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PE3魔法少女ペイジン  作者: SAI
レゾナンス編
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第44話 氷の魔法少女との対決

ピンク色の温かな炎を噴き上げながら、ほうきちゃんは凍てつく風を切り裂いてぐんぐんと高度を上げていく。


眼下には、白銀の氷に埋め尽くされたクロノスの街の残骸がミニチュアのように広がっていた。そんな絶景(?)を眺めながら、ペイジンはもふもふのピンクの袖口からちょこんと手を出して、肩の上のニィに首を傾げてみせた。


ペイジン「ニィ、もしクリスタにぎゅーとかでもされたらさっき凍ってた時よりもやばいくらい凍っちゃうの?」


まるで「アイス食べ過ぎたらお腹痛くなっちゃう?」とでも聞くような、あまりにも呑気で純真無垢な問いかけに、ニィの毛並みが一瞬で逆立った。


ニィ「ぎゅーって……お前、頭イカれてるのかァ....ッ!?クリスタに抱きつかれるところを想像してるのかニィッ!?やばいなんてもんじゃないニィ!即死レベルだニィッ!」


ニィは身震いしながら、必死に小さな前足で身振りを交えて説明し始めた。


ニィ「さっきのは遠くから撃たれた冷気魔法と雪崩だったニィ!それでも身体中の血が凍りついて、ニィたちカチコチの氷の彫刻になりかけたんだニィ!それを……あいつ自身に直接ぎゅーなんてされたら、文字通り零距離で絶対零度の塊を心臓に押し付けられるようなもんだニィッ!」


ペイジン「え〜、そんなになの〜?」


ニィ「そんなになの、じゃないニィッ!触られた瞬間、この可愛いもふもふの服ごともぎたてのアイスバーみたいにカッチカチになって、一秒も経たずに爪先から頭のてっぺんまで透明な氷の置物にされちまうニィ!息を吸う間も、痛いって叫ぶ暇すらなく、ニィたち二人まとめてひとつの大きな氷の塊に閉じ込められて、金輪際溶けなくなっちゃうんだニィッ!!」


ぎゃあぎゃあと必死に危機感を訴えるニィを見て、ペイジンはふむふむと人差し指を顎に当てた。


ペイジン「そっかぁ……!じゃあ、クリスタちゃんにぎゅーする時は、こっちも負けないくらい超あったかくぎゅーってし返さないとダメなんだね!」


ニィ「全然話を聞いてないニィィィッ!!抱きつきに行く前提で考えるなニィッ!!」


上空に響き渡るニィの悲鳴を乗せて、ほうきちゃんは呆れたように小さく揺れながら、決戦の地である時計塔の頂上へと突撃していった。


ペイジンはもふもふのフードを揺らしながら、きょとんとした大きな瞳をぱちくりと瞬かせた。


ペイジン「即死級?さっきよりもやばいってぎゅーされてやられたら意識もやばくなるの?」


そのどこまでもピュアで危機感の欠片もない問いに、ニィは「こいつは本当に……!」と天を仰ぎ、肉球で自分の額を激しくペチペチと叩いた。


ニィ「意識どころの話じゃないニィッ!さっきは雪の底で『寒くて眠たいニィ……』とか考える時間があったからまだマシだったんだニィ!」


ニィはペイジンの肩の上で毛を逆立て、必死の形相で爪を立てながら捲し立てる。


ニィ「あいつの全身から溢れ出てるのは、悲しみと憎しみで煮詰まったマイナス何百度の氷そのものだニィ!そんなのにぎゅーって抱きしめられたら、触れ合った瞬間に頭の芯までガリガリッて凍結して、考える暇もなく思考が真っ白に消し飛ばされるんだニィッ!『あ、冷たいな』って思った次の瞬間にはもう、完全に意識の電源を引っこ抜かれて、永遠に覚めない深い深い無の世界へ真っ逆さまだニィッ!」


