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TS爺、百合エロゲ―の世界のダンジョンに挑む  作者: 蒼井茜


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校長

 一応の安定を見せたので退院できた私。

 だがじゃらじゃらとアクセサリーをつけている事に変わりはなかった。

 そして小さな子がそんなにアクセサリーをつけているというのは、周囲には大体理解される。

 要するにこっちが月の日だとバレているわけだ。

 多少気恥ずかしいが……まぁいいや。


「失礼します」


「どうぞ」


 校長室にはいると妙齢の女性がいた。

 若い、蓮野より少し上……くらいか?

 ダメだ、見た目だけだと判断ができない。


「そんなに緊張しないでね。今回の事件はイレギュラーエンカウントだったこと、命さんが倒したこと、その際に非道な手段は使わなかった事までは確定しているから」


「ならなぜ」


「単純にあなたの処遇をどうするか決めあぐねているのよ。ちなみにこの会話は職員室の全員が聞いているから、万が一があれば蓮野さんがとんでくるわ」


「……では、何を話せばいい」


「そうね……デスイーターを見た感想は?」


「恐ろしかった、そしておぞましかった。アレに殺されるくらいなら自分の首を切り落とす。けど仲間がいたしボス部屋だから逃げられない。だから戦った」


「戦ってみた感想は?」


「二度とごめん。アレを相手にするなら死神をダース単位で相手にした方がまだマシ」


 経験値的にも感覚的にもな。

 どうにもデスイーターの見た目は正気を狂気に変えそうな感覚があったから嫌だったんだ……。

 闇に飲まれそうな感じになったな。


「でも倒したことであなたは肉体的にも精神的にも成長した。違うかしら」


「わからない。そもそも私の精神性がどんなものかを自分で理解していない」


 男の私と女の俺、そんな感覚が二重に重なって上手い事歯車がかみ合っているに過ぎない。

 前世とスラムの記憶もあるから、精神面は他より落ち着いている自信があるが……あの時は少しおかしかった気がする。


「じゃあ肉体的な方はどうかしら」


「止まっていた時間が動き出したみたいな感覚。この歳まで来なかった生理が来た」


「それはおめでとう。けど、それだけじゃないわよね」


 鋭いな……実際にもう一つ変化はある。


「魔力の流れがスムーズになった。せき止められていたものが勢いで全てを押し流したような……言語化が難しい」


「そうね、それは格上を相手にした人が皆言うのよ。まるでダムが決壊したように魔力が流れるようになったとか」


「似ている。けど何か違う」


「違うって言うと?」


「川が流れるように、海に流れ込み蒸発するように、蒸気が雲になるように、雲が雨を降らせるように、そして雨がまた川に流れていくように、全ての工程に違和感がない」


「月の日で乱れているように見えるけど、それでも?」


「それでも今までよりスムーズだ。考えるまでもなく魔法が使えそうだ。ただ同時に今のまま打ったら大変なことになるとも思っている」


 流れは順調なんだが、その勢いがあまりにも激しい。

 台風のように荒れ狂っていると言ってもいいかもしれない。

 けど時間が立てば落ち着くだろうというのもわかる。

 これは直感的な物だ。


「なるほどね。じゃあ最後の質問。今回の戦い、戦犯がいるとしたら誰?」


 その言葉に一瞬頭に血が上りそうになった。

 それを抑えて答える。


「全ての責任者。つまり校長」


「ふふっ、そうきたか。でも確かにその通りなのよね。試験会場を選んだ先生の責任を取るのも、何かあった際に試験官をつけてそれを承諾したのも全部私。だから私が一番の戦犯とそう言いたいのね」


「責任者は責任を取るためにいる」


「そうね。それはどこでも変わらない。だから私も天照の一員として答えるわ。今回のイレギュラーエンカウントは極秘事項とします。それにより発生した被害や補填は私のポケットマネーから出す。それを了承してくれるかしら」


「それを決めるのは私だけじゃない」


 正直、金でどうにかしようとしている点については腹が立つ。

 一方で責任を取るつもりがあるという事に関しては、少し見直したというべきか。

 むしろこうなる事を望んでいたようにすら見える。


「言っておくけどちゃんと責任は感じてるのよ? ただその上で私にできるのはお金を出すことくらいってだけで」


「他の被害者の答え次第」


「みんな程度は違えど納得してくれているわ」


「天沢先生が一番の被害者。次が静江とアキラ、私はせいぜい過労と魔力枯渇で倒れた程度」


「入院費用も検査費用も当然私が出すし、それ以外に必要なら用意できる範囲で何とかするけど?」


「先生たちが優先」


「うん、それはもう解決したわ。探索者としての資格を返上した天沢先生の待遇は今後一般教員として学園に籍を置き続けられるようにして、その上で給料は上乗せする事になった。静江はあなたの回復のために全力を尽くせと言われたから腕のためにエリクサーを用意して投与した。アキラさんも同じことを言ったけど、静江のたのみで十分だったから彼女には装備をいくつか用意した。じゃああなたは何が欲しい?」


「ダンジョンに潜る権利。中級と上級のダンジョンに」


「……あんなことがあったのに?」


「無かったことにする話」


「……いいでしょう。その権利を与えます。ただし万全の状態じゃないとだめです。これはいいわね」


「わかった」


 よし、とりあえず当面の問題はないようだ。

 ……しかし天照の一族か。

 静江とはどんな関係なんだろう。

 親戚筋か、姉か……。

 まぁそこまで興味ないからそのうち聞けばいいか。

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