究極の選択
生理のせいでしばらく暇になってしまった。
普通に授業を受けて、大人しく寮に戻る。
そんな生活も休暇と思えば悪くないのだが……毎月と言うのを考えると少しばかり時間が勿体ない。
そこで実習室と言う名の訓練所を借りて今できる事を試してみた。
もちろん蓮野のお目付け有りでだ。
「本当にやるの?」
「月の日の間でも訓練は無駄にはならない。それにいざという時に戦えないのが一番怖い」
そう、いつ何時戦闘になるかわからないし、敵はこちらの状態を考慮してくれない。
なんならこちらの調子の悪いタイミングを狙ってくる輩もいるのだ。
「ふぅ……」
魔力循環、いつもより効率的だけど乱が大きい。
結果的にロスが増えて、けどデスイーターと言う格上を倒した事でゲーム的な言い回しをするならレベルアップしたからだろうか。
最終的な循環による強化率は上昇、持続時間は据え置きだ。
おそらく万全の状態ならもう少し強化できるし、持続時間も伸びるだろう。
一方で魔力をまともに使おうとすると放出の量がアンバランスになる。
小量を出そうとしても溢れたように止まらないし、ならいっそ大量に放出してみようとしたら魔力枯渇でぶっ倒れた。
魔力回復ポーションを口移しで飲ませようとしてくる蓮野を猫のように拒否するので精一杯だった。
どうにか動いてポーションを飲んでからできる事を試していく。
まず枯渇覚悟で魔法系、と言っても忍術スキルに統合されたものを使ってみる。
火遁、ただ火を吐くだけの魔法だが……口の中やけどしたうえに訓練所に置いてあった的が消失、ついでに耐魔力機構の組み込まれた建物が停電するに至った。
余りにも威力が高すぎて、一時的に電力が集中されたことでの停電だった模様。
その後復旧したはいいが、魔法は禁止された。
続けて身体強化。
こちらは魔力循環と同じような感じだったが、強化された魔力で身体を上手く動かせず壁や天井に何度か身体をぶつけて、あざだらけになってからようやくまともに動けるようになった。
これを考えると急速なレベルアップも問題だなぁ……。
まぁ今は出力と馬力がバグっているから仕方ないとしても、いずれはこのくらい使いこなせるようにならないと意味がない。
最後に糸を操ってみたのだが、これまた出力の問題でまともに動かす事が出来なかった。
いう事を聞かない、つまるところ糸が生き物のように勝手に動くのだ。
場合によってはこちらの首目がけて切り裂かんと飛びかかってくることだってあった。
まぁ回避したけど。
「……これは慣れるまで時間がかかりそう」
「まぁ普通生理中に戦う事考えるような真似はしないからね。少なくとも安定剤使うわ」
「なにそれ」
「魔力安定剤。生理中の女性やまだ魔力操作が未熟な子供が使う事が多いわね。それで感覚を掴んでから練習を続けて、最終的に使いこなすに至るというべきかしら」
「じゃあ蓮野は?」
「私はいつでも戦えるわよ。といってもやっぱり出力と馬力の違いで混乱する時期やタイミングはあるけど、大きくバランスを崩すことは無いわ」
「どこで貰える」
「普通に病院で処方されるわ。個々人によって用法用量が違うからほぼオーダーメイドになるの。おかげですごく高いけど」
「月神からしても?」
「うちから見たらはした金。一般的な金銭感覚の話よ。だいたい1月分で20万そこそこかしら」
それは高い。
世間的に見て富裕層と言われる部類でも躊躇する金額だ。
超金持ちと言える月神とかからすればどうとでもなるけど……。
「その診断を受けたい。薬に頼ってでもいつでも戦えるようになれておきたい」
「となると安定剤の他には抑制剤に……いざという時のために増強剤もね」
「なんか増えてる」
「抑制剤は端的に言うなら魔力のブレとかも含めて出力を落としてくれるの。安定剤が波を一定にするなら、抑制剤は並そのものを抑えて沈める事で低出力にするという感じね。増強剤はその逆、出力を上げて魔力切れを起こしやすくする薬。その分威力とか跳ね上がるけど、大体魔力を放出するだけで枯渇して倒れるわ」
「それにはどんな意味が?」
「んー、危ない使い方だと自爆テロとか、最後の手段で大技ぶっぱとか」
「普通の使い方なら」
「魔力の超回復。魔力枯渇を起こすと僅かに魔力が増えるのよ。それを目的にしているけど、増強剤は高価な上に国の許可が必要だから。もちろんどっちの問題も月神ならどうにでもなるけどね」
「なら頼む」
「可愛い妹の頼みだからね。わかったわ」
さて、これでしばらく修行に力を入れられそうだ。
……それはそれとして、魔力枯渇の際は蓮野以外の誰かに付き添ってもらおう。
こいつ相手だと貞操の危機が……いや、今更か。
その辺詳しい同性と言う事で諦めるのも有りか?
……なんだろう、究極の選択している気分になってきた。