ペイジン「へぇ〜っ!電源引っこ抜かれちゃうんだ!じゃあ、夢も見られないくらいぐっすり眠れちゃう感じ?」


ニィ「呑気に睡眠の質を評価するなニィッ!!それは眠りじゃなくて完全停止、文字通りの『終わり』だニィ!魂までカチコチに凍りついて、ニィたちが誰だったかも、何をしようとしてたかも、ぜーんぶ消えてただの冷たい氷の柱になっちゃうんだニィッ!!」


必死に身振りを交えて熱弁するニィの横で、ペイジンは「うーん」と真剣そうに小さく唸った。


ペイジン「そっかぁ……。ぎゅーされたら一瞬でおやすみになっちゃうんだね。じゃあやっぱり、眠っちゃう前に私がいっぱいいっぱいぎゅーして、クリスタちゃんの冷え冷えな心をぽかぽかに溶かしちゃえば解決だねっ!」


ニィ「だからなんでそうポジティブに突っ込んでいくんだニィィィッ!誰かこの子のブレーキを直してくれニィッ!!」


ニィの絶叫が木霊する中、ほうきちゃんは勢いを緩めることなく、冷気渦巻く時計塔の天頂へと一気に突入していった。


ニィ「こうなったらニィが身をもって極上の温もりを教えてやるニィ!冷気に呑まれる前にニィの体温で完全ガードだニィ!そーれ!おしくらまんじゅう……ッ!!」


ニィはペイジンの首元に全身全霊で飛びつき、もふもふのケープごと力いっぱいのしかかって、ぐいぐいと身体を押し付け始めた。獣神としての意地と毛並みの温もりを全力で叩きつけようとするあまり、その体重が一箇所にどっしりと集中してしまう。


ペイジン「しなくて..ってあああああ!!!重くなって落ちちゃうじゃああああん!!!」


ガクンッ!


首元を圧迫されたペイジンがバランスを崩し、ほうきちゃんの柄を握っていた手がずるりと滑りかけた。ただでさえ猛吹雪の乱気流を突っ切っている最中、急激な重心の偏りと大暴れに耐えかねて、ほうきちゃんが悲鳴のような甲高い音を立てて激しく傾く。


ニィ「ぎゃにゃああああっ!? 滑るニィ! 風圧がすごくて逆にペイジンにしがみつくしかないニィッ!」


ペイジン「わわわっ、ニィ重いっ、前が見えないよぉぉっ! ほうきちゃん、まっすぐ、まっすぐ飛んでぇぇっ!」


ビュオオオオオッ!


推進力のピンク色の炎がボロボロと火の粉を散らしながら、ほうきは錐揉み回転を起こして急降下を始めた。時計塔の先端が視界の中でぐるぐると目まぐるしく回転し、二人はもふもふの服を盛大にはためかせながら、悲鳴の大合唱とともに白銀の空を猛スピードで落下していく。


ドタバタと取っ組み合いのような状態のまま、二人は制御を失ったほうきちゃんに引きずられるようにして、凍てつく時計塔のバルコニーへと真っ逆さまに突っ込んでいった。


ドササササッ、ズザザザザーッ!!


錐揉み回転の末、二人は時計塔のバルコニーの凍てついた床へと勢いよく雪煙を上げて滑り込んだ。


もふもふのピンクのコートが分厚いクッション代わりになってくれたおかげで、派手な突入の割には怪我もなく、雪と氷の破片を盛大に撒き散らしながらなんとか停止する。ほうきちゃんは着地と同時に「やれやれ」と言いたげに小さく火の粉を散らし、ペイジンの隣にコトリと横たわった。


雪まみれになったピンクのフードからぽすんと顔を出したペイジンは、ほっぺたに氷の粒をくっつけたまま、隣で目を回している黒猫をじとーっと見つめた。


ペイジン「ニィが暴れるからだよ?ほうきに乗ってるのに〜.....」


唇をとがらせてぷくーっと頬を膨らませるペイジン。さっきまで真っ逆さまに落ちていた大惨事の張本人とは思えないほど、のんびりとした不満の漏らし方だった。


頭の上に雪を積もらせてへたり込んでいたニィは、ぐるぐる回る視界を前足で必死に押さえながら、慌てて飛び起きた。


ニィ「にゃ、ニィのせいじゃないニィッ! ニィはペイジンがまたカチコチに凍りついて石ころにならないように、良かれと思って温めてやったんだニィ! それを暴れただなんて心外だニィッ!」


