうのもちょっと無理な相談だな。もちろん有事の際にはいつだって協力するし、次元門による各国の連携をとれるようにするって話ならいくらでも協力はするさ。」
「実務的には関わらなくても構わないし、この国に居なくても構わない。籍すらもこの国になくとも構わん。名だけでも置いておいてくれぬか?」
「本当にかかわらなくていいっていうならいいぞ。」
「あぁ。実務や国王としての仕事はすべて俺が引き受けよう。国王代理として俺の名を国民に公表する。あくまでアラン王の名を借りているということも国民に触れておこう。」
「あぁ。そうしてくれ。」
ということで英雄国の国王であり続けることは確定したらしい。ただ、籍はエルミーアに戻すことになりそうだ。といっても厳密な戸籍制度はない。そして国をまたぐと婚姻関係は消滅するため、行った先の国でも婚姻を申請しなければならない。籍を管理しているわけでもないのに婚姻の申し出は必要なのはなんなんだ?
夜、そろそろ寝るかと思っていると自室のドアをノックされた。
「どうぞ。」
「ごめんね。寝るところだった?」
「ヒナツか。もうちょっとしたら寝ようかと思っていたところだ。何かあったか?」
「いや、エルミーアに戻るんでしょ?私の立場のために婚姻関係を結んでくれてたでしょ?アランのことだから向こうに戻っても申請するって考えてそうだけど、無理しなくていいっていうのを伝えたくて。」
「なんでだ?ヒナツは俺の妻でアラは従魔、これはどこに行ったってもう二度と変わることのない関係だ。」
「いいの?」
「むしろ嫌なのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「ならそれでいいさ。ちょっと面倒ではあるがな。あと、昔の拠点だけどさ、植物の研究をするにはちょっと手狭、というか空間を区切りすぎてて研究には狭い部屋ばかりなんだ。思い出をいじることにはなるけどいっそリフォームをしようかと思ってるんだが・・・」
「それならさ、王様にお金出してもらえるんだし、いっそあの家は思い出としてきれいにして残しておいて新しく家建てて住まない?そしたらアランの好きなように研究用の部屋も作れるし。」
「いいアイデアだな。そうするか。」
「決定だね。今から楽しみかも。」
「俺もだ。お前たち2人と、しかも植物の研究をしながら暮らせるなんてな。」
俺たち3人とブレクルスは永遠の寿命を持つことから、世界各国の王が集まる会議で世界の守り人と認定された。
ルミエールで植物研究をする勇者、献身的に彼を支える妻、そして元魔王の従魔の3人で長く、長く生き続ける。そして1人は英雄国の国王代理としてこれまで生きてきた長い刻と同じ、しかし3人の守り人たちが加わったことで少し刺激的な日々を送ることになるだろう。
もしまた世界に魔王が生まれたり、災厄が起こるようなら、その時はまた4人で世界を救ってみたりするのかな?




