ダンジョンアタック
そんなこんなで中ボス戦。
このダンジョンは私達が自由に入れるように浅い階層で弱いボスがポコポコ湧いてくるタイプである。
一番ありきたりなのは5や10の付く階層でボスが出てくるパターンだが、ここは3の倍数で出てくるのだ。
なのでちょくちょく中ボスに当たり、大ボスが10の付く階層で出てくる。
そんな最初の中ボスはホブゴブリンだった。
うん、だった。
「あっけなかったねぇ」
「そうね、あの程度だと瞬殺よね」
「雑魚」
ホブゴブリンなんてそこら辺のダンジョンで雑魚として出てくるので、それが単体で置かれていてもなんの脅威にもならない。
こういうのを囲んで倒す練習のためにも学校という施設にはちょうどいいのだ。
なお普通の探索者からしたら面白くないし、美味しくも無いので放置されがちで、気が付いたらスタンピード直前で慌てて一般探索者を送り込む光景がよく見られる。
雑魚しかいないとしても、スタンピードになったら面倒だからね、その辺の管理はされている。
最悪の場合協会側が自分たちでどうにかする事もあるので、一般人がデビューしたりするときに使われがちだ。
「どうする、まだ時間には余裕あるけど」
「体力も問題ないわね」
「念のため、帰りの事も考えるべき」
アキラと静江はまだいけるぞという気配満々だったが、帰りの事を考えていない。
何なら一番事故率が多いのが帰還時と言われているくらいなのだが、帰還用アイテムさえあればその心配もいらなくなる。
まぁ100階層くらいあるダンジョンの奥でドロップするようなアイテムだから普通は持ってない。
私も持ってないし、今後取りに行くかも微妙なところだ。
いや、そのクラスの階層に行けるなら帰還も当然できるというくらいの強さになってるからね。
それにそこまで行くなら最後まで突っ走るべきだし、なにより最難関と言われるダンジョンの奥だ。
世間的にそういうアイテムの存在が認知されていない可能性もある。
「んー、帰りを考えたとしても10階層くらいまでならいけるんじゃない?」
静江は比較的楽観視しているが、本人が魔法使い系だからだろう。
ここまで消費した魔力と、今内在している魔力、そして今後使うであろう魔力を計算して導き出したのだろう。
だが体力の事を考慮していない。
お前この中で一番貧弱だからな?
「休憩できる場所があればそのくらいは大丈夫かな」
アキラは体力でしか考えていない。
阿頼耶識のスキルでどんなスキルも覚えられて、極められる万能ファイターな彼女だがメインは近接格闘術のスキルにしているようだ。
ゲームで言うならマジックファイターと呼ばれた部類で、魔法と素手攻撃を駆使して戦うお財布に優しいビルドである。
問題があるとすれば中盤が少し辛いだけで、あとは購入できるアイテムでごり押しできる無難なスタイルともいえる。
「先生は」
「え?」
「私もいける。先生がついていけない、あるいは途中で危ないと思うなら計画を見直す」
天沢先生が考え込む様子を見せ、そして数秒待ってから顔を上げた。
「今回は護衛されている立場という身分で言わせてもらうわ。私も大丈夫よ」
ふむ、まぁ嘘はついていない。
というかこの程度でへばってたら教師としてやっていけないか。
蓮野の推薦でもあったし、ならばこのまま突き進もう。
「アキラ、このダンジョンに一番詳しいのは君。私は索敵をするから案内は任せた」
「じゃあ帰ったらご褒美ちょうだい!」
「肉体以外なら」
「ぶー……じゃあデートで」
「……………………許す範囲は手をつなぐだけ。それ以上の密着があった場合張り倒して簀巻きにして帰る」
「しょうがない。じゃあそれで行こう」
こうしてなし崩しにデートの約束を取り付けられてしまった。
まぁ、ダンジョンで楽ができるなら手くらい握られてもいいか。
引っ付いてきたら殴るけど。
……マジックファイターの実力を発揮させない方法は、早々に拘束系の技で動きと詠唱を封じる事だ。
幸いどちらも糸を使えばできる。
最悪の場合口を縫い合わせてやれば思い知るだろう。
……あれ、今から憂鬱になってきたぞ。
これはこの先の雑魚とボスに鬱憤をぶつけよう。