ペイジン「でも落ちちゃったもんね〜。ほうきちゃんもびっくりして目を回しちゃってるよ?」


ニィ「うぐっ……! そ、それは事故だニィ! 不可抗力なんだニィッ!」


ペイジンがほうきちゃんの柄をよしよしと優しく撫でると、ニィは気まずそうに耳を伏せてそっぽを向いた。


けれど、二人がそんな呑気な小競り合いを繰り広げている足元からは、びきびきと激しい氷の軋む音が響いていた。顔を上げれば、数メートル先――荒れ狂う猛吹雪の中心で、冷酷な氷の杖を構えたクリスタが、信じられないものを見るような青い瞳で、二人を呆然と見下ろしていた。


ゴオオオオオオッ!


ほうきちゃんが吹き荒れる猛吹雪を真っ向から切り裂き、鮮烈なピンク色の軌跡を描いて夜空を突き進んでいく。


時計塔のバルコニーへの不時着から体勢を立て直し、二人は再び上空へと舞い上がっていた。眼下には、クリスタの暴走した魔力によって青白い氷の大地に変貌してしまったクロノスの街が果てしなく広がっている。


ほうきの先頭に跨るペイジンは、もふもふのピンクのフードを風になびかせながら、きょとんとした顔で首を傾げた。


ペイジン「ねぇニィ、さっきの話だけどさぁ。もしクリスタちゃんにぎゅーって抱きつかれちゃったら、本当にお洋服ごとみぞれみたいにピタッてくっついて、カチコチになっちゃうの?」


肩の上にしがみつくニィは、冷たい暴風にヒゲを震わせながら、目を吊り上げて叫んだ。


ニィ「なるに決まってるニィ!さっきも言ったニィ!あいつの体温はマイナス何百度の絶対零度なんだニィ!触れた瞬間にこのあったかい服の生地が一気に凍りついて肌に張り付いて、逃げる暇もなく全身ガチガチに固められちまうんだニィッ!」


ペイジン「え〜、じゃあぎゅーされたら、クリスタちゃんと離れられなくなっちゃうんだ?仲良しさんみたいでちょっと楽しそうかも!」


ニィ「呑気なこと言ってる場合かニィッ!!仲良しどころか、ひとつの氷の塊に融合させられて永遠に動けない置物になるんだニィ!しかもあいつ、至近距離で耳元に冷たい息をふーって吹きかけてくるかもしれないんだぞニィ!そんなのくらったら脳みそまで一瞬でガラス細工になって、意識のスイッチをブチッて切られておしまいだニィッ!」


ペイジン「えっ!耳にふー!?それはちょっとくすぐったそうかも……あははっ!」


ニィ「くすぐったいじゃ済まないニィィィッ!即死だニィ、即死ッ!!」


ぎゃあぎゃあと必死に危機感を訴えるニィと、どこまでもケラケラと笑うペイジン。そんな二人の頭上、厚い雪雲を突き破った先で、空気がキリキリと音を立てて張り詰めた。


ビキィッ……!


大気を凍らせる鋭い破裂音とともに、時計塔の最上階から巨大な氷の結晶が幾重にも咲き乱れる。その中心、氷の刃を浮かべた冷酷な魔女クリスタが、青白い瞳で二人を射抜くように見下ろしていた。


ドガアアアアアンッ!!


