探索!
そんなこんなで突入したダンジョンだが、もうすでに中は阿鼻叫喚だった。
目につく限りモンスターに怯えて動けない男子に、膝ガクガク言わせながら杖を構える女子、インストラクターがほほえまし気にそれを眺めている。
「じゃあ私は採点だけさせてもらうけど、万が一までは様子見するわね。というか私が手を出したらそこで失格という事で」
「天沢先生が不意打ち受けて倒れたら?」
「んー、その場合も護衛失敗扱いで減点かな。みんなで一緒に帰りましょうが今回の目的だから」
なるほど、足手纏いが増えただけか。
「あ、自衛はするわよ。だからこっちは心配しなくていいけど、わざと押し付けるような事したらその場で失格。0点赤点ね」
あぁ、自衛してくれるならいいか。
とはいえ、こちらはそれなりに準備をしている。
準備と言っても大掛かりなものじゃなく、単純に私が極細の糸を張り巡らせて階層丸ごと気配探知しているだけだ。
この程度、といっても世間的に見れば危険地帯に変わりはないが、下から数えた方が早いダンジョンの浅瀬くらいなら数秒と待たずに支配できる。
最近は改造前の制服の数倍の重さになったけど、いい筋トレになっている。
糸がね、多すぎるんだよ……おかげで夏場は暑い。
装備とはいえ少し欲張りすぎたかもしれない。
その大半をこうして放出している今は少し肩が軽いが。
「アキラ、静江、とりあえず右の通路に進めば敵は少ない」
「逆に多いのは?」
アキラが挙手、この戦闘狂め……。
「左の通路、ただしそっちは数に応じて探索者もいっぱいいる」
「うげ……」
「真ん中の通路は行き止まり、モンスターもいない。だから行くだけ無駄。面倒ごとを避けるなら右一択」
「そうね、乱戦になってる所に行っても流れ弾浴びそうだしそうしましょう」
静江の一言で確定した右ルート、出てきたモンスターはゴブリンより更に弱いニードルラット……まぁ端的に言うなら小型犬サイズのハリネズミだ。
背中の棘を飛ばしてくること以外は普通のハリネズミと変わらない生態系している。
いざとなったら丸まって防御に徹するので、武器によっては非常に相性が悪いのだが……。
「フレイムロード」
静江による炎の濁流にのみ込まれて身を護るまでもなく散っていく。
続けて出てきたのはゴブリンより更に小さい、レッサーゴブリン。
能力だけ見れば完全にゴブリンの下位互換だが知能は変わらず、群れる習性もそのままなので初心者が囲まれると酷い目に合う。
なお生殖能力とかもオミットされているのでこいつら相手にそういう心配はいらない。
せいぜい小学生女児並の攻撃でタコ殴りにされるだけだ。
私でも痛くないと思う威力。
「タイガーブレイブフィスト!」
そんな小学生にも劣るレッサーゴブリンの群を素手格闘スキル最上位の必殺技で木っ端みじんにしたアキラは酷いと思う。
範囲攻撃であり、なおかつ衝撃属性を兼ね備えた一撃によりぺしゃんこになったレッサーゴブリン達は赤いシミになった。
後ろで現国の天沢先生が苦笑いしている。
まぁ正直魔力の無駄遣いなんだが……アキラがレベリング頑張っているのもあってまだ1割も魔力を使っていない。
静江にしても通路ごと燃やすような大技出しておきながら飄々としており、感じる限り欠片も魔力が乱れていないので余裕なのだろう。
そして私に向けられる視線が三つ、言うまでもなく今いるメンバーの物だ。
「もう終わった」
腐肉喰いと呼ばれるモンスター、別名ローチ。
まぁ端的に言うならゴキブリなのだが、サイズが小型犬並なので気持ち悪いより先にビビる。
基本的に死体の肉しか食わないが、数が集まり勝てると思ったら格上相手でも襲い掛かる習性がある。
そんなローチが私達に近づいていたのだが、空中で動きを止めてからバラバラになる。
ダンジョンの階層丸ごと糸で探知しているんだ、近づくのも攻撃しようとしているのも手に取るようにわかるし、その迎撃なんて朝飯前である。
「おぉー」
「うわぁ……」
反応は三者三葉、アキラは驚き、静江はローチに対する嫌悪、先生は無言で採点だ。
正直この程度なら糸だけでどうとでもなる。
武器とかの類を出すなら……個々のダンジョンだとボス戦くらいじゃないかな。
それも階層主とかじゃなくて最奥のボス。
学園が保有しているダンジョンはそれだけレベルが押さえられている。
人工的に押さえた物だから、枷が外れたら手に負えない敵も出てくるわけだが……それは主人公が闇落ちしたルートの話。
まぁ頑張れば私も同じような事できるけど、しない。
する意味がないからなぁ……そのくらいのダンジョンはそこら辺に転がってるし。




