第68話 ただの英雄と魔王の戦いに終止符が打たれた件
「なるほど。勇者の力が植物を操ることとは聞いていましたが、ランとリンまで対象に取れるわけですか。一度吸収して再顕現させたというところですか。」
「一目見ただけでそこまで分かるんだ。さすがディアブロだね。」
「ラン程度なら援軍とも言えないでしょうがね。そこのブレクルスという男のほうがよほど強い。」
「勇者が何を考えてるかなんて私が知ると思うの?」
「それもそうですね。」
会話を交わしてくれたことで時間は稼げているな。だが、まだ時間はかかるはずだ。
事前の作戦の中で、アランからランを送ってから5分後、ディアブロを倒すための策が発動すると言っていた。それまで、俺もランも死なないようにとのことだったが・・・
「あまり長話をする必要もないでしょう。行きますよ。」
「なんであんたを相手にしなきゃいけないのかな。まぁ、いいや。行くよ。」
一瞬の沈黙が流れ、それを破ったのは・・・
『こちらヒナツ、魔王トール撃破!』
『よくやった。まだ戦えるならムムの救援に行ってくれ。』
『オッケー』
「おかしいですね。私の探知ではトールの反応はあるのですが・・・」
「トールだろ?そいつの相手はヒナツがしているはずだ。おそらく撃破、ではなく拘束が正しいだろうな。」
「拘束、ですか。魔王を?」
「あぁ。具体的にどうしたのかなんてことは俺の知る範囲ではないがな。」
「そうですか。では、仕方がないので、あなた方を倒した後に救援に向かってあげるとしましょう。」
「俺がここでとどめを刺すからそうはならないであろうな。」
「先ほどの一撃に反応できない程度の人間が私に勝つ?面白い冗談ですね。」
「冗談だと思うなら俺を殺してみろ。この鎧がある限りお前の爪が俺を貫くことはないであろうがな。」
「確かにその鎧は強力ですね。ですが、私の武器がそれだけだとでも?」
「そう思っていたらわざわざ煽ったりしてまで時間を稼ぐようなマネしてねぇよ。」
「時間稼ぎ、ですか?」
「あぁ。」
「それが目的なのであればこれ以上のおしゃべりにお付き合いする意味もございませんね。ナスクを相手にする勇者がここまで即座に来ることもできないでしょうし、早めにあなた方を処理してしまいましょ「う。」
「強制同化」
ミシミシと音を立てながらランの姿が変貌し始める。何とか5分稼げたようだ。
全身がツタで構成された変異種の樹人のような姿に変貌した。
「勇者によって与えられた力ですか。いいでしょう。相手になって差し上げます。」
徐々にランがディアブロに近づく。ディアブロは炎で燃やすでもなく近接戦闘をするつもりのようだ。もともとはスキルと魔法を封じている想定だったが、使わないのならその想定と状況は変わらない。
体がぼこぼこになりながらもディアブロに近づき、右腕に値するツタがディアブロの腕を掴んだ。
その瞬間・・・
「フフフ、ハハハハハハ。なぜ勇者の力が私に力を授けたのか知りませんが愉快ですね。ランの力を私に注ぐなど・・・」
アランの策はランの力をすべてディアブロに強制的に注ぎ込み、同化させること。これによりアランにとっては植物の力が加わった悪魔、すなわちアランのスキルの対象に取ることが出来る。
『こちらブレクルス王城救護班、アラさんが帰還、魔王ドーラ撃破とのことです!アラさんは満身創痍につきこちらで治療中です。』
「ドーラをアラが?アラも成長しているということでしょうか。ですが、ドーラごときに相打ちとはまだまだですね。さぁ、英雄よ。決着をつけようではありませんか。」
「残念ながらそうはならねぇ。」
「何!?」
「随分と力に酔ってくれているみたいで助かるぜ。」
「まさか、貴様は・・・」
「あぁ。アランだ。お前たちには勇者といったほうが伝わるか?」
「ナスクを相手していると思っていたのですが、まさか私を倒しに来るとは。」
「ナスクの相手をしている。だが、一度物量でごまかしてこっちを優先した。ブレクルスを失うほうが痛いからな。」
「ですが、あなたの手駒は私に力を渡したようですよ?」
「まだ気づいてねぇのか。まぁ、いいか。ちなみにランには強制同化のスキルと同化した対象に思考力を鈍らせる毒の効果を発揮するよう能力の調整をしておいた。今のお前、植物なんだぜ?」
アランが手を伸ばし、ディアブロの返事を待つ間もなく吸収した。これが勇者の力、俺が見込んだだけはあるな。
「ブレクルス、大丈夫か?」
「あぁ。助かった。」
「俺は戻るが、クルスはまだ戦えるか?」
「あぁ。ムムに行けばいいか?」
「あぁ。ヒナツもいる。可能そうなら魔王本体の処理を優先してくれ。」
「分かった。そっちも気をつけろよ。」
「あぁ。」