時計塔の基部に張り巡らされた巨大な氷柱群から、青白い火花が激しくスパークした。


絶対零度の魔力が凝縮され、まるで凍てつく龍が天へ向かって牙を剥くかのように、幾筋もの青白い閃光――氷の雷撃が下層から猛烈な速度で突き上がってくる。大気中の水分を一瞬で凍結させながら、ギギギッと空間を歪ませて迫るその冷気の一撃は、触れるものすべてを分子レベルで粉砕・凍結させる必殺の雷だった。


ニィ「ぎゃあああっ!? 下から氷の雷が飛んできたニィッ!! 当たったら一瞬で消し炭ならぬカチコチの氷屑になっちゃうニィッ!」


ニィが耳をぺたんと伏せて叫ぶと同時に、ほうきちゃんが危険を察知して急制動をかける。


ペイジン「わわわっ!? きれいなピカピカ……って、あぶなーいっ!」


バチチチチッ、ドォンッ!


一筋の氷雷がほうきちゃんのすぐ横を掠め去り、巻き起こった冷気の衝撃波が二人のもふもふの服を激しく揺さぶる。掠めた空間の雪煙が一瞬で巨大な氷の塊へと変わり、重力に従ってガラガラと崩れ落ちていく。


ほうきちゃんは桃色の炎をブーストさせ、螺旋を描きながら時計塔の外壁を縫うようにジグザグに飛び回った。下から次々と放たれる青白い氷の雷を、間一髪の機動でかわしていく。


ペイジン「うう〜っ、下からどんどん追いかけてくるよ〜! あんなの当たったら、せっかくのいちごみるくのお洋服がバリバリに凍っちゃう〜っ!」


ニィ「服の心配をしてる場合かニィッ! ほうきちゃん、右ニィ! 次は左から極太のが来るニィッ!」


時計塔の頂上で杖を振り下ろすクリスタの冷徹な眼光。容赦のない絶対零度の迎撃網をくぐり抜けながら、二人は決死の思いで高度を稼ぎ続けていた。


バヂヂヂヂッ、ドッガアアアアンッ!!


空間そのものが凍りつき、甲高い破裂音が耳を劈いた。


下層の氷壁から放たれた極太の青白い氷雷が、まるで獲物を追尾するように角度を変え、凄まじい速度で二人の真下から垂直に跳ね上がってきた。周囲の空気が一瞬で青白い氷の粒子へと変わり、巻き上がる極寒の衝撃波が、ほうきちゃんの推進力であるピンク色の炎を激しく押し戻す。


視界のすべてを覆い尽くすほどの、絶対零度の閃光。


死の冷気が皮膚の表面をチリチリと焼き焦がすような錯覚の中、ペイジンは目を限界まで見開き、喉が張り裂けんばかりの声で叫んだ。


ペイジン「避けてエエッ!!!!」


その悲鳴のような叫びに呼応し、ほうきちゃんが柄を激しく震わせた。


キィィィィンッ!


ピンク色の火柱が限界を超えて爆発的に噴流し、ほうきは物理法則を無視したような直角旋回で、強烈なGとともに機体を真横へとスライドさせた。


直後――


ゴォォォッ、バキィィィィンッ!!


巨大な氷雷の切っ先が、ペイジンの履いていたもふもふのブーツの靴底を、わずか数ミリの隙間を残して掠め抜けていった。


掠めただけでも凄まじい威力だった。靴底のゴムが一瞬で白く凍りつき、巻き起こった冷気の爆風が二人の身体を激しく木の葉のように吹き飛ばす。もふもふのピンクのコートの裾が激しく翻り、霜の結晶がバタバタと音を立てて表面に張り付いていく。


ニィ「ひぎゃああああっ!? ち、近すぎるニィッ! かすっただけで尻尾の先がカチコチになっちゃうところだったニィッ!」


ペイジン「ふぇぇぇ……っ! あ、危なかったぁ〜……! ほうきちゃんナイスっ、ナイスだよ〜っ!」


ほうきちゃんは機体を激しく揺らしながらも、体勢を立て直して再び天へと穂先を向けた。


しかし、安堵の息を漏らす暇など微塵も残されてはいなかった。掠め去った氷雷の破片が上空で冷気の雲へと弾け飛ぶと同時に、時計塔の頂上から、信じられないほどの冷酷な眼差しが二人をまっすぐに見下ろしていた。


クリスタ「……目障りな羽虫が。その程度の温もりで、私の絶対零度を越えられると思ったのか?」


氷の魔女が掲げた杖の切っ先から、さらなる凍てつく波動が渦を巻き始めていた。


ピキキキキッ!


大気が軋む甲高い音とともに、時計塔の頂から巨大な氷の結晶が放射状に炸裂した。


吹き荒れる猛吹雪を従え、クリスタの背中から透き通るような白銀の氷の翼が何重にも展開される。重力など最初から存在しないかのように、彼女は氷の杖を一振りすると、青白い冷気の軌跡を引きながら虚空を蹴り、二人めがけて弾丸のような速度で飛来してきた。


ペイジン「空飛んできたッ!?」


もふもふのフードをパタパタと揺らしながら、ペイジンは目をまん丸にして素っ頓狂な声を上げた。


ニィ「そんなの聞いてないニィ〜ッ!!!」


肩の上でニィが短い毛を限界まで逆立て、四本の足をバタつかせて絶叫する。


ニィ「魔法使いだからって誰も彼もが飛べると思うなニィッ!あんな絶対零度の塊が自分で飛んできたら、逃げ場なんてどこにもないニィッ!ほうきちゃん、全速力ニィッ!接近されたら本当に終わりだニィッ!!」


ほうきちゃんは桃色の炎を最大出力で噴射し、空中で激しい急旋回を敢行した。


しかし、氷の翼を羽ばたかせたクリスタの飛翔速度は桁違いだった。彼女が滑空する軌道上には瞬時にダイヤモンドダストの尾が引かれ、周囲の空気の温度が一気にマイナス百度、マイナス二百度へと急降下していく。


クリスタ「どこへ逃げようと無駄だ。お前たちのその不快な熱ごと、永遠に凍りつかせてやる」


感情の抜け落ちた冷酷な声音が、耳元をかすめる風よりも鋭く響き渡る。


クリスタは身を翻すと、逃げるほうきの真上へと瞬時に回り込み、冷気の渦を纏った青白い両腕を、無慈悲に広げて急降下を開始した。


真上から急降下してくるクリスタの右手に、見るもおぞましい巨大な氷柱が瞬時に凝縮されていく。


青白く研ぎ澄まされたその切っ先は、大気の水分を一瞬で呑み込み、触れるものすべてを貫き凍結させる絶対零度の槍そのものだった。逃げ場のない空中、真上から叩きつけられようとする死の刃を前に、ペイジンの琥珀色の瞳が一瞬だけ鋭く光る。


ペイジン「……ッ!!!」


もふもふの袖口から突き出した両腕に、少女はありったけの力を込めた。


握りしめたスリーピィステッキの先端から、眩いばかりの温かな光の粒子を爆発的に噴流させる。ただ避けるだけでは間に合わない――そう直感したペイジンは、ほうきの上で身を大きく捻り、下から掬い上げるようにしてステッキをクリスタの手首へ向けて振り抜いた。


ガギィィィィンッ!!


激しい金属音が夜空に響き渡り、火花と氷の破片が猛烈な勢いで四散する。


絶対零度の冷気がステッキの柄を伝ってペイジンの腕へ雪崩れ込み、もふもふの手袋の表面が一瞬で白く霜に覆われる。だが、渾身の力で叩き込んだステッキの打撃は、クリスタの細い手首を僅かに外側へと弾き飛ばした。


クリスタ「……なっ!?」


軌道を無理やり逸らされた巨大な氷柱は、空気を切り裂く轟音とともにペイジンの右肩のすぐ横、空の虚空を猛烈な勢いで突き抜けていく。


ドゴオオオッ!


掠め去った氷柱の巻き起こす衝撃波と冷気の暴風が、ペイジンのピンクのフードを激しく剥ぎ取りそうになりながら後方へと突き抜けた。間一髪、文字通りミリ単位の差で、二人はその必殺の刺突を回避することに成功していた。

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